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次に工場へ行ったとき、茜はすでに中にいた。
俺を見るなり、ちょっと眉を寄せた。
そして、何も言わずにこちらに歩いてくる。
「……それ、どうしたの?」
言われてから、自分の頬に手をやった。
昨日、父に殴られたところ。まだ少し腫れていて、熱を持っている。
「階段でぶつけた」
嘘のつもりで言ったけど、自分でも、ひどく白々しいと思った。
茜はそれ以上追及しなかった。
代わりに、工場の隅から冷たい缶を持ってきて、俺の手に押し当てた。
「冷やしたほうがいいよ」
それだけ言って、隣に座った。
缶の冷たさが肌にじんわり広がっていくのと、
茜が何も言わないまま隣にいることが、
妙に似たような温度で、少しだけ息がしやすくなった気がした。




