11話 色々なことが、見えてきました!
なんでしょう、凄くRPGっぽい話になってきているような気がします
凍「いや、冒険小説なんだから当たり前だろ」
焔「え?」
雷「あら」
花子「凍君はまだ気付いてなかったんですね」
凍「え?」
この小説を普通の冒険ものだと思ってるのは主人公だけのようです
では、本編どうぞ~
図書館の『関係者以外立ち入り禁止』の扉の先は部屋だらけ。そして匂いは万遍なく広がっていて……匂いで探せねえ!?
と言うことで俺たちは1部屋1部屋を調べていくことにした。
まずは手近な扉をガチャリ。
「机ね」
「椅子もありますね」
「何にも無いねっ」
はい、何もありませんでした。
次行くぞ次!
隣りの部屋の扉をガチャリ。
「会議室、と言うよりも打合せ用の部屋かしら?」
3人掛けのソファが2つに挟まれた長机。そして本の詰まった棚が1つ。
それだけ。一応はデブジジイと他数人の匂いがする。しかも新しい。
「退屈だよ~」
本当だよ。
これじゃ埒が明かないので見つかるまで倍速で表記しよう。
ゴミ箱のある普通の部屋。ゴミ箱の無い普通の部屋。ゴミ箱のある男子トイレ。ゴミ箱のある女子トイレ。ゴミ箱のある人間が寝てる部屋。ゴミ場の無い人間の寝てる部屋。ゴミ箱の無いデカい会議室。ゴミ箱のある、
「凍、流れで通り過ぎるの止めなさい」
「この部屋はちゃんと探しましょうよ」
「人間と紙の匂いバッカリだよ~」
すまん、完全に探索が面倒になっていた。
部屋の中はかなり大きくそれに見合った机が置いてある。20人くらいは席に着けそうだ。そして質の良さそうな回転椅子が並べられている。壁には本棚が埋め込まれていて、部屋の最奥には1段高くなって裁判長席みたいなものがある。
あれがトップの席かもしれん。
ともかく部屋の中を捜索しようと決まった。実験とかの話が書かれた会議の書類とかがあれば王子からの依頼は完了だ。あったら情報管理能力をかなり疑うが。
スパイ大喜びな管理体制だ。
「特に変なものは無いわね」
「あるのは街の補修工事する場所とか、今回の大会の予算とかですね」
「えっと、『老人ホーム建設計画・承認』だって!」
「あ、孤児院への予算の増加も承認されていますね」
良い人たち!? 政治家連中がスッゴイ良い人たちなんだけど!?
「何か、人間至上主義ってこういうことなのか?」
「みたいです。他にも福祉を充実させていてその管理の書類ばかりが並んでいますね」
人間に対しては本当に良い街かもしれんな。帝都程じゃないが学校とかの施設も充実しているみたいだし。
え~、飽きてきました。次の書類見ても何も無かったら帰ろうと思う。1番新しい書類は何かね?
……おや?
『人口増加に伴う街の拡大計画』
日付は他に比べて少し古いのにかなり新しいファイルに挟まれている。
ほほう、面白そうだ。
内容はこんな感じ。
福祉や教育が充実している分だけ人口が増え続けていてこのままだと街のキャパシティを超えるから街を大きくしようという計画がある。
しかし、周囲には凶悪な魔獣の住む森もあり下手に大きくできないから魔獣を駆除したり工事の邪魔をされないような方法を確立する必要がある。
その方法は現在思案中で色々なことを試験的に試している。
成る程成る程、現在進行形の計画ってやつだな。
でも詳しいことは書かれてない。きっと今試していることの結果待ちなのかもしれないな。
「凍、何か見つけたのっ?」
「ああ。ちょっと読んでくれ」
いち早く俺の反応に気付いた焔に釣られて雷と花子も俺の手元の書類に目を通した。
焔はポカンとしているが雷は微妙に表情を曇らせた。そして花子は他に関係のありそうな書類を探そうと提案してくれた。
ちなみに、現在の会議室は泥棒に荒らされたような酷い惨状である。ファイルは適当に床に落とされてるし綺麗に日付順にされていた棚は見るも無残にグチャグチャになっている。これを整理した人が見たら怒っていいレベルだ。
でも俺が見つけたファイルは1番新しい所にあったものなので多分これ以上の情報はここには無い。
「ここは交通の便も良いからと頻繁に使われてはいるけど本来の会議場ではないらしいわ。日付とカレンダーを比べるとそれは明白。あなたが見つけたファイルも3カ月以上前のものだし、最新版は別の所にあると見た方が良いわね」
あ、そうなのか。
雷は日付が最初の頃の場所を探していたからきっとそんな記述のあるファイルを見つけていたんだろうな。
「じゃあ、ここの人間の匂いが同じように集まっている場所を探せば良いんだねっ」
その通りだが、この街結構広いから面倒そうだ。
……ん?
「もしかして焔、ホテルの部屋からなら街中の匂いを少しは嗅げるか?」
「できるよっ。凍が横に居てちょっと風が吹いててくれるとちゃんと嗅げると思うっ」
「……焔のスペックって」
「言わないでちょうだい。アレは幻狼としてもおかしなレベルなのだから」
本当に、焔の能力は俺絡みでおかしい。完全記憶能力でも持っているんじゃないかと思うくらいだ。
完全記憶能力って嗅覚にも適応してる言葉なのか?
細けえこたぁ良いんだよっ!
「凍の役に立つっ? 私、凍に必要っ?」
「役に立ってるし俺に必要。と言うか最高。じゃ、今日はこれで帰るか。意外と時間経ってるみたいだ」
会議室に置かれている鳩時計は4時半を示している。これ以上は下手をすると誰かが見回りに来てしまうかもしれない。
ちょっと周囲を警戒しながら『関係者以外立ち入り禁止』の扉まで戻り何食わぬ顔で受付を抜けて帰路に着いた。
……片付けは誰かに任せた。
大会初日を終えて宿に帰った俺たち、正直大会は色物だったという記憶しかないが気にしない。
それよりも飯の方が大事だ。腹減った。
「凍、お疲れさまっ」
「色々と大変だったわね」
本当にな、リーガルの奴絶対殴るって決めたよ。
疲れた体で柔らかいソファに倒れこむのもありだなとか思っていると花子が俺の顔を覗きこんで何かを言おうとしていた。
「じゃあ、今日は凍君を労って私たちが手料理を作りましょうか?」
おお、マジか。
焔と花子の料理は食べたことがある。というか焔の料理は頻繁に食べる。なんせ仕込んだのは俺なのだから。
そして花子の料理はジャングルで経験済みだ。肉料理ではなかったし焔ほど俺好みでもないが美味かった。
問題は、
「チラ見とは感心しないわね」
この巨乳チャイナである。料理してるところを見たことがないので判断に困る。
「そう言えば人化している時に料理したことはないわね」
つまり食い専なんだな。魔獣の姿だと料理なんてしないし。
炎狼なら炎で炙ったりもするが雷狼には無理だ。
「これを期に覚えるのもアリかしらね。幸い焔も花子も料理はできるようだし」
「雷がやりたいなら教えるよっ」
「どんな料理にしましょうか?」
部屋にはキッチンもあるし、食材は頼めるらしい。この部屋のサービスは本当に何でも有りだな。
ちなみに、俺は料理できません。でも冷やすのは得意だから焔がスイーツとか作ったら冷やすぞ。
今時はオスでも料理できろって? 良いんだよ別に困らねえし。
肉と野菜を数種類頼んだら直ぐに来た。4人分ってこともあって結構な量だ。焔に花子は荷物からエプロンを探している。
真っ当なエプロンなんて荷物にあったか? この部屋にならありそうだが。
「メイド服のエプロンしかありませんね」
「さっき食材と一緒にやたら可愛らしいのが運ばれてきたわよ」
雷が3着のエプロンを並べた。薄いピンクに、胸元が空いてるのに、フリル付きの白いエプロンの3着だ。
何か悪意を感じる。狙ってないよな?
「じゃあ、まずは服を脱ぐよっ」
「待て」
「裸になったらエプロンを着ましょう」
「おい」
「そう、これが料理の基本なのね」
「違うからな!」
料理をしない俺でも分かる。これは料理と言う名のプレイだ。それも新婚ネタでありがちな。
新婚の夫が前振り無しで妻にやられて戸惑うか襲うかの選択を迫られるアレなプレイの筆頭だ。こんなの実行する妻は大変残念な頭をしていると断言するが美少女の半裸とか大好物で何を言ってんだ俺は!?
これじゃ俺も頭がアレな連中と変わらないだろうが! 落ち着けっ、落ち着くんだっ、まだ慌てるような段階じゃない!
「じゃあ料理を始めるよっ。まずはこう、凍の正面をゆっくり歩くんだよっ」
「そして軽く興奮させたら背中を向けます。下着なんて着ていないことをアピールしましょう」
「こんな感じかしら?」
そう言っていつの間にか着替えた3匹がソファに倒れこんだ俺の前を通る。
横から見ても美少女レベルマックスな幼馴染、やっぱり旅を始めた頃より胸が残念なことになっているが逆にそれが可愛らしさを際立たせている。薄いピンクのエプロンから横チラする慎ましい膨らみが何も知らない無垢な少女のような危うさを持って綺麗なものを汚したくなる俺の煩悩を刺激する。
それとは対象的なワガママボディが俺の息子を反応させる。横チラなんて生易しいことはしない、堂々と胸元の空いたエプロンを押し上げる巨大な双眸は歩く振動だけでその全貌があらわになりそうだ。だがツンと上を向くが故にシッカリとエプロンはその場に固定され息子を攻撃し続ける。つまり、見えん。
そんな2匹に劣らない清楚な白と黒のコントラストが俺に静かな色香を教えてくれる。白いエプロンのみを身に纏っただけだが、長い黒髪がその肢体を隠す。慎ましい膨らみに、思わす触りたくなるほど滑らかな白い肌は髪が創る黒い影からそっと覘く。この辺で俺の本能は限界に達しそうだ。
何が言いたいかと言うと、辛抱堪りません。触ったり撫でたり摘まんだりしてきて良いですか?
てかこれ、俺が料理されてんじゃね? 今は下ごしらえですか? これから塩胡椒をまぶされて揉まれるんですか?
ははは、本格的に頭がアレになり始めたな。
「まずは肉を焼く前に塩胡椒で味付けしてちょっと揉んで馴染ませるよっ」
「あら、ただ焼くだけじゃないのね」
「人化してる時限定だねっ。狼の姿だと塩胡椒掛けたり揉んだりも難しいし、凍の好みもそっちなんだよっ」
「そう言えば野宿するときの晩御飯は塩気があって美味しかったわね」
そう、人化してる時は人間の味覚に近いのか塩胡椒で味付けしてないと物足りない。狼の姿だと生とかちょっと焼いただけくらいが好きだ。
あ、野宿の時の晩飯は基本的に焔が作ってるぞ。
「人化してる時は人間の味覚なのかもしれませんね。あ、これ油です」
「ありがとっ。肉をフライパンで焼く前に油を敷いてね。じゃないと焦げ付いちゃうよっ」
こう、話を聞いてるだけだと乙女たちの料理レッスンだ。しかし実際には裸エプロン3匹の悩殺攻撃である。俺の視界で3つの桃が揺れる。
……別にあの輪に入って行って桃食べたいとか思ってないぞ。
「さて、良い感じに凍が欲情しているようだけど、どうするのが良いかしら?」
「食事に花子の麻酔粉を混ぜて凍の自由を奪いたいっ」
「色々と楽しんでから凍君に逆転されたいですっ」
決めたっ、俺はこいつらの作った飯を食わない。
絶対に何か良くないものが入っているに決まってる。
さて、外食して風呂入って寝るか。
前書きで凍がフラグを立てるから、冒険ものではなくなりました
凍「俺のせい!?」
焔「作者さんは基本的にフラグ拾っちゃうから」
雷「下手のことは言っちゃ駄目よ?」
花子「恥ずかしいですぅ~」
ノリノリだったくせに何言ってんでしょうか?
では、次回~