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「冷やすと、ちょっと楽になるよ」
茜はそう言いながら、俺の頬にもう一度缶を当てた。
開けていない、ひんやりしたお茶の缶。
言葉は軽いけど、扱いはやけに丁寧だった。
「……そんなに、ひどい?」
「ううん」
缶を引っ込めて、茜は小さく首を振った。
「びっくりしたけど……でも、私、こういうの、見慣れてるから」
さらっと言ったその一言が、妙に胸に残った。
「慣れるなよ」
つい、口からこぼれた。
茜は少し驚いた顔をして、それから苦笑する。
「うん、そうだね。……でも、慣れちゃうもんなんだよ、わりと簡単に」
その言い方に、明るさと諦めが混じっていた。
俺は何も返せなかったけど、茜の隣に座ったまま、黙っていた。
言葉じゃないものが、静かに交わされた気がした。




