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7話 これが、風龍ね

むむっ、とうとう風龍が出ました


凍「どう考えても水龍用ヒロインの名前です本当にありがとうございます」


わかんないよ~、もしかしたら第4のヒロインかもよ~


凍「いや、力量的に龍が氷狼を番とかねえから」


自分で言うことなのだろうか?

では本編どうぞ~

さて、俺たちは婚姻の儀式を済ませることで大人の仲間入りを果たすことになり、同時に村から正式に離れることとなった。流石に俺の実家に入り浸るわけにもいかない。焔の親父さんはかなり悲しそうにしていたが、そんなに嫌ならば最初から焔を過保護に育てておけよと言う話だ。それができないのが親父さんの性格なんだろうけどな。


現在、俺たちは氷狼の村を出て風龍の住む山に向けて歩いている。炎狼の村や雷狼の村には近付かないように進んでいるが、山に近付くほど気温が下がっていく。

ちなみに、魔獣の森は位置としては王都の北西に広がっている。山脈は西側のみに広がっていて向こう側には行ったことが無い。人間も魔獣の森を越えて更に山脈を越えるのは不可能だと考えているようで小規模な調査隊程度しか見たことがない。


【で、何でここの山脈を雷が知ってたの?】

【雷狼の村って風龍の住んでいる山に近いのよ】


俺たちが向かう風龍の山は魔獣の森の中でも1番深い所にある。雷狼の村は山脈の麓って言っても過言じゃない位置にあるらしく、雷は風龍の住処の話題が出た時点で心当たりがあったらしい。事前に山脈の低い範囲のレクチャーを受けた。結構ノッペリした地形で遮蔽物も草木も無く季節によっては雪に覆われていて熊系の魔獣が徘徊しているそうだ。夏は逆に夏眠しているそうだ。普通は冬眠だろう?

山の標高は目測で1キロくらいだが、そんなもんを気にするのは人間だけで俺たち魔獣は活動できるかできないかという判断でしか見ていないから、単純に大きな山脈としか認識していない。気になるのは風龍の生息範囲だが、風龍は空も飛べるし探すのが大変そうだし、それが危険だとも思う。結論として俺たちは短時間なら活動可能で見つからなかったらサッパリ諦めて山を降りる。氷狼の村でも見つからないなら危険だから降りるように言われた。

しかし、問題もある。幻狼のように体毛のある種族は動けても昆虫の花子は別だ。


「寒いですぅ~」


蝶は元々寒さには弱い。特別に寒い地域に生息する蝶も居るかもしれないが、花子は違う。普通に寒さに弱くて震えている。今も俺の背中の体毛に包まれるようにしがみ付いている。正直な話、焔に乗るべきなんだがな。


【花子~、私の方が温かいよ~。ほらほら、モフモフだよ~】

「あうぅ~、あ~」


焔の誘惑に花子が負けそうになっている。

俺の背中に乗りながら右隣の焔に向けて手を伸ばしている姿はちょっと危ない薬をキメているようにも見える。俺と雷の能力は氷と電気だから温めてはやれないんだよな。


「あぁ、温かいです。このモフモフ、この肌触りこそ最高で……いいえっ、凍君こそ最高です!!」

【ちっ、引っ掛からなかったねっ】


妙な攻防だ。焔はきっと花子だけが俺に触っていることが不満で引き剥がしたいんだろうが、花子は何とかして俺に乗っていたいらしい。寒いのは死活問題なんだから大人しく焔に乗れば良いものを。


「ふふっ、この程度の誘惑に負ける私ではありませんっ! ああ、柔らかいモフモフ~」

【口では何とでも言えるけど、体は正直だよねっ】


……結局焔の背中を撫でてるのかよ!?

俺の背中に乗りながら焔の背中撫でて悦に浸ってる。これが蝶族の姫様だなんて誰が信じるんだろうか? 俺は王様の存在も込みで王族かどうか疑っているがな。殺されかけた恨みは忘れん。


花子を人化させたまま山に向けて進んでいた俺たちは山脈まで5キロほどの木々が薄くて野営に向いていそうな場所で休憩することにした。そもそも風龍に合う意味はあるのか疑問だった俺たちは山脈を仰ぎ見て、ギョッとした。

山脈の上空で目測で体長10メートルを超す鷹の顔にライオンの胴体を持ち翼を生やした風を扱う魔獣の最上位、グリフォンが2頭がかりで綺麗な緑色の鱗を纏った細い何かを攻撃していたからだ。

ちなみに、幻狼がグリフォンと戦おうとするのは現実的じゃない。空が飛べないので戦いようが無い。空からチクチクと削られて消耗したところを狩られるのがオチだ。

だが、緑色の蛇のような何かは1体でグリフォン2頭を圧倒している。グリフォンたちが庇いあうように動いているから殺されていないだけでどう見ても積み将棋のようにただ消耗させられている。


【あれが、風龍か?】

【そうだと思うわ。ちょっと距離があり過ぎて緑色の紐にしか見えないけど、間近で見たら迫力あると思うわよ】

「グリフォンが10メートルくらいだから、約15メートルですね」

【キレーな緑っ】


焔、他に言うことあるだろ。

そして、今後の焔育成計画を雷と花子と本格的に話し始めようと思っていると決着がついたようだった。

風龍が尻尾で打ち払うように見せ掛けて相棒を庇いに入ったグリフォンに尻尾を巻き付けて拘束、捉えられた相棒を助け出そうとクチバシから突撃してきたグリフォンは背後から首に噛み付かれた。暴れる2頭だったが噛みつかれた方が先に息絶えたようで動かなくなり、巻き付かれた方も直ぐに噛み付かれて絶命したようだ。


【……圧倒的ね】

【ああ】

「怖いですね……」

【スッゴイ強いねっ】


これだけ離れていると風龍の力を推し量ることはできないが、逆にこの距離でも感じる恐怖は本物だ。生存本能が全力でアレに関わるなと言っている。これは逃げるが勝ちか?

そう思っていられるのも今の内だった。正確には、直ぐにそんな余裕は無くなった。

風龍がコッチを見ている。グリフォン2頭を体と口を使って運ぶところなのか、その目は獲物を横取りされるのを警戒して殺気立っている。


【逃げるぞ】

【ラジャッ!】

【賛成よ!】

「ゴーゴーゴー!」


婚姻の儀式より大切なものってあると思うんだ。

ということで、俺たちは遁走というのがシックリくる速さで後ろにダッシュした。普通の魔獣なら自分が獲物を咥えていて他の魔獣が逃げていくなら追わない。獲物を狩ったのに無駄な労力を払うのは魔獣のすることではない。

だが、この風龍にはそんな常識は通じないようで、何故かグリフォンを咥えたまま追ってきた。

なして!?


「追ってきます!!」


言われなくても分かってるけどな! 雷なんて顔を青くして『これは夢、現実の私は凍に気絶させられてるのよきっと!』なんて喚きやがる。あとで本当に気絶させてやろうか?

出来る限りの速さで木々を避けて走る俺たちよりも空を直線で飛べる風龍の方が速いのは当然だ。だがしかし、グリフォン2頭も運んでいてそのスピードは納得いかねえ!!


【お前は、氷狼か】


目の前に降り立っちゃったよ!? そして1番スピードあるから1歩進んでた俺が相手することになっちゃったよ!! 勘弁してくれ!!

獲物の2頭を横に軽く放るように地面に落とした。10メートルもの巨体が地面を揺らす様は壮観だが、どう見ても風龍の胴体から考えられる単純な筋力がグリフォンを運ぶのに必要な筋力と吊り合わない。超常現象万歳とでも言ってやろう。焔と雷は完全に俺に対応を任せて背後に隠れやがる。


【ああ、婚姻の儀式を、するためにあんたに会いに来たんだが、食事中なら遠慮するつもりだ。ごきげんようさよう】

【まあ待て】


上手く喋れなかったからさり気なさを装って脇を抜けていこうと思ったら横たわって道を塞ぎやがった。


【氷狼が婚姻の儀式と言うと、複数のつがいを持ちたいと言うことだな?】

【ああ】


あ、この風龍メスだ。声とか下半身の方で判断できた。オスだと腹側に膨らみがあるんだよ。

そんな感じで俺が観察しているのと同じように、風龍が俺の背後と背中の3匹を順番に見渡し、口を開いた。


【この3匹が、全員か?】

【そうだ】

【そうか……】


何だ? 何かを我慢するかのようにプルプル肩を震わせてどうしたってんだ?


【糞ガキモゲロッ!!】


ええぇ~、こいつもそっち系~?


焔「最近、本編以外で出番ないよね?」


スミマセン凍との話が弾んじゃって他の方を呼ぶ余裕が、


焔「言い訳無用だよ!!」


ゴメンなさい!!


焔「次回からは私と凍の新婚生活を用意してもらうよ!」


……本編でやろうよ

では次回~

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