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040 スキル

「夢だと思ってたのに、夢じゃ無かったの?」


 どこかで聞いた事あるような台詞を吐いて、真凰は目を覚ました。

 そういえばこの人、この世界にいる事が夢だと思ってるんだった。


「寝ぼけてないで、朝食食べたらすぐ出発するからね」

「美少女……夢じゃなくて良かった!」


 もうこの人の言動にいちいちツッコむ気にもならない。

 しかし野放しにする訳にもいかないから連れていくしかない、ジレンマ。

 私は収納に入れてあったパンとスープを取り出した。

 温めたスープを器に入れたまま収納していたので、取り出してすぐにいただく事が出来る。

 空間収納超便利。


「なっ……突然朝食が現れた!?今のって忍術!?」


 いや、そこは「今のって魔法!?」でしょ。

 この人本当に異世界転移して来た人なのかなぁ?

 私がいた前世の世界とはまた違う世界線で、忍者が今でもいる世界とか?

 いや、ひょっとしたらラノベの主流が忍者モノな世界かも知れない。

 それはそれで楽しそうだけど。


「今のはスキルで出しただけだから」


 何のスキルかは一応伏せておく。


「スキル……って何?」


 ん?昨今女子高生でもスキルぐらいは知ってそうなのに。

 いや、リア充はラノベなんて読まないだろうから、知らない人もいるか。

 とくにこの女性は言動こそアレだけど、かなりのべっぴんさんである。

 胸もアヤメなんて比べものにならないぐらいでかいし。

 ラノベとは無縁の生き方をしていた可能性が高いな。


「スキルってのは神より個人に与えられる特殊能力の事だよ。普通は神官の『スキル下ろし』の祈りによって得られるんだけど、稀に他の手段で得る人もいるね」

「へぇ、まるで超能力だね。まぁ忍術も超能力みたいなもんだけど」


 この人がいた世界では忍術は超能力の類いなのか。

 私の前世では忍術って、異常な程鍛えた肉体から繰り出す技ってイメージだったけど。


 朝食を終えた私達は王都へ向かって歩き始めた。

 私は少しでも情報を引き出そうと真凰に話しかける。


「真凰は森にいる前はどこにいたの?」

「えっとね、日本ってとこにいたんだけど知ってるかな?いやでもここって魔力が使えるから違う世界だろうし、分からないか」


 やっぱり日本か。

 同じ世界線とは限らないけど、服装から判断するに文化レベルは同じぐらいと考えていいのかな?


「じゃあ元の世界に戻りたい?」

「……アイナちゃん、君は迂闊だなぁ。日本について何も言及しないって。普通は知らない地名には何か反応するものだよ?あと世界を渡るって、実際にやってる私でも受け止めれなかったのにすんなり受け入れちゃダメ」


 ヤバ、この人言動がアホみたいだけど、意外としっかりしてる。

 私が転生者だと気付かれたかも?

 でも態々指摘するって事は敵対する気は無いのかも知れない……。

 結局その後はボロを出しそうな気がして、ろくに情報を得られなかった。

 そしてそのまま状況は変わらずに王都へと着いてしまう。

 しかし、ここで最大にして最悪の情報を手に入れてしまうのだった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 王都はその入場にも大きく制限が掛けられている。

 安全の為に犯罪歴や王都へ来た目的などを、入口となる門で入念に調べられるのだ。

 王都を囲む塀には東西南北に巨大な門があり、そこは主に貴族が出入りするのに使う。

 その他に16ヶ所程入場審査する門があって、私達は平民を装ってそちらから入場する事になった。

 貴族の通る門とは違い連日長蛇の列が出来てしまうので、とても時間がかかってしまう。

 ようやく私達の番となり、まずは全員のスキルを確認する水晶による鑑定を行う事になった。


 鑑定を行う者には守秘義務が課せられているため、私達の側からは水晶に何が映っているか見る事は出来ない。

 でも私達のスキルがバレてしまうのは拙いので、私の光学収納で他人のスキル情報を表示させる事に。

 光ってのは目に届かなければ見る事は出来ないので、目に届く前に光を収納して、同時に別の場所で採取した光を放出する。

 これでスキルを隠蔽して私達個人を特定させずに門を通過する事が出来た。


 王都へ入場してから、ちょっと気になったので真凰のスキルを、収納してあった光の情報から確認した。


「どれどれ……げっ!?」


 異世界言語翻訳スキルはたぶん持ってると思ってたんだけど、それとは別にもっとヤバいスキル持ってやがった。


——スキル『魔王』。


 それは私の妹アリアが持つスキル『勇者』と対を成すものだった。

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