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茜の言葉を、ひとつずつ思い出していた。
「この道、静かで好き」
「夜はあの公園、けっこうあったかいよ」
「風抜けて気持ちいい坂、あるんだよ。音が全部流れてく感じ」
そのときは、なんとなく聞き流していた。
でも今ならわかる。
あの子は、ちゃんと場所を選んで生きていた。
誰にも見つからない道を、
少しだけ息ができる場所を、
いくつも拾いながら生きていたんだ。
それを全部、なくしたとは思えなかった。
ポケットのメモを取り出す。
しわを伸ばして、文字を見つめる。
《見つけてくれて、ありがとう。》
……だったら、もう一度。
今度は俺が、見つける番だ。
そう思ったとき、自分の中にあった何かが静かに動いた。
不安とか、迷いとか、そういうものじゃない。
ただ、ごく自然に、当たり前のように。
探そう。
まだ、遅くない。




