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09

 その夜、廃工場の中はやけに静かだった。


 遠くで犬が吠える声がしたけど、ここには届かなかった。

 月明かりが屋根の隙間から差し込んで、鉄骨の影を床に落としている。


 茜は持ってきた懐中電灯を天井に向けて、

 ぼんやり光を広げた。


「ね、天井、星に見えない?」


 たしかに、穴の空いた屋根から光がこぼれていて、

 その影が、どこか星座のように見えた。


「ここ、いい場所でしょ」

 茜がそう言って、床に座った。

 毛布の上に寝転んで、目を閉じる。


 俺はその隣に座りながら、耳を澄ませた。


 車の音も、人の声も、なにも聞こえない。

 あるのは、古い建物の軋む音と、茜の呼吸だけ。


 誰にも見つからない。

 本当に、ふたりきりだった。


 今日だけは、ちゃんと眠れそうな気がした。

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