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教室に入ったとき、担任の目が少しだけ長く俺にとどまった。
その一瞬で察した。
ああ、なんかバレかけてるなって。
「最近、よく休むね」
放課後、職員室前で呼び止められたとき、担任はそう言った。
「家の人に、一度連絡しておこうか」
口調は優しい。でも、それが一番怖かった。
「大丈夫です」
口をついて出た返事が、自分でも不自然だったとわかった。
でも、それ以上の言葉が出てこなかった。
家に帰ると、テーブルの上にメモがあった。
《学校から電話あった。何かあった?》
母の字だった。
父はいなかったけれど、いるより重苦しい。
茜に、何も言えなかった。
工場の中では、いつも通りのふりをした。
でも心のどこかで、ひびが入る音がした。
このままじゃ、どっちの世界にもいられなくなる気がした。




