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その日も、いつもと同じように始まった。
コンビニで飲み物を買って、工場へ行く。
茜は先に来ていて、古いマットの上で体育座りしていた。
「おかえり」
そう言われるのは、なんとなく照れくさい。
でも、嫌じゃなかった。
ふたりでパンを食べて、ラジオをつけて、
適当な話をしながら時間を潰す。
誰にも見つからない場所。
誰にも邪魔されない時間。
それが当たり前みたいに感じ始めていた。
……だからこそ、ふとしたときに思ってしまう。
これ、いつか壊れるんじゃないかって。
工場の天井を見上げながら、俺は何も言わずに息を吐いた。
茜が気づいたように言う。
「……きみ、たまに遠くを見るよね」
「そう?」
「うん。すごく遠く」
笑って言われたけど、胸の奥が少しだけ冷えた気がした。




