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転生先が二次元みたいなイベントを多発させてきますが、リアル恋愛フラグは勘弁してください!  作者: 空月


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1.おおむね平凡な私を悩ますそれの名は、

「転生先が二次元みたいな三次元だったけどエンジョイしない人達(二次元愛)の話。」(https://ncode.syosetu.com/n3956bs/)、リライト版です。

見覚えのある方も、そうでない方も楽しんでいただければ幸いです。




 私はどこにでもいるような平々凡々なオタク(女性向け特化型・一般向けと男性向けは嗜む程度)である。

 容姿はまあ、ふた目と見れないというわけではない。けど間違っても美形の括りには入らない。

 成績はとある事情により授業中に内職していてもなかなかの成績を維持できる程度。でもまあ、平凡の範囲内である。


 ちょっと平凡ではないかもしれないのは、別の世界で生きた記憶があるという一点だ。『とある事情』はここにかかってくる。


 とは言っても、二度目(記憶にある限り)の人生の舞台は、ぶっちゃけ前世と大して変わりなかった。文明とかそういうのの点において。


 いや私にとっては嬉しかったけども。何せ前世好きだった本とかゲームとか普通に存在してるわけだし。心のオアシスたる二次元が無かったらうっかり絶望して死んでたかもだし。


 ……え? 二次元への愛をこじらせすぎだって?

 仕方ないよ、いくら変わりないって言っても前世の知り合いはいないわ家族ももちろん前世と違うわむしろ変わりないのは自分くらいってのはわりときつかったんだ。そんな中、前世好きだったものが現世にもあるとか知ったらのめり込むだろ常識的に考えて。


 しかし前世とあんまり変わりない世界とはいえ、いわゆる逆行とか前世の過去時間軸に生まれたとか考えるには、ひっかかる点が幾つもあった。なので私は、現世は前世を基準に考えると別世界――異世界であると結論付けたのだ。


 オタクにわかりやすい例で言うと、前世で楽しんだコンテンツが存在するだけでなく、その発売年月が早まっていたり、絶対に前世にはなかったと言えるのに、世界で誰もが知ってる的、私は知らない名作が存在したりしていたのだ。

 ……まあ、逆だったら血涙を流していたかもしれないけど、つまるところコンテンツが増えてるだけなので、「なんか前世と違うんだなぁ」くらいにしか考えてなかった。

 私にとって大事なのは楽しめるコンテンツの存在であって、「世界がちょっと違うかも?」くらいは些細なことだったのだ。



 そんなこんなで心の支えもあったので、私は特に問題なくすくすく育っていった。

 前世とは違う家族に最初は戸惑ったけど、赤ちゃん時代から意識があったので慣れた。

 仲もまあ良好だったし。というか気づいたらなんか溺愛されてた。多分末っ子で唯一の女で尚且つ(エセ)病弱っ子だったせいだと思われる。

 前世の記憶と意識と子どもの体のバランスがどうとかそういう理由かは定かじゃないけど、幼少期は超ひ弱っ子だったのだ。ちょっと本気出して考えると頭オーバーヒートするとかないわー。


 ……でも。歳を重ねるごとにアレ? って思うようになってきたわけですよ。

 だっていくら前世の記憶があるからって、顔まで全く前世と一緒ってなんか変でしょ。どうせなら美少女だったらなーって思ったよ思いましたよ今生の家族が美形ぞろいだから尚更ね! むしろ橋の下で拾われたんですかって訊きたくなるレベル。


 で、ここって現実っていうかどっちかっていえば二次元に近いんじゃね? って考え始めたのは中学くらいの時だった。

 うん、つまりショタが二次成長を経て少年になるあたり。美少女が大輪の華として咲き始めるあたりと言い換えてもいい。


 要はありえないくらい周囲の顔面偏差値が高かったという話だ。なんのいじめかと思った。マジ異世界だと思ったね。もう種族とかが違うんじゃ? っていうレベル。

 とはいえ、見渡す限り美形、美形、美形というだけなら、「二次元かな?」と思うより「顔の平均レベルが激高なのかな?」と思うだけだった。


 ……そう、この世界には、美形以外だってもちろんいるのだ。ただしそれは――いわゆる『モブ』としか表現ができないのである。

 「わりあい整ってるのでは?」というクラスメイトから、「え、こんないかにもな悪役顔があっていいの?」と思う不良まで、いろいろ居るには居る。居るけれど、一様に、なんというか……美形の面々に比べて、存在感が弱いのである。これはもう感覚の話なので、そういう感じがするとしか言えない。

 でも、まあ、それだって、特に私のオタクライフに不都合があるわけじゃないし、そんなに深く考えたことはなかったのだ。――恐怖の『逆ハー補正』がかかるまで。


 逆ハー補正――略さず言うと逆ハーレム補正――というのは、いわゆる『主人公補正』の一種である(『主人公補正』がわからない人はググってほしい)。

 恋愛関係に偏重した主人公補正というか、つまりはとっても異性に好意を持たれやすいようになっているやつだ。

 笑いかけるだけ、頭をなでるだけで異性を惚れさせる場合は、『ニコポ』『ナデポ』などの俗語で表されたりもするけど(でもこれ結構死語かも)詳細は割愛する。

 『逆ハーレム』なので、この場合は男性からの好意を持たれるやつである。


 いわゆる逆ハーレムものは好きだ。日常的に画面越しに堪能するくらいには好きだ。イケメンおいしいです。乙女ゲーは私のバイブル。

 いかにもな正統派キラキラ美形も派手ではないけど整っている系の陰のある美形もなんでもおいしくいただけます。最近は泥臭く渋いオッサンとかもイけるようになりました。二次元ならね!


 だがしかし、現実にそれはいらない。マジいらない。

 なんでそんなことを大真面目に言うかというと、私は、自分がこの世界の主人公だ! とまでは思わないものの、結論として『逆ハー補正』を得ているとしか考えられないと思っているからである。


 そしてそれは、恐怖でしかない代物なのだ。


 何が恐怖かって思う? 思うよね。私も当事者じゃなかったら思った。

 でも、よく考えてみてほしい。


 モデルもしてるとかいうクール系校内アイドルと人気のない図書室とかで二人きりになって、もちろんこっちはコミュ能力とかオタク間でしか発揮できないような底辺オタクだから話しかけるとか無理で、同じ空間で同じ空気吸っててすいませんって言いたくなるような顔面格差をひしひしと感じながら耐久レースばりに無言が続くっていうのを両手の指じゃ足りない位繰り返して。

 度々そのアイドルを探して現れる人間たちに突き出すのもアレだしと思って適当にごまかしてたら。



「……あんた、何も言わないんだな。俺がここによく避難するっての、全然噂にならないし。誰かが探しに来ても、ごまかしてくれるし。何も聞かないでくれるから俺は助かるけど――変な奴」



 とか、



「……なんか、あんたの傍っていいな。安心できる」



 ……とか言われて、何故か距離が(物理的に)縮まっていって。

 挙句の果てに、



「なあ、あんたが迷惑じゃないなら、だけど、――その、今度映画付き合ってくれない? いや、ペア招待券もらったんだけど、一緒に行くような奴が思いつかなくて。あんただったらいいかなって」



 ……とか言われたらどうよ。


 怖くない? 明らかに勘違いしてるよ安心されてもこっちはちっとも心が休まらないよって思わない?


 もしくは、偶然が偶然を呼んで顔見知りになった完璧超人みたいな生徒会長様に、



「自分を飾らないんだね、キミは。そういうの、……好きだな」



 ……とか目が潰れそうなキラキラ笑顔で言われても、それただの怠惰だから不精だから女子力低いだけだから! ってならない?

 そりゃあなたに近づく女子は外見にも手ェ抜かないし社交性抜群の人ばっかりだろうけど、だからって物珍しげに興味持たれても困るんですよ! 主に周りからの嫉妬的な意味で!


 しかも出会うイケメンが本当多種多様でキャラも濃いんだ……。

 顔面偏差値が高い現世においてでも飛びぬけてる容姿なのは当たり前、生まれてくるときに神様から二物も三物ももらってきたんですかってくらい才能に溢れてて、生い立ちとかでトラウマだのなんだのはあるけど根は善良。

 なんなのそのハイスペックっぷり。前世から引き続いての凡人に喧嘩売ってるの? イケメン爆発しろ。


 っていうかそもそも、トラウマ解消イベントとか日常的に起こりうるものなの? おかしくない? 何ゆえ通りすがりの女生徒Dみたいな私にそんな話しようと思った。気分? 気分なの? 自分の個人情報をもっと大事にしてください。


 とりあえず俺様系男子は当たり前みたいに人を拉致るのを止めていただきたい。犯罪だから。私が訴えたらきっと負けるよ? 善意だってわかってるからしないけど。

 でも私別に高級料理とか興味無いんで。最新式のホームシアターとかヘリコプターでの空中散歩とかも興味無いんで。

 初めて百均入ったときとかファーストフード食べた時の反応は面白かったけど、正直価値感違いすぎてマジ別世界の人間だわー。


 ……と、まあ、他にもいろいろいるけど、共通してるのはみんな外見だけでも女が釣れて、中身のスペックでも女が釣れて、むしろうっかり男も釣れそうなくらいの人誑しスキル保持者で――そして何故か私に好感を抱いているということだったりする。


 それが一般的に言われる恋愛かどうかはこの際関係ない。

 とにかく当たり障りのない対応(コミュ障的精一杯の努力)をしているだけで何故か好感を持たれる、という状況がどれだけ不可解でどれだけ恐怖を煽るものか想像してみてほしい。なんか違うものが見えてるとしか思えない。


 この状況を楽しめるタイプのオタクもいるだろうけど、あいにくと私はそうじゃなかった。むしろ日々起こるゲームのイベントみたいな出来事によって二次元と戯れる時間が減るのが憂鬱で仕方ない。


 そもそもいくら二次元っぽいとはいえ現実(リアル)の人間と接触せざるを得ないのがストレスだ。人付き合いが苦になるタイプのオタクには罰ゲームでしかない。

 二次元への愛に生きるのに何の不満もないのになんでこうなる⁉ って言いたい。相手がいないから言えないけど。……転生物でよくある神様だの高位の次元の存在だのが「私が転生させました」的に出てくるイベントはなかったのだ。


 つまり苛立ちをぶつける先すらないので、せめて愚痴れる相手が欲しい。でも共感を得るには前世の記憶があって前世と同じ容姿(not美形)で尚且つ二次元愛のオタクでないとならないんだよ? いるわけないよねー。



 ……なんて、思っていた頃もありました。



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