15話 Sランカー戦です
花子「シンプルです」
カタカタ
凍「分かりやすさって大事だよな」
カタカタ
雷「で、作者は何をしているのかしら?」
カタカタ『全弾持って行け!』
焔「本当に何を知るのかなっ?」
知らぬが仏です
ロボットゲーム好きなら分かるかもです
では、本編どうぞ~
「凍ぅ~、ゴメン~」
「私が謝ってるのに無視だなんて、酷いわ」
「すみませんでしたぁ~」
知るか。俺は穏便に済ませてくれって言ったのに完全に無視しやがってこの阿呆共。もう本当に勘弁してくれよ。人間にしつこく追い掛け回されるなんて面倒極まりないっての。1人1人は弱いけど数が集まると本当に時間の浪費で嫌なんだよ時間の無駄なんだよイチャイチャできなくて苛々するんだよ!!
……何か自分の欲望が漏れた気がするが気にしない。それは今は重要なことじゃない。
「まあ、今日は髪の色も服装も違うから直ぐに人間たちに囲まれるってことはないだろ。オッチャンのとこ行ってから闘技場にいくぞ」
そう、俺たちは髪の色以外に服も変えた。焔と俺はシスターと神父、雷は普通のチャイナ、花子は前に雷が着てた神父……どんな集団だよ。焔は着たかった服を着れてご満悦、雷は忍者装束でも良いんじゃないかと悩み、花子は胸元が緩いことに凹む。雷が着ていたせいで伸びてた。チャックは上まで上げているが少しだらしなく見えて花子のイメージに合わない。
「オッチャン、また串焼きくれ」
「らっしゃい……また?」
あ、分かってないな。意外とパッと見では誤魔化せそうだ。髪とか服装の印象が強いと特にそうなのかもな。
「ああ、髪の色戻したんだよ」
「んん? あっ、重婚のガキか!?」
「その覚え方はどうなんだ?」
こんなんで客商売やってるってんだからこのオッチャンは侮れない。王都の武器屋だって名前は覚えてくれてる。俺は2人の名前知らんけど。自己紹介する武器屋とか屋台とかって嫌だよな。
「名前を聞いたことねえからな。ほれ、昨日と同じだけありゃ良いか?」
「サンキュ」
もはや常連のような扱いだな。まだ3日目にしてこれだ、魔都に長く居たら本当に常連になってたろうな。
「それにしても、お前ら昨日何した? 騎士と冒険者が朝から総動員だぞ」
「俺たちを尾行してた冒険者をまいてホテルで荷造りしてたぞ。何かあったのか?」
「ああ、その冒険者が区画整理のために空家になってた家の壁に拘束されてたらしい。1人だけ全身に小さな切り傷があったらしいが、他の連中は目立った外傷は無いんだと。だけどおかしな話でな、腹のあたりに女の拳サイズのアザが数発あるし俺と会った後の記憶がねえしで本当に人間にやられたのか分かんねえ。しかもそれぞれ別の辱めを受けてるが人間業じゃねえってんで完全にお手上げみたいだぜ。時間的にも試合の真っ最中で目撃者が居ねえのも大きいな」
随分詳細な情報ありがとう。本当に情報屋になった方が良いと思うぞ。顔に傷のある厳つい情報屋とか、似合いすぎる。
「そりゃ変な話だが、詳しいな」
「客商売してりゃこれくらいは当然だぜ? それに開店前から騎士と冒険者が朝飯がてら聞きに来たんだよ」
成る程、早朝の聞き込みに便乗して上手く儲けたな。
「お前さんたちが犯人だったら串焼き売った後に騎士たち呼ぼうと思ったが、本当に知らねえみたいだな」
ああ、3匹が何してたのかやっと理解したよ。見張りは別の奴に任せるべきだったと確信したよ。そして分かりやすいって言われるし今まで知らなくて良かったよ。下手したらバレてたかもしれないしな。
「サンキュ、俺たちは大会見たら街を出るつもりだ。そん時にまた寄らせてもらうぜ」
「あいよ、またキャトルミューティレーションに来た時は来いよ」
「おう、オッチャンの串焼き楽しみにしとくぜ」
さて、オッチャンの屋台で目的のものは買えたところで闘技場へ行こう、とはならない。
「お前ら、何してんだよ!」
大会のために魔都は人気の無い場所に事欠かない。3匹を連れて路地に入って開口一番がこれだ。
「だって凍とのデートを邪魔したんだよっ?」
「ストーカーなんてこの世から根絶するべきでしょう?」
「対凍君用に実験をしたかったんです」
誰から説教してくれよう。
「誰も居ない所で凍のお説教……ゴクリ」
こいつは後回しだ。
「あら、私に説教だなんて、いやらしい」
俺の身が危ないから後回しだ。
「性欲バリバリの凍君にはこれくらいの濃度で」
駄目だ、話を聞いてない。
もう良いや。人間に騒がれたらその時はその時だ。焔には法剣は常に剣にしておけって言っておけば良いや。
さっさと闘技場行こう。
「あれ、お説教は? ほらほら、ヒロインとして凍にお尻ペンペンされたり追いかけられたりする準備はバッチリだよっ?」
「あ、うん、そのヒロイン力は貯めといてくれ。後で使うから」
「うんっ」
素直でよろしい。
闘技場に着くと予想通り注目度が下がっている。近場の奴は嫁たちに目を奪われるが、髪の色が普通の人間と同じなので遠目の連中まで注目してはこない。視力の良い奴はガン見してっけどな。目ん玉えぐっちゃうぞ? いや、割と本気で。
さっさと観客席に向かうと4人分空いている席を見つけた。というか観客は前の方で立見しているのが多くて後ろの席はまばらに空いている。自由に選べるというほどではないが、座るのに困らない程度には空いている。
そして下手に近付こうとしてきた男は俺と視線が合った瞬間に逃げ出した。何故だ?
「花子が気にするだけあって客の熱気が凄いな」
「まるで仮装大会ですからね。それでも強いというのが想像できないですけど。と言うか凍君の目が怖いですけど」
確かに。しかし極めた奴ほど変なことしてたりするから侮れない。人間の強いは俺らにとっては時間掛かって面倒ってだけだが。生まれって残酷で不平等だよな。
そして俺は別に怖い目してないぞ? 普通普通。あ、また近寄って来ようとした人間が目を逸らした。
『皆さんっ、お待たせしましたっ!! 泣いても笑っても全てが決まる、Sランカー戦の開催をここに宣言しますっ!!』
「「「おおおおっ!!」」」
初日に見た司会者は引き続き頑張っているようだ。登場のために奥の廊下を爆走したらしい汗と髪の乱れが性格を表している。
やや遅れて司会者と同じ場所にあるVIP席に着いたのはこの国のトップの婆さんにキスタニアの第3王子とその妻のメイド長。王子を挟んで3人で並んで椅子が置かれている。
本当に来てたんだな。そして王子は腰に剣吊るしてるしメイド長は左手に盾になる手甲を装備している。誰か注意しろよ。魔石もガッツリ付いてんじゃねえか。
あ、王子に女性客が反応した。でも王子とメイド長気にしてねえ。大人の余裕か?
「本当に来てたのね」
「ここでファイルを渡せると楽なんですけど」
「無理だろうな。特に今日は」
「この焼き加減、更にできるようになったねっ」
火加減のライバル発見した焔をスルーして王子に目を向ける。互いの立ち位置は円形の闘技場のほぼ正面、間反対なので人間の視力だと俺たちには気付かないと思う……オッチャンの習熟の速さがおかしくねえか?
司会者と観客の声で流石に王子たちの会話は聞こえないがちょっとした世間話と社交辞令なのは両者の表情で分かる。試合開始までの時間潰しをしたいだけみたいだ。
『では皆さんお待ちかねっ、細かいルールも何の其の、トーナメントを始めましょう!!』
「「「おおおおおおっ!!」」」
『1回戦はこの2人っ、誰が出るかはお楽しみっ! 試合っ、開始っ!!』
フィールドには誰も居ないのに司会者が試合開始を宣言した。どうしてか分かっていないのは俺たちだけで観客は溢れんばかりの声援を飛ばしている。
そして直ぐに俺たちから見てフィールドの左右にある入場口から1人ずつ飛び出して来て中央で互いの武器を叩き付けあった。
「1回戦は、炎の料理人VS最」
叩き付けあうのは巨大な中華鍋と太いレイピア、見た目はシェフと戦士。レイピアと言うよりもランスに近いが、片手用に見えるからレイピアと言った。ちなみに、シェフは左手に解体用の肉厚包丁、戦士も左手に普通の剣を握っている。
成る程、誰がいつ戦うかは分からないのか。しかし2人して変則的な二刀流だな。
「むうっ、あの人間もできるっ」
何かライバル乱立してるが気にしない。てか何を見ての判断なのか分からん。
「右手は料理を直接火で炙るために豪快な動きができるように大きくガッチリと、左手は微調整をするためにしなやかで素早く動けるように鍛えられているんだよっ。動きやすく、だけど豪快に、繊細だけど、大胆に、それを実現するための筋肉が必要なんだよっ。そのためには血の滲むような食べる人への愛が絶対に必要なんだよっ!!」
よく分からん焔の演説に俺たちはポカーン、周囲は拍手喝采……訳が分からないよ。
「そうだ、焔に常識を求めるのは馬鹿のすることだった」
何でこんな当たり前の真理を忘れていたのか、全くウッカリしていたな。
「私常識あるもん!」
全員が目を逸らすことになった。
焔に常識って、何を馬鹿なことを
凍「すまん、ちょっとウッカリしてた」
雷「まったく、嫁のことくらいちゃんと理解しておきなさい」
花子「しっかりしてくれないとこの先が大変ですよ?」
焔「皆酷い!!」
今までの所業を思い出してよ
では、次回~