「海外のなろう系小説投稿サイトには いったいどのようなものがあるのだろう?」トレンドも含め調べてみたら、とんでもない実態が……世界やべえよ!
昨日「ドイツのことわざから小説を書くアイデアを見つけた」という投稿を読み、感銘。
そういえば、海外にだって小説投稿サイトってあるはずだよね。
だったら海外のトレンドやテンプレなどを調べ、なろうに輸入したら面白いんじゃね、と思い立つ。
小説家になろうに似たウェブ小説プラットフォームにはどのようなものがあるのか、AI先生に質問しつつ、まとめてみた。
まずは欧米から――
「Wattpad」
世界最大手の小説投稿サイト。世界中の作家や読者が利用。多言語対応。幅広いジャンルの作品が投稿されている。2006年からサービス提供の老舗。テレビ局などとも業務提携。クラファンや有料コンテンツ化、広告収入といった「作家を支援するシステム」を実装。パラグラフごとにコメント出来たり、辞書機能まで内蔵と至れり尽くせり。その他、さまざまな先進的技術を搭載し、世界の最先端投稿サイトともいえる。月間アクティブユーザー数は、なんと6500~9000万人。投稿作品数も4億を超えるカナダのサービス(2021年に韓国のNEVER社が買収)。
人気ジャンルは上位から、ファンフィクション(二次創作)、BL、ロマンス、LGBT関連と続く。
「Scribble Hub」
新興のアメリカのサービス。月間アクティブユーザー数は約5000万人。英語圏ではWattpadに次ぐ規模。ファンタジー、サイエンスフィクション、ロマンスなどのジャンルが人気。読者と作者のインタラクションを重視したコミュニティ機能を実装。フォーラムが活発。
「Royal Road」
数十万規模の月間アクティブユーザーと推定。ファンタジー(LitRPG)やSF作品に特化したサイト。ジャンル特化型なため、界隈のひとたちには周知されているカナダのサービス。
「Inkitt」
ドイツのサービス。総投稿数100万以上に対し、月間アクティブユーザー数は数百万人規模と推定。ひょっとして穴場? AI技術を活用し、人気が出そうな作品を先取りして予測する機能を実装。
「Inkspired」
ルクセンブルクに本拠を置く多言語小説ポータルサイトにして、出版のプラットフォーム。スペイン語に強く、南米などの作家も獲得か。月間アクティブユーザーは約75万人。脚本やウェブトゥーンも扱う。クリエイターファーストの姿勢を打ち出す。日本では「エブリスタ」が業務提携し、国際的なコンテストも共催。
―― 後はオランダのSweekなど。
次は東アジア圏――
「起点中文網(Qidian)」
中国最大のウェブ小説プラットフォーム。月間アクティブユーザー数は約1億人以上で、総投稿数は1000万以上(どちらも推定値)。作者への報酬システムを実装(閲覧数や購入数に応じた収益分配)。人気ジャンルは、玄幻、仙侠(神仙道教をモチーフにしたファンタジー)、都市(現代都市を舞台にしたストーリー)、軍事、歴史など。
「晋江文学城(Jinjiang Literature City)」
女性向けコンテンツに特化したプラットフォーム。耽美(BL、ボーイズラブ)と言情作品が主軸。月間アクティブユーザー数は約5000万人以上で、総投稿数は300万以上(どちらも推定値)。穿越ものもそこそこ人気。もちろん作者への報酬システムも実装。
「ムンピア(Munpia)」
韓国最大手のウェブ小説プラットフォーム。月間アクティブは約40万人、会員登録者数は100万人以上、作家は5万人以上(2021年のデータ)。大規模な公募展を開催(賞金総額がすごい)。作家への高い報酬システム。知的財産の活用に積極的(ウェブ漫画、ドラマ化など)とあるが、ひょっとするとサイト側からメディアに売り込んでくれるのだろうか? 人気ジャンルは、ファンタジー、武侠(武術と義理・人情)、ロマンス、現代モノと続く。
「カカオページ(Kakao Page)」
韓国のサービス。月間アクティブユーザー数は約500万人以上とムンピアを上回る。AIを活用したコンテンツ推薦システムを実装。ただし、このサイトは映画やドラマ、ウェブトゥーン(スマホ向け縦読み漫画)などとの併設なので、小説単体の集客力は不明。人気即ウェブトゥーン(コミカライズ)の流れがあるのは魅力的。
―― 以前にも記事にしたことがあるが、日本では見かけない中韓での人気ジャンルといえば、やはり仙侠と武侠モノか。テンプレのシステムも国ごとにカスタマイズされていて、面白い。
―― 最後にインド
「Pratilipi」
月間アクティブユーザーは2300万人。作家登録は60万人以上。コミックやウェブトゥーン、オーディオコンテンツ(オーディオブックやポッドキャスト)なども提供しているため、カカオページと同様に純粋な小説投稿サイトとはいえない。人気ジャンルは現代インド文学、ロマンス、ミステリー、歴史、SF・ファンタジー。97%がインド国内の読者。
―― 中東のサイトも探してみたが、こちらはAI先生もお手上げの模様。政治的・宗教的な制約が厳しい地域なので、なかなか難しいものがあるのかもしれない。
◇
こうして世界の小説投稿プラットフォームのサービス内容を調べてみると、日本のサービスがいかに遅れているのかが伺えて、少々悲しくなった。
海外サイトを覗いてみて、改めてなろうにちょっと言いたいこと。
なろうの致命的な欠点のひとつに「投稿ジャンル」設定の少なさが挙げられる。
なろうでは小ジャンルを含めても「たった20」しかジャンル分けがない。
自分の今回の投稿がどれに当たるのかに迷う投稿者も非常に多い。
だから「その他のその他」の枠がカオス状態となってしまっている。
せめて、学園モノ、スポーツ、心理学(頭脳戦ほか)、ファンフィクション、高年齢向け(アダルトコンテンツという意味ではない)などの新規ジャンルは追加して然るべきだと個人的には考える(読者によるキーワード検索に甘えるな)。
特に「高年齢向け(R40)」枠などを作れば、読者層の棲み分けもスムースに。その探しやすさから、高齢化社会における「新規読者層の獲得」などでも独自色が出せるのではないだろうか。
さらに高年齢に媚びるなら「時事問題」について語る枠も作り、エッセイから切り離すともっと見やすくなる。各ランキング内容がカオスとなることも一気に減るだろう(日常エッセイとの切り分け)。
―― さて、これからしばらく各海外サイトを回って、日本では見かけないようなコアな設定やテンプレなどもちょこちょこ探ってみるかな。翻訳エンジンの精度も上がってきたし、内容くらいなら分かるでしょ。また何か見つけたら報告いたしますので、乞うご期待。
北米では「ファンフィクション=二次創作」が人気ジャンルとして確立しているのが面白い。メインストリームの人気作品の二次創作なのでキャライメージが明確で分かりやすいのも人気の要因か。
続編の脚本を求めるようなオリジナル映画作品などに、自作を売り込めるという意味でも良い文化だ。