あなたはだぁれ
短編です
夕暮れの職員室。夕日を背に、興奮した先生が俺たちを怒鳴りつける。
「わかったか!?お前ら!!二度とするなよ!!・・・・はぁったく、わかったら帰って良し」
「「「「「はぁ~い。すみませんでした」」」」」
全員でそう答えて、しょんぼりと背中を丸めながら職員室を出た。少し歩いて角を曲がって階段に差し掛かった瞬間、俺たちは教室へ一斉に走り出した。
「ははっナカセンめっちゃ怒ってたな!」
「な!あんな怒らなくてもいいのに!」
「だよなぁ!でもナカセン怒ると顔面白いよな!」
「鼻こぉんなに膨らんじゃって!」
「顔なんか真っ赤だったじゃん!」
げらげら笑いながら教室に走りこむ。夕方だから、部活をしてる4~6年生以外の生徒はほとんど残っていない。俺たちは5年生だけど、部活動には行ってない。本当はバスケ部に所属しているんだけど、面倒だからいつも俺たちはサボってしまう。
「あー、面白かった!」
「帰ろうぜ!」
「帰りにゲーセン寄って行こう!」
「いいね!」
「なぁ、でもさ、俺たちなんであんなに怒られてたんだっけ?」
「はぁ?お前何言ってんだよ・・・・・あれ?」
誰かがそう言いだすと、誰も理由がはっきりわからない。ナカセンに怒られるのは日常茶飯事だから、今回も誰かが何かしたんだろう、そう思っていた。
「俺はてっきり田中かと」
「なんでだよ、今回俺じゃねぇよ、桐谷だろ?」
「はぁ!?俺何もしてないけど?・・・・じゃぁ大野?」
「いや、浅井かと思ってた」
「え、森丘じゃないの?」
俺たちはみんなで互いを見合った。こんなに俺たちの意見がばらばらになることはほとんどない。
「え、なんで誰も今回あんなに怒られた理由がわかんないの?」
「知らねぇよ」
「えぇ~、怖っ」
「ナカセンに聞きに行く?」
「なんでだよwwwまた怒られるじゃんwww」
ナカセンはなんて言っていたっけと記憶を呼び覚ますけど、正直何て怒られたか覚えていない。あんなに怒ってるナカセンの顔は思い出せるのに。
「やめようぜこの話」
「そうだな、もう帰ろう」
「おぉ、・・・帰りに駄菓子屋寄って帰ろうぜ」
「いいね、行こう」
なんとなく怖くなってきて、俺たちは急いでランドセルを背負った。
昇降口で靴を履いて、学校の外に出る。
今日は駄菓子屋で何を買おうかな。肌寒いし、お湯を貰ってカップ麺みたいなものでもいいなぁ。でもあれは存外高いんだよなぁ。お小遣い足りるかな。
そんなことを考えて、ふと、学校を振り向くと、なんとなく違和感を覚えた。
「・・・ん?」
「どうかした?」
「なんだよ」
「忘れ物か?」
いや、なんだろう、何かがおかしい。今回は一体誰が怒られたんだっけ?なんで俺たちあんなに怒られていたんだっけ?
「なぁ、○○は?」
「は?」
「○○?・・・」
「誰それ」
誰だっけ・・・あれ?俺たちさっきまで5人いなかったっけ?
——あなたはだぁれ——
あなたはだぁれ




