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ラジオから、知らない曲が流れていた。
古い機械だからか、ところどころにノイズが混ざる。
でも、それが逆に心地よかった。
雑音も、途切れたメロディも、ここに似合っていた。
茜はソファに体を預けて、目を閉じていた。
俺は壁にもたれて、空を見ていた。
会話はなかった。
でも、必要なかった。
観葉植物が、風で小さく揺れた。
ふたりの呼吸が、静かに重なっていた。
この場所には、たぶん永遠なんてない。
いつかまた、誰かに見つかるかもしれない。
壊されるかもしれない。
でも今は——ここにいる。
それだけで、十分だった。




