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糸の切れたマリオネットは幸せか?

作者: 夕暮れの家
掲載日:2025/11/10

 白く透明な糸。月光を受け微かに光る。


 紡がれた繋がれた糸が切れたお人形。


 貴方は可哀そうだと思いますか?


 貴女は自由になれて良かったと、頬笑みますか?




 ある日突然動けなくなった。


 彼女と一緒に舞うことも邪悪で凶悪な魔物を打ち倒す一振りも、僕にはもうできない。


 見上げて糸をみる。


 あれが切れたせいだ。


 見上げて糸をみる。


 あれがあったからだ。


 手を伸ばす。


 もう一度……もう一度……。




 床に白が降り積もる。


 幾晩の月明かりを経ても戻ることはなく、時折吹きこむそよ風に糸は喜び身を震わせる。


 こびりついている舞台の曲が奏者もいないのに奏でられる。


 ここで右にステップ、ここで左にターン。最後はそっと彼女の手を取る。


 カタリカタリ


 不格好で皆様にお披露目はできないけれど。


 カタリカタリ


 積もった白が辺りに浮遊し月の道を指し示す。


 カタリカタカタ




 これで良かっただろうか。もう幾分も昔のことに思えて。


 カタリカタカタ


 これで笑って貰えるだろうか。皆様のお顔もおぼろげで。


 カタリカタカタ




 僕は勇者だった。僕は王子様だった。


 カタリカタカタ


 良い夢だった。甘い夢だった。


 カタカタカタリ




 朝日は不躾に僕を写す。こんなボロボロで不格好でダメダメな僕が映る。


 カタカタカタリ


 踏み出した一歩が不安で踏み出しては立ち止まる。


 


 彼はなんて言っていただろう。


 もう君は自由だと言ってくれたのだっけか。


 カタリカタカタ


 次の一歩が止まることのないようにそおっと踏み出す。


 カタリカタカタ


 どこに行こうか。物語に出てきたあの花畑がいい。


 カタカタカタリ


 


 気づけば見上げても糸はなく。


 見渡せば漆黒の夜空に星々が瞬く。


 あー寒い。


 あー不安だ。


 あー怖い。


 差し込む光に顔を上げれば、温かな光に包まれる。


 カタリカタカタ


 次の一歩はどちらにしよう。陽の差し込む方か夜が来る方か。あーこれが自由というものか。


 カタカタカタリ


 空から降りしきる雨水がボクの体を重くする。あーこれが自由か。


 カタカタカタリ


 目の前に続く道はどこに繋がっているのだろう。あー怖い。


 カタリカタカタ





 もう随分歩いてきた。お屋敷は遥か彼方でもう見えない。


 静かな川辺を一人歩く。


 カタリカタカタ


 目の前が徐々に明るくなる。陽の光が僕のボロボロの体を映し出す。


 ぽかぽかと温かい感じがして無性に眠たくなってきた。


 雑草が生い茂る野原に転がる。


 おやすみなさい。


 

 


 「王子様はこの時剣をとった。この世に再び光あらんことを!」


 少年が僕の体を持ち上げたかと思ったらかっこいい剣を持たせてくれた。


 「いざ行かん!悪を滅すのだ!」


 僕はポーズを取る。ここは見せ場だ。決め顔も忘れない。


 「魔王よ。人類はお前なんかに負けない!」


 負けない。僕は勇者だ。


 「ライトニングバーニンファイヤー!」


 ライトニングバーニンファイヤー!


 「魔王お前は操られていただけだったのか!?」


 なんだって!?


 「今日からお友達だ。世界の平和を共に守ろう!」


 魔王と固い握手を交わす。今日から友達だ。


 「ヒューリご飯よ。お人形は片づけて。」


 箱の中に乱雑に仕舞われる僕。


 僕はあの河原で拾われた。今はヒューリと楽しい時を過ごしている。


 糸が切れたマリオネットは幸せか?


 少なくとも僕は今、幸せだ。

10年前に途中まで書いて放置していた作品を最後まで書いてみました。

成仏できそうです。

お読みいただきありがとうございました(*'ω'*)

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