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1話 旅は唐突に

魔法の無いファンタジー考えてたらこんな話になりました。

魔法はないけどトンデモ武器はあるよ?

獲物を発見した。

俺が居る木の真下、木の根元に蠍みたいな青白い魔獣が居る。鋏の先には猫耳の兎が捕えられている。動かないってことは死んでるみたいだ。

今日は大漁だな。

蠍を見下ろしていた木から蠍に向かって飛び降りる。蠍が俺に気付く前に空いている鋏を爪で貫き地面に叩き付ける。

急なことに反応できない蠍の顔にパンチ。

と言っても俺の手でパンチしようものなら爪で突くような攻撃になる。頭の骨ごと脳らしき柔らかくてグニャッとしたものを貫いた。

蠍は一瞬ビクッと体を痙攣させて動かなくなる。兎はやっぱり死んでいるようでそのまま俺の食料決定だ。

今日は中々のご馳走だな。特に蠍の尻尾は火で軽く焙るとプリップリの海老みたいな食感と味、仲間内で取り合いになる前に食わねば!




俺は人里離れた森に住む氷狼族。幻狼族と呼ばれる狼の1種族だ。体格的にはもののけ姫の子狼を連想してくれ。あれで青白い毛だと思ってくれれば大体あってる。毛にしては硬くて人間曰く氷殻らしい。モンハンみたいなネーミングだがこの世界にリオレウスなんて飛竜は居ない。似てるのは居る。

さて自己紹介を続けよう。佐藤凍さとうこおる、オス、16歳。俺のプロフィ-ルだ。

ファンタジーの名前じゃないって? 知らん。人間はニーナとかジョンとか呼ばれているのを聞いたことがあるが魔獣の名前でそんなのは聞いたことがない。友達には山田花子なんてのも居る。

俺の住んでいる村は森の奥深く、人間が入って来れないような場所にある。森の浅い範囲にはゴブリンが生息していてよく人間と小競り合いをしている。少し深く森に潜ろうとすればキングゴブリン(5メートルくらい)がダッシュで追っかけてくる。ちょっと前に人間の大部隊が討伐に来たらしいが全滅したと聞いた。

誰に?

ゴブリンの友達に。


それでもどうにかゴブリンを出し抜いて森の中腹に入ると今度は昆虫系の魔獣に襲われる。特に評判が悪いのはワームだ。ヌメッた芋虫みたいな見た目で人間丸呑みにするような魔獣なんだが気持ち悪がられると傷ついてショボーンとする。ちなみに山田花子だ。

繊細で傷つきやすい奴なので優しく接してあげてほしい。魔獣は見た目じゃないんだよ!


さて、興奮した頭をちょっと冷やそう。

爪に氷を纏わせて冷えピタ代わりにする。お~、冷たくて気持ち良い。

落ち着いたところで村が見えてきた。今日は隣村から幼馴染が来ている。

あいつなら蠍の尻尾も上手に焼けるだろう。ちゃんと焼いてくれたら半分くらいは分けてやろう。


「ただいま」

「あっ! お前なんで村に居なかったんだよっ! 早く村長の所行ってこいよっ!」


近くに居た見張り係に挨拶したら怒られた。

俺が狩りに出るのは昨日の内に話してあったはずなんだけどな?

理不尽に怒られてる気がしてならないが何も言わずに村長の家に向かう。狩った獲物は村長の家に行く途中で俺の家に置いていった。親に食われそうだったから尻尾だけは食わえていった。

これだけは譲れん!


「こんちわー。村長、見張りからの伝言で来ましたよー」


村長の家の前で扉をノックしてから来客だと伝える。『待ってろ』と村長が言い終わる前に扉が凄い勢いで内側から開く。

咄嗟にバックステップで直撃は避けたが村長宅から俺に向かって飛び出してきた影までは避けきれなかった。


「ひっさしぶりー!」


飛びかかってきたのは炎のように紅くてフワッとした毛並みの狼。炎狼族の林焔はやしほむら、16歳、メスだ。

林が燃えてしまうとか言うツッコミはなしで。一部のオスは萌えてしまうらしいが、俺の幼馴染です。

炎狼族とは爺さんの代まで敵対関係にあったが今の村長同士が無益な争いに終止符を打ってからは隣村ということで仲良くやっている。

今では氷狼と炎狼のハーフまで居るくらいだ。


「会いたかったよ、凍~!」


グイグイと顔をすり寄せてくる。オスとしては嬉しいが正直離れてほしい。焔の親父さんがモノっ凄い笑顔でこっちを見ている。ただし目は笑っていない。

口パクで何か言っている。


『後で山裏来いや』


絶対に行きませんとも。




「再開を喜ぶのはその辺にして中に入れ。乳繰り合うのは後にしろ」


威厳のある声に焔がピシッと背筋を伸ばして俺から離れる。

声の主は氷狼族の村長、年は54と中々年寄りだが未だに負け知らずのトンデモ爺さんだ。

さて、俺が呼ばれたのは他でもなく焔が居るからだろう。焔は俺くらいの年の奴らからかなりのアプローチを受けている。その護衛係が俺だ。

幻狼はどの種族も『好きな相手は力尽でモノにしろ』と考えているから焔は結構襲われる。そんなとき白羽の矢が立ったのが同世代では腕も良く、焔を襲わない(焔が襲われても良いと言った)俺だったので親父さんの頼みで焔が村に来た時の護衛をしているのだ。

睨むな、理不尽だ。


とにかく村長宅に入る。

机の上には鍋とスープが置かれている。キッチンから人化した村長夫人が人数分の皿とスプーンを持ってきた。


「さっさと人化して席に着け」


幻狼族は狼の姿から人間の姿になれる。と言っても髪は俺なら青白くてストレート、焔は紅くてフワッとしている。これが人間とは大きく違う特徴だろう。

村長に言われたとおり人化し席に着く。


「さて、凍、お前に命令がある」


16歳に何を頼む気だ(魔獣は大体18で成人)。


「炎狼族の村に行け。雷狼族との抗争が本格化したら、子供たちを守れ」

「明らかに荷が重過ぎるっ!」


思わず叫んでしまった。まさか子供にそんなこと頼むとは思わなかった。


「まあ待て、話は最後まで黙って聞け。質問は後で聞く」


今直ぐ断りたい。


「何もお前だけというわけじゃない。お前はあくまで予備の予備。本当にどうしようもなくなった時に子供たちをこの村に案内するだけだ」


追っ手の雷狼がロリコンだったらどうすんだよっ! てか雷狼ってオスもメスも繁殖に積極的だって聞いたぞ? 下手したらショタコンに狙われるっ!?


「ちなみに今の雷狼族は同性での行為が流行っているらしい。精々掘られんように気を付けろ」


余計心配になったわっ!

てか気を付けなきゃなんないのはメスじゃなくてオスかよっ!

せめて綺麗なお姉さんに襲われたかったよっ!


「凍、お前の幼馴染の村が雷狼に蹂躙されるかもしれないのだ。幼馴染の不安を少しでも和らげようという気概はないのか」

「そんな気概はホモレズ話で吹き飛んだ」


どうせなら焔とお姉さんの絡みを眺めたいくらいだ。美少女がお姉さんにアフンアフン言わされている光景……アリだな!

逆に自分が野郎に掘られている姿……吐きそうだ!


「腑抜けが。だがこれは決定事項だ。この村にお前の帰る場所は無い」

「この悪徳村長っ!」

「では細やかだが宴を開こう。氷狼と炎狼との協力を祝してな」


この会話に焔や親父さんは終始無言だった。ちょっと気まずそうだったのが腹立たしかった。


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