24-モールの援護
石の廊下に、規則正しい足音が響く。
それは王都の騎士たちのもの。
すぐそこまで迫っている。
モールは、塔の下階の回廊にひとり立っていた。
肩には古い外套。腰に銀飾りの紋章。
そして手には――「かつて拒んだ自分の印」を握っていた。
「10年前、僕は逃げた。
番契約も、名前も、信頼も、全部置いて、風の吹かない場所に沈んだ」
誰に言うでもなく、呟く。
声が石壁に反射して、戻ってくる。
「でも、君たちは違う。
逃げずに、向き合って、ちゃんと愛することを選んだ。
……それだけで、もう僕よりずっと、風の中にいる」
足音が近づく。
モールは、深く息を吸い、騎士たちの前に歩み出た。
堂々と、迷いなく、静かに笑って。
「おや、私のことをお忘れですか?かつてこの塔に通っていた失敗作ですよ?」
騎士たちの剣が抜かれる。
「通報された反逆者と、風読みの末裔なら……上階だよ。
でもね、ここを通るには、ちょっとだけ「風の許し」がいるんだ」
懐から取り出したのは、レイから受け取った小さな風脈石。
それを床にたたきつけると、空気が爆ぜたような風圧が廊下を吹き抜けた。
「あとは任せたよ。
今度こそ、風を通せるふたりに――全部」
彼の姿が、騎士たちの間に霞んで消える頃、
塔の最上階では、ふたりの影がそっと扉を開いた。




