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太陽が少しだけ傾いてきて、工場の鉄骨が長い影を落とす。
風がやわらかくなって、ラジオの音も少しだけ遠くに感じた。
観葉植物は、きちんとそこにあった。
まるで最初からこの場所にいたみたいに。
茜は缶コーヒーを手のひらで温めながら、ゆっくり言った。
「ねえ、また明日も来る?」
その声に特別な意味はなかった。
でも、どこかで“また来てほしい”って気持ちが、ちゃんと伝わってきた。
「来るよ」
俺はそれだけ答えた。
約束じゃない。決意でもない。
ただ、そうするのが自然だったから。
茜は「そっか」とだけ返して、また静かにコーヒーを口に運んだ。
何も変わらないように見えて、
何かがちゃんと続いていく気がした。




