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笑い声が消えたあと、しばらく、缶詰をつつく音だけがしていた。
缶を挟んで向かい合うように座って、
ふたりとも、特に会話をしようとはしなかった。
だけど、気まずさはなかった。
「ここってさ、朝の光、きれいだよね」
茜がふいに言った。
俺が見上げると、屋根の隙間から差し込む光が、鉄骨を通して床に細い線を描いていた。
「昼より好きかも。この感じ、ちょっとだけ、透明になれる気がする」
茜はそう言って、小さく笑った。
さっきの缶詰のときの笑いとは違った。
照れでも皮肉でもない、ただそのままの、まっすぐな笑顔。
初めて見た気がした。
ああ、この子、本当に笑うんだなって。
そのことが、少しだけ、うれしかった。




