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6話 婚姻

何だかんだで初めての結婚イベント

凍たちは別に結婚式しませんでしたからね


焔「ドレス! ブーケ!」

雷「……胸入るかしら?」

花子「返してくれれば入るんじゃないですか?」

凍「……返せるのか?」


作者には思いつきません

では、本編どうぞ~

さて、適当に飯屋を探すと服屋の隣の路地に変な飯屋を見つけた。

『協会を食べよう』って、店の名前として色々アウトだろ。


「凍、いくらなんでもこの店は無いと思うわよ?」

「でも良い匂いだよっ」


そう、この店は街の中で最も良い匂いのする店だったりする。

甘辛い醤油を焦がすような米の欲しくなる匂い、肉の脂身に醤油が染み込むまでジックリと焼いた生姜焼きに近い焼き方。うん、職人技だな。

でも店の名前の意味は分からない。

実際に店の中に入ってみると普通の定食屋のようで木の椅子に木の机が4つにカウンター席が6人分。4人掛けの机席に着き焼肉定食、生姜焼き定食、、カルビ定食、餡蜜定食を頼んだ……最後のは凄いぞ。餡蜜団子に餡蜜の掛かったサラダに餡蜜のアイスだ。定食になっているのか疑問を覚えたが、頼んだ本人は美味そうにしているので何も言わない。俺は絶対に食いたくないがな。

色々と疑問を覚える定食屋を後にしてそろそろ時間なので協会に向かう。これからシスターの結婚式、色々と楽しめそうだ。

路地を抜けて海岸と市街地の間の道を行くと煉瓦が敷き詰められた道があり、その先に市街地に紛れるように協会が建っている。でも都の人間なら誰でも場所を知っているので何の意味も無い紛れ方だ。そして協会の前に街の人間たちが集まっている。何人かは協会の戦闘員や関係者だ。シスターだったり神父だったりで戦闘には参加しない人間たちだな。


「一杯居るねっ」

「幻狼の式とは全く違うわね」

「人間特有ですよね、周囲が集まって祝うって」


確かに。氷狼の村でも番になった2匹を式を挙げて祝うとかしたことなかったな。

俺たちが着いて少しすると協会の扉が開いて中の礼拝堂までの道を案内するシスターと神父が待っていた。

他の人間たちに倣ってトボトボと後に続くと大きな両開き扉を抜けた先にはステンドグラスが綺麗な礼拝堂になっていて席が並んでいる。基本的にシンメトリーだが教壇の左は扉になっていてどこかに繋がり、右は礼拝堂の2階の廊下が陰になって分かりづらいが階段になっているようだった。

1つの席に6人掛けみたいだが、最後尾の席は4人掛けになっているから俺たちで独占させてもらった。席順は中央廊下から焔、俺、花子、雷だ。前から詰めていくのがマナーなのは人間たちを見ていて分かったが、嫁の隣に男とか最悪の気分になるから仕方ない。ハイ自己中ですよすいませんね。

1番前の席は何故か2人分空いている。

式の準備は問題無く進んだようで司会進行の神父が前に出てきて今回の新郎である熱血戦闘員が扉から入場、隣に親らしきオッサンを引き連れて教壇の前に移動し、オッサンは1番前の空いていた席に座り、熱血戦闘員は教団の前で神父と一緒に花嫁を待つ。

人間の頃の俺は中学生、結婚式なんて出たことないから礼儀とか手順とかが全く分からない。焔はウトウトし、雷は退屈そうにノンビリ足を伸ばし、花子はステンドグラスを眺めている。

誰も結婚式には興味無いって酷いな。

神父は新郎の名前とかを確認する短い質問をして新郎が本物だと確認すると扉の前に立っていたシスターに目配せした。それが合図になっているようで笛や弦楽器の軽やかな音色と共に扉が開き、花嫁衣裳に身を包んだシスターが立っていた。隣には街で会った老婆が居て一緒に礼拝堂に足を踏み入れ、そのまま教壇の方に足音を立てないよう静かに歩き始めた。


「凍、着てみたいっ」

「何だか羨ましいわ」

「綺麗な服ですぅ~」


式中はお静かに。

あれ、花嫁の手を引くのは父親とかの男じゃないのか?

まあこの世界の結婚式のルールなんて知らないからスルーだ。

シスターと老婆は教壇の前まで行くと神父と新郎に一礼し、座席側に振り返って一礼してから老婆は戦闘の空いた席に着いてシスターは新郎の横に立ち2人で神父の前に並んだ。


まあ、ここからはあれだ、健やかなる時も悩める時も共にあるようにとか永遠の愛を誓いますかとか誓いの口づけをとか……流石に端折り過ぎたか。

あんま結婚式のイメージに合わなかったくだりを紹介しよう。

一般的なイメージの結婚式の言葉が続く中、何故か都の特産品の紹介と今年もよく稼げるようにと願うことがあって困惑した。この世界の結婚式って豊作の祈祷も兼ねてるのか?

最後はやっぱり誓いのキスをするようで新郎新婦が顔を近付けるだかで女はキャーキャー、男は平気そうな顔でチラチラと素直な反応だ。そしてそれをニヤニヤ眺める神父。最後がシュールだ。

シスターも熱血戦闘員も恥ずかしさで顔は真っ赤だが、キスを止めるつもりは無いようで少しずつ顔を近付け最後にはちゃんと唇同士を触れさせた。

と思ったら開き直った熱血戦闘員がシスターの腰と首に手を回してかなり情熱的なキスになった。と言っても4秒くらいで離れたんだが、男共は前屈みの奴が数人現れ後ろから見ていると非常に笑えた。

友人であるシスターのキスシーンに興奮したのか焔がモゾモゾと俺に密着してきた。花子は既に俺の膝の上に指を這わせている。雷は薄く小さく笑っていて後が怖い。危険な嫁しか居ないことを少し残念に思いながら焔の腰に手を回し花子の指に自分の指を絡めると2匹とも少し落ち着いたのか元の姿勢に戻った。

シスターたちのキスも終わり次は2人の門出を祝うべく客たちは協会の外に集まる。その間にシスターの化粧直しとかがあるが、時間はそんなに掛からないみたいだ。俺たちが人間の流れに合わせて一緒に協会の外に出て数分で協会の扉が開いて中から新郎新婦が腕を組んで出て来た。今更だが、交際スタートから半年も経たない電撃結婚だったような気がする。

幸せそうなシスターと熱血戦闘員は街中の人間たちに祝福されて雑談しながら人垣を通り、俺たちの近くまで来ると良い笑顔で『ありがとう』と言った。事情を知ってる奴と知らない奴が半々くらいみたいで反応は様々だった。

シスターの真正面に居た焔は照れていて上手く言葉を返せないようだった。ここは夫として俺が華麗に返してみせようじゃないか。


「ああ、こっちも人の色恋に首を突っ込むのは面白かったよ。またあんなに動揺している乙女なシスターを見てみたいもんだ」

「ここでそれを蒸し返す気か!?」

「あら、こんなに優秀な人材を放っておけるわけないでしょう?」

「はい。ヘンリエッタさんはこれからも変わらないでいてください」

「急に変わりたくなってきたぞ!!」

「ヘンリエッタ、君はありのままの君で居てくれ」

「ジャン!?」

「僕の愛するヘンリエッタ、いつまでも素直で可愛い君で居てくれることを願っているよ」

「それが彼の最後の言葉になろうとは、この時誰も思っていなかったのだった」

「この直後、謎の事故によってヘンリエッタは未亡人となってしまうわ」

「ならんわ!! あまりにも不吉なモノローグに絶望したわ!!」


ふぅ、まさかの熱血戦闘員までシスター弄りに参加してくれるとは、思わず固い握手を交わしてしまった。


「凍、前から思っていたのだけど今日ここに決定したわ」

「何が?」

「キングオブツッコミ1世はヘンリエッタということよ」

「何!?」

「凍が負けちゃった!?」

「ヘンリエッタは優秀な人ですから、これは仕方のない結果かもしれませんね。キングオブツッコミ審査委員会は本当に大変でした」


まさか、都に着いてからずっと、俺はツッコミキャラとしての優劣を測られていたというのか!?


「真のツッコミは常に全てがツッコミに満ちていなければならない。ヘンリエッタにはその芸人魂があるわ」

「いや、そこは無くて良いだろ」

「それに比べてあなたはボケに回ったりエロに回ったり、この節操無しの見境無し!」

「いや、ボケに回るのはありだろ」

「エロに回った凍……」

「焔、繰り返したり想像したりするのは夜にしてください」


常にツッコミはマジで体力使うぞ。

そして数人の男たちが崩れ落ちた。焔と花子の話から何かを察したらしい。


「そんな緩いツッコミで2世を目指そうと言うの? 恥を知りなさい!」

「目指してねえよ!!」

「そう、その全力がツッコミには必要なのよ!」

「お前も最近ボケに回ってんなオイ!!」

「これは凍君、2世を狙う気満々のようですね」

「狙ってねえ!!」


雷さんも花子さんもその弄り能力は要らないです。

さて、集まった人たちとの雑談も一通り済んだシスターと熱血戦闘員は人垣の向こうに立っている。シスターの手にはブーケがあり、客たちに背中を向けて背面に飛ばそうと下に腕を撓らせている。あれってこの世界でもやるんだな。


「凍、何をするの?」

「花嫁が投げた花束を取った女が次に結婚式を挙げられるってお呪いがあるんだよ。お前は結婚してるから取るなよ」

「は~いっ」


素直に頷いた焔の頭を撫でてやると男共の視線が凄くなったが、睨み返してやったら視線を逸らされた。軟弱な奴らだ。


「結婚式が終わったらどうなるのかしら?」

「どこかで宴会でも開かれると思うぞ。街のトップの結婚式だし、何よりシスターは仮にも王族だしな」

「……忘れてたわ」

「あ、ギルバート王子の妹さんなんでしたね」


本当に忘れがちだから困る。

シスターが両手で背面に放ったブーケは緩い軌道で空を舞い、街の娘たちが固まって居る場所に狙ったかのように落ちて行く。熾烈なブーケ争奪戦は傍から見れば恋に恋する乙女たちのちょっとしたイベントに見えなくもないが、よくよく足元を見ていると隣の女を妨害するために足を踏もうとしたり見えないように髪を引っ張ったりと中々にエゲツない行為が行われている。女って怖いな。


「あら、私なら全員吹き飛ばすわよ?」

「凍と結婚するのは決まってたんだから必要無いよっ」

「あろうと無かろうと私は狙った相手を逃がしませんっ」


本当に、メスって怖い。

何はともあれ、シスターはお幸せに。

だが最後にこれだけは言わせてくれ。


「いつからあったんだよキングオブツッコミ審査委員会」

「言うのが遅すぎるだろ!!」


ああ、やっぱりあんたがキングオブツッコミだよ。

あ、オカマがブーケ取った。


これより定例会を始めたいと思います


雷「では、審査委員長として開会の宣言するわ」


本日の議題は副委員長からです


花子「本日の議題はズバリ、この作品のボケとツッコミの比率についてです」

雷「良いところを突いたわね」

花子「ありがとうございます。で、正直なところこの作品の比率はどうなっているんでしょうか?」


ボケの方が多くてツッコミは少人数で頑張ってもらうスタンスです


雷「そう言えばツッコミはワンマンアーミー状態ね」

花子「数に押されてますけどね」


茶番はボケが多いくらいの方が良いと思います!


雷「委員長顕現で許可するわ。今後も是非ボケを多めでツッコミには頑張ってもらいましょう。では、ここに閉会を宣言するわ」

花子「ありがとうございました」


ありがとうございました


……このような会話がなされていたことを凍は知らない

では次回~

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