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二日ぶりに工場に来た。
扉の前で、少しだけ躊躇した。
だけど、開けてみると、中は少しだけ変わっていた。
ソファが倒れていた。
毛布は散らかり、缶詰の空き缶が床を転がっている。
誰かが入ったんだと、すぐにわかった。
茜が消えたあと、ぽっかり空いたこの場所を、空いたままにしておいてくれない誰かがいた。
「……マジかよ」
小さくつぶやいた声が、鉄骨に反響して、やけに薄っぺらく響いた。
昨日までの、何もなかったはずの静けさが、
今はただの“空っぽ”に変わっていた。
崩れたのは、廃工場だけじゃなかった。
ここにあったはずの空気も、時間も、茜も、全部。
あんなに誰にも見つからなかったこの場所が、こんなにもあっけなく壊されるなんて思ってなかった。
ポケットの中の紙——茜のメモが、しわくちゃになっていた。
俺はそれを、もう一度、丁寧に開き直した。




