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05

「……ほんとに入ってきたんだ。大胆だね、きみ」


 少女は缶コーヒーを両手で包みながら、俺を見ていた。

 その目は笑っていない。けど、追い払うでもなく、警戒もしない。

 どこか、最初から諦めているような目だった。


「べつにいいけど。ここ、誰も来ないから。

 ていうか、来たの、きみが初めてかも」


 俺は何も言えずに立ったままだった。

 逃げる理由も、話す理由もなかったけれど、

 ここで急に「ごめん」って言って出ていくのも、違う気がした。


「ねえ、きみさ」

 彼女が言う。

「学校、サボったでしょ?」


 ドキッとした。でも、否定はしなかった。


「私も。……っていうか、もう行ってないけどね」

 そう言って彼女は、空になった缶をころりと転がした。


(あかね)。……名前」

 不意に口にされたその言葉に、俺は少しだけまばたきをした。

「あ、言っといたほうがいいかなって。なんとなく」


 茜。

 その名前が、やけにこの場所に似合ってる気がした。


 この子は、ここに“住んでる”んだ。

 本当に。


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