9話 トーナメント開始ですね
ようやく戦闘開始です
でもオマケの戦闘なので描写は少ないです
参加者「「「おいっ!?」」」
だってオマケですもの
では、本編どうぞ~
何だか波乱万丈な高ランク冒険者紹介は終わってルール説明に入った。
俺たちの周りから人間は消えてる。代わりに注目度はアップ。
まあ座れたから良しとしよう。
近くに居た子供は泡吹いて倒れたりしてたけど、別にちょっと焔が怒っただけで何もしてないから問題無い。今も他の観客と俺たちの間に冒険者と騎士たちが壁のように立ち並んでいるだけだ。
いやもう、囲まれてるんだよ。下手に動いたらパニックが起きそうなんだよ。
「お、串の残りが丁度4本だ。皆で分けようぜ」
「あ~んっ」
「食べさせてくれるんでしょう?」
「あ~んです」
自分で持って食えよ。まあやるけど。
焔、雷、花子の順に串先の一切れを噛める程度に口の中に入れてやる。
タレが口の端に残り子供のような焔、誘うようにわざと舌を伸ばしてくる雷、潤んだ唇を小さく開いた花子。何でこうも個性的な『あ~ん』ができるんだろうか?
さて、気を取り直したルール説明だ。
「ルールは簡単っ、自由参加のBランカーたちが3~6名で1チームとなりトーナメント戦を行います! 戦闘で使う武器の魔石は外してください。銃の魔石は大会運営委員会が調整した低出力の物を使用してもらいます。そして防具には全て魔石を装着してもらいます。これにより安全にトーナメントの進行が可能になります。有り得ないとは思いますが、もしルールを逸脱した参加者にはこの方たちと共に闘技場地下の拷問部屋に入ってもらいます!!」
司会の女の言葉のタイミングに合わせて闘技場の入場口である鉄格子が上に開き、上半身裸で顔面覆面のガチムチと、同じ服装の大柄デブが姿を現した。
……どっちも『ウホッ良イ男』になりそうだ。もうヤダこの国。
「屋台のオジイサンと凍君が話していた安全は魔石を工夫して使うことでカバーされているんですね」
「魔石の防御のある防具を魔石無しで攻撃すると通らないんだったわね。帝都の授業で習って以来ね」
そういやツナギとかワンピースが最も効率の良い防具だって話をしたな。忘れてたが。
さて、他には細々したルールは無いらしい。後遺症が残るような攻撃はしてはいけない程度の説明だった。急所を意図的に狙うのは無しだと言うことらしい。ハイテンションの司会に恐れをなして内股になる男客が続出した。
ちなみに、焔が俺の息子を覗き込もうとしたので串を口に放り込んで押し返した。
「では、毒にも薬にもならないルール説明はちゃっちゃと済ませて、皆さんお待ちかねのトーナメント、開催です!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
さっきより幾分テキトーなテンションでチーム紹介がされた。全部で16チームあるみたいで大きなフィールドを2つに分けて8チームトーナメントを2つって感じで大会を進めるらしい。
腕試しやネタで出場してるっぽい連中も居る。本当にお祭りなんだな。
てか司会者がルール説明を半ば放棄しちゃってないか?
……面白ければ何でも良いよな。
俺たちのことはなるべく関わらないという方向で決着した周囲の観客たちもフィールドに視線を向けた。これからトーナメントの第1選が始まるらしい。俺たちは席に近いフィールドの戦闘を見ることにした。
『ゴテゴテとした青い鎧に身を包んだ6人』VS『紅の手品師四天王』
……え、これチーム名? 本当にそれっぽい格好してるし。
多分、青い鎧の方はタンク仕様で紅い手品師の方は速さ重視でナイフ使いだな。
「では、これよりっ、キャトルミューティレーションでのBランカーチーム戦、第1回戦を開始しますっ!!」
さて、これは描写いるのか?
人間同士のチーム戦なんて俺たち魔獣には退屈な見世物だ。今も頑張って盾や剣や槍がナイフと激突している。ナイフが魔石の装着された盾や鎧に阻まれる音がする。でも遅いし力も弱い。
なんと言うか、子供のお遊戯大会?
そうこう感想を纏めていると試合が終わった。鎧集団が勝った。凄い僅差で。
もう満身創痍ってくらいに消耗しててとても次の試合でまともに戦えないだろう。
お次の試合も特徴がある。
『天使のコスプレ団VS白衣の天使団』
まあ、ネタ的な意味で特徴があるよな。気を付けて欲しいのは天使のコスプレ団は全員顔は残念でブーイングを受けている。本当に何で出てきたんだ? てか俺たちに出ろよって感じの視線を飛ばしてる連中は焔の殺気をプレゼントされたいのか?
一応背格好や髪形はそれっぽい。髪の色も染めている。服は帝都の学生服を使っているな。王都の劇場でも確かアレだったと思う。
白衣の天使団はどう見てもナース集団5人だ。武器なのかデカいメスや注射器や用途の分からない引っ掻き棒のようなものを背負っている。ちょっと拷問器具に見えなくもない。ちなみに、顔は中の上でコスプレによって上の下くらいにランクアップしている。コスプレって大事だな。いや、大事なのは服装か?
試合が始まったけど、これも実況する必要があるのか謎だ。大ブーイングを受けているコスプレ団はとてもやり辛そうにしているが、リーダー格の花子のコスプレの指示で乱戦に持ち込んだ。だが単純にナースたちの方が強いようで普通に各個撃破された。
あれが医療CQCか。隠し持ったメスや注射器を飛ばしたり暗器のように不意打ちで使ったりしていた。多分デカいメスとか注射器は暗器を隠すためのものだな。
「きたきたきたきたきたああああああああああああああああああっ!! やはりパチモノ集団にBランク筆頭のナース集団は荷が重かったっ! カワイイは正義、美しいは強さ、それを此処に証明したあああああああああああああああっ!!」
司会者が何か言っている。訳が分からないよ。
「しかし、似ていない人たちだったわね」
「本当ですね。実際は凍君が指示を出しますしね」
そういや集団戦でどう動くかを指示するのは俺だったな。銃使うから全体を見渡せる位置に居ることが多いんだよ。
あ、周囲の観客が感想を言ってる。ギルドで酒場に行った奴らだ。
「やっぱパチモンが出てきたな」
「ネタとしちゃあ面白いが、あの顔はちょっとな」
「今日もキヌエちゃんは可愛かった」
「ああ、帝都出身のナースさんな」
「おいおい、だから時代は金髪巨乳だっつってんだろうがっ!」
「何言ってやがるっ! あの清楚な黒髪の良さが分かんねえのかっ!!」
「「ああんっ!!」」
「……おい、誰か止めろよ」
「黙れ、俺はナースで妄想するのに忙しい」
……魔都の冒険者って一体。
何か急に気にしたら負けと言う格言を思い出した。本当に何故か急にだ。
「凍~、そろそろお昼ご飯?」
焔に言われて闘技場に設置された大きな時計を見ると11時半くらいを示していた。トーナメントは既に4戦済んでいる。1回戦は残り半分だ。
そしてここで昼食タイムになるらしい。再開は1時からだそうだ。
「そうだな、どこも混みそうだが一応飯屋を探してみるか」
「何があるかなっ?」
「あの屋台の串焼きも欲しいわね」
「再開される前に買いに行きましょうか?」
そもそも午後も見るのかっていう問題もあるがな。正直これ以上の収獲は無さそうだし、お偉いさん数人の匂いも覚えたし。そしてリーガルの奴に復讐したい。あいつのせいで注目度が上がっちまった。
「あ、ギルドに行ってオバアサンの鍵渡さないとっ」
「そう言えば昨日見つけたんだったわね」
「善は急げとも言いますし、お昼の前に行ってしまいましょうか?」
「そうだな。闘技場の北側から出れば良いだろ」
実はそっから入って来たんだ。オッチャンの屋台が闘技場の北側なんでね。
さて、俺たちが北側から抜けると言うのを聞いていた観客たちが慌てて西や東の出口に向かっている。本当に俺たち避けられてるな。おかげで歩きやすいが。
観客席を出てアーチ状の通路の壁に埋め込まれるように存在するギルドに到着。何も考えずに入ると怯えるように殺気立った視線に晒された。きっと焔の危険性を理解した連中だ。でも直ぐに顔が緩む辺り馬鹿が多そうだ。
「あんたたち、観客席で殺気ばら撒くなんて何考えてんのよ!?」
あ、受付の姉ちゃんは知ってんだな。
「ちょっとしたトラブルだよ。俺たちだってノンビリ観戦していたかったさ」
おかげで午後は観戦する気分じゃなくなったぞ。覚えたお偉いさんの匂いをいくつか辿ってみるか?
「はいっ、オバアサンの鍵見つけてきたよっ」
「え? 早くない? 何かズルしてない?」
少ししました。焔という反則技を使いました。
「じゃあ、よろしくねっ」
「……はあ~。了解、これで依頼は完了よ。それにしても、あんた達も凄い人に気に入られたわね」
は? もしかして、あのお婆ちゃん凄い人なのか?
「あの人、一見だたの街のお婆さんだけど実際はこの街の最高権力に最も近い人よ。ちなみに超の付く平和主義者ね。人間至上主義では無いけど支持率ならトップじゃないかしら」
へ~、凄い偉い人なんだな~……ん?
「つまり、あのオバアサンの匂いを辿れば王子の依頼に近付けるということかしら?」
「そうかもな」
「何の話よ?」
「ちょっとした内緒話」
「はあ?」
スッゲー蔑んだ目された。
おい、俺はMじゃねえんだからそんな目されても喜ばねえぞ。
「凍は本当に隠し事が下手ね。そんなだからいつもいつも変な事件に巻き込まれて渦中で走り回ることになるのよ、少しは隠し方を覚えなさい。このヘタレ」
どうしよう、雷のキッツイ視線が最近気持ち良い。
いやいやいやっ、まさかそんなっ、焔みたいなMっ気を雷に対して抱くだなんてそんな馬鹿なことあって堪るか。
げ、視線が強くなった!?
「あの~、そろそろお昼にしませんか?」
「そうだなっ、いい加減腹減ったよなっ」
「……逃げたわね」
「凍の好きそうなものあるかな~?」
「……目の前でイチャイチャとバカップルしやがって」
受付嬢の酷く陰鬱な視線を受けて退散。ちょっと背中に寒いものが走るレベルの強烈さだったぜ。
「何が良いかしらね?」
「肉メインだけど野菜もある店がベストでしょうか?」
「ちょっとしたレストランに行けば良いんだろうけど……」
「私たちが行った店は閑古鳥が鳴いてしまいそうですね」
「閑古鳥って美味しいのかなっ?」
「店側からしたら最低の味だと思いますよ?」
「へ~、どんな味なんだろ~」
……焔に説明面倒臭くなって対応投げやがった。
さて、午後はどうしたものか。
さて、午後はどうしましょう?
凍「考えてないのかよ!?」
ああ、いえちゃんとストックは書いてありますよ
ちょっと午後のオヤツはどうしようかと考えているだけで
雷「オヤツって、子供じゃないんだから」
花子「そもそも、オヤツを食べられる状況なんでしょうか?」
それは僕の努力次第です!
焔「……無理ってことかなっ?」
あの純粋無垢な笑顔が憎たらしい
では、次回~