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朝、ほんの少しだけ寒さを感じた。
工場の隙間から風が入り込んで、毛布の隅をはらう。
寝袋の中の俺と、隣で丸くなっていた茜。
同じ空気の中で寝ていたはずなのに、どこか不思議な感覚だった。
茜が目を覚ます前に、コンビニに寄って戻ってきた。
あったかい飲み物と、食べられそうな缶詰をいくつか。
「気がきくじゃん、きみ」
そう言って、茜は缶切りを取り出した。
たぶん昨日も、今日みたいに始まっていたんだろう。
缶詰をあけようとした茜が、突然小さく声を漏らした。
「いっててて……」
フチで指を軽く引っかけたらしい。
彼女は指をふーふーしながら、小さく笑った。
「戦いに敗れた」
その言い方が妙にツボに入って、俺もつい笑ってしまった。
缶詰の湯気と笑い声が、朝の空気をほんの少しだけあたたかくした。




