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扉は、思ったよりもあっさり開いた。
中はほこりっぽくて、空気は重いのに、どこか静かだった。
屋根の隙間から差し込む光が、床のゴミや鉄くずをぼんやり照らしている。
誰もいない。そう思った、そのときだった。
「……お客さん?」
声がして、びくりと肩が跳ねた。
振り返ると、少し離れた柱の陰に、女の子がいた。
年は同じくらい。
膝を抱えて、缶コーヒーを口にしていた。
制服じゃない。だけど、どこか学生っぽい。
「ここ、私んちなんだけどなぁ」
そう言って、彼女はにこっと笑った。
でも、その笑いにはどこか違和感があった。
うまく作られた、借り物の表情みたいな。
「ようこそ、うちへ。なーんて、ちょっと言ってみたくなっただけ」
俺は、何も言えなかった。