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紙を広げた。
何度も折り畳んだあとがついていて、文字のインクは少しかすれていた。
《ごめんね。ちょっと疲れた。もう、いいかなって思って。》
……それだけの文章だった。
でも、その下に、小さな書き足しのような文字があった。
《見つけてくれて、ありがとう。》
最初に読んだときは気づかなかった。
折り目の間に、隠れるように書かれていた。
俺はその文字を、何度も何度も指でなぞった。
強いわけでも、優しいわけでもない字。
でも、そこには確かに“茜”がいた。
「ありがとう、か……」
言葉にしてみると、胸の奥がじわりと熱くなる。
きっと、茜は本気でこの場所に居たんだ。
それが、どんなふうに壊れてしまったとしても。
壊されたのは、場所だけだ。
記憶も、時間も、茜も、全部、まだここにある。
だから俺は、まだ終わりにしたくなかった。




