中学生、鹿児島に帰る
やっと鹿児島中央駅に着いた。一年ぶりだ。
とても晴れていて、車やバス、路面電車が行き交っている。人通りも多い。一応平日なのだが、活気に溢れている。
近くの歩道に移動しアミュプラザを見上げると、屋上には、いつもと変わらない大きな赤い観覧車がある。
ここに来るたびに、やはり大きいと思わせてくれる観覧車。いつかは乗ってみたいものだ。
毎年のここでのルーティンについて説明しよう。
バスを降りたら、まず、近くの百円均一ショップに向かい、ステレオイヤホンを購入する。それだけだ。
なんとも奇妙なルーティンだと感じただろう。私もそう思う。
私は移動時間にDSをすることがある。公共交通機関を使っている場合は、ゲームのbgmや効果音を聞くことができないので、イヤホンを使う。
最初にここでイヤホンを買ったのが何年前かは忘れてしまったが、音が聞こえなかったことを良しとしなかった私は、イヤホンを買った。
百均のクオリティなので、半年ほどで壊れてしまう。しかし近所ではなく、鹿児島のあのお店で買いたいと思うようになった。
このルーティンにはそんな理由がある。
百均に向かって歩いていくと、南国の暖かい風に吹かれた。
七月の終わりの風は少々熱風のようにも感じるが、体感の暑さで言えば、私の住んでいるところほどではない。湿度に差があるのだろう。そこまで蒸し蒸ししているわけではない。
百均の入ったビルに入る。クーラーの効いた涼しい屋内だ。
エスカレーターを五回登ると、お目当ての百均に着いた。
いつもの棚に急いで、安いイヤホンを買う。
これで、ルーティンは終わり。いつでも快適なDSライフを送れるというものだ。
私は祖父母の家に向かっているわけだが、バスで近所まで行かなければならない。そこからは迎えに来てくれる。
数年前は空港まで迎えに来てもらっていたが、身体が心配だから、と、母が気を利かせてこうなったようだ。
事故には遭ってほしくない。
バスの時刻表を把握しているわけではないので、早めに確認したいところだ。
信号待ちは億劫なので、地下通路を使ってバスターミナルに行く。
時刻表を見ると、時間にはまだ余裕があるらしかったので、アミュプラザに行くことにした。
商業施設だが、買い物をしに行くわけじゃない。桜島を見ようと思ったのだ。
鹿児島の象徴的存在、桜島を。
またもやエスカレーターに乗る。夏休みだからか、家族連れが多いように感じる。
最上階には、これ見よがしに大きな窓があったが、ビルの隙間から少ししか見ることができなかった。
観覧車に乗れたら、もっとよく見えたのだろうが。
バスターミナルの方に戻ってきた。後十五分ほど待つことになりそうだ。
待っていると暑く感じたので、持ってきたお茶を流し込む。長旅によって冷えてはいない。
去年はもっと暑かったような気がする。耐えられなくてスーパーでアイスクリームを買ったんじゃなかったか。
一昨年は暑いわけではなかったが、スコールのようなゲリラ豪雨に見舞われた。あのときは大変だった。
私の後ろに、三人の家族が並んだ。三人と言っても父母子ではなく、母子子だったが。
この近辺に買い物に来て、その帰りなのだろう。母親は物がパンパンに入ったレジ袋を持っている。
この人たちは果たして終点まで乗るのかどうか。途中下車だろうな。あんな境地まで行く人はあまりいないだろう。
私はそこまで行くが。
ようやくバスが来た。今年は遅延せず時間通りだった。
不意に、去年鹿児島市に母と来たことを思い出した。
天文館に行き、本場の白熊を食べた。練乳の味は甘く、今でも忘れられない。
照國神社に参拝し、奇妙な形のイヌマキを見た。どこかの資料館にも、同じような形の木があったような気がする。
初めて路面電車に乗った。公共交通機関でありながら、乗用車のすぐ横を走るのは、見ていて飽きなかった。
どれもまた来たいと思えるようなことばかりだ。
鹿児島には多くの魅力がある。紛れもない事実だ。
大人になった将来も、住んだり、来たりしたい。
とても、良い場所だと思えるから。
バスに乗った。
もう、祖父母の家は遠くない。
私の成長した一年を、しっかり見てもらいたい。
そう思いつつ、DSの電源をつけ、新品のイヤホンを挿す。
左から、軽快な音楽が聞こえてきた。
私自身の体験をもとにした私小説です。
気分が乗れば続きを書きます。




