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中学生、鹿児島に帰る

作者: お餅
掲載日:2026/07/31

 やっと鹿児島中央駅に着いた。一年ぶりだ。


 とても晴れていて、車やバス、路面電車が行き交っている。人通りも多い。一応平日なのだが、活気に溢れている。


 近くの歩道に移動しアミュプラザを見上げると、屋上には、いつもと変わらない大きな赤い観覧車がある。


 ここに来るたびに、やはり大きいと思わせてくれる観覧車。いつかは乗ってみたいものだ。



 毎年のここでのルーティンについて説明しよう。


 バスを降りたら、まず、近くの百円均一ショップに向かい、ステレオイヤホンを購入する。それだけだ。


 なんとも奇妙なルーティンだと感じただろう。私もそう思う。


 私は移動時間にDSをすることがある。公共交通機関を使っている場合は、ゲームのbgmや効果音を聞くことができないので、イヤホンを使う。


 最初にここでイヤホンを買ったのが何年前かは忘れてしまったが、音が聞こえなかったことを良しとしなかった私は、イヤホンを買った。


 百均のクオリティなので、半年ほどで壊れてしまう。しかし近所ではなく、鹿児島のあのお店で買いたいと思うようになった。


 このルーティンにはそんな理由がある。



 百均に向かって歩いていくと、南国の暖かい風に吹かれた。


 七月の終わりの風は少々熱風のようにも感じるが、体感の暑さで言えば、私の住んでいるところほどではない。湿度に差があるのだろう。そこまで蒸し蒸ししているわけではない。


 百均の入ったビルに入る。クーラーの効いた涼しい屋内だ。


 エスカレーターを五回登ると、お目当ての百均に着いた。


 いつもの棚に急いで、安いイヤホンを買う。


 これで、ルーティンは終わり。いつでも快適なDSライフを送れるというものだ。



 私は祖父母の家に向かっているわけだが、バスで近所まで行かなければならない。そこからは迎えに来てくれる。


 数年前は空港まで迎えに来てもらっていたが、身体が心配だから、と、母が気を利かせてこうなったようだ。


 事故には遭ってほしくない。


 バスの時刻表を把握しているわけではないので、早めに確認したいところだ。


 信号待ちは億劫なので、地下通路を使ってバスターミナルに行く。



 時刻表を見ると、時間にはまだ余裕があるらしかったので、アミュプラザに行くことにした。


 商業施設だが、買い物をしに行くわけじゃない。桜島を見ようと思ったのだ。


 鹿児島の象徴的存在、桜島を。


 またもやエスカレーターに乗る。夏休みだからか、家族連れが多いように感じる。


 最上階には、これ見よがしに大きな窓があったが、ビルの隙間から少ししか見ることができなかった。


 観覧車に乗れたら、もっとよく見えたのだろうが。



 バスターミナルの方に戻ってきた。後十五分ほど待つことになりそうだ。


 待っていると暑く感じたので、持ってきたお茶を流し込む。長旅によって冷えてはいない。


 去年はもっと暑かったような気がする。耐えられなくてスーパーでアイスクリームを買ったんじゃなかったか。


 一昨年は暑いわけではなかったが、スコールのようなゲリラ豪雨に見舞われた。あのときは大変だった。


 私の後ろに、三人の家族が並んだ。三人と言っても父母子ではなく、母子子だったが。


 この近辺に買い物に来て、その帰りなのだろう。母親は物がパンパンに入ったレジ袋を持っている。


 この人たちは果たして終点まで乗るのかどうか。途中下車だろうな。あんな境地まで行く人はあまりいないだろう。


 私はそこまで行くが。



 ようやくバスが来た。今年は遅延せず時間通りだった。


 不意に、去年鹿児島市に母と来たことを思い出した。


 天文館に行き、本場の白熊を食べた。練乳の味は甘く、今でも忘れられない。


 照國神社に参拝し、奇妙な形のイヌマキを見た。どこかの資料館にも、同じような形の木があったような気がする。


 初めて路面電車に乗った。公共交通機関でありながら、乗用車のすぐ横を走るのは、見ていて飽きなかった。


 どれもまた来たいと思えるようなことばかりだ。


 鹿児島には多くの魅力がある。紛れもない事実だ。


 大人になった将来も、住んだり、来たりしたい。


 とても、良い場所だと思えるから。



 バスに乗った。


 もう、祖父母の家は遠くない。


 私の成長した一年を、しっかり見てもらいたい。


 そう思いつつ、DSの電源をつけ、新品のイヤホンを挿す。


 左から、軽快な音楽が聞こえてきた。

私自身の体験をもとにした私小説です。

気分が乗れば続きを書きます。

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