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034 アリアの想い side.アリア

 国王への謁見、その後のパーティと心労が重なるイベントが続き、私の精神は疲弊していた。

 人前に出て晒されるような事は、正直言って私は苦手だ。

 リィナお姉様の方がそういった事は得意そうなのに、何故私の方が『勇者』なんていうスキルを授かってしまったのか?

 いや、お姉様はそもそもこういうイベントからは逃亡しそうだなぁ……。

 神様も適材適所で私の方を目立つ立場にしたかったのかもね。


「お疲れですな」


 パーティ会場から少し離れた場所で休んでいると、私について来てくれていた執事のセバルフが声を掛けてきた。


「当然でしょ。私は人前に出るような事は苦手なの」

「苦手という割には上手く立ち回っていたように見えましたが?」

「だって隙を見せる訳にはいかないもの」


 誰にと言えば、筆頭は伯父のゲスオールとその娘のヴェロニカね。

 あいつらに揚げ足取られていいように利用される訳にはいかない。

 ゲスオールは私が『勇者』であった事で喜んでいるようだけど、それは今だけだ。

 いずれ力を付けてゲスオールから子爵位を取り戻す。

 その為なら多少の事は我慢できるもの。

 それ以外にも隙を見せてはいけなさそうな貴族が多数いた。

 特に上位貴族達は私を取り込もうと躍起になっているようだったし。


 そんな中、ちょっと奇妙な貴族もいた。

 あれは確か——アルラウム公爵と言っただろうか?

 私を値踏みする……というよりは、何かを確認するような目でじっとこちらを見ていた。

 でも不気味という事もなく、何故か慈愛に満ちていた気がする。

 まだ幼い私に惚れたなんて事は無いよね?

 異世界じゃそんなの普通にある事らしいけど……。

 公爵はキリッとした紳士のように見えたし、さすがにそれは無いと思いたい。


「ねぇセバルフ、アルラウム公爵ってどんな方なの?」

「……何故そのような事を?」


 あれ?なんかセバルフの表情が変わった気がするんだけど。

 長年の付き合いのある私だから分かる程度だけど、アルラウム公爵の事は聞いちゃいけない事だったのかな?


「何故か話しかけてくるでもなく、じっとこちらを見ているだけだったから」

「そうですか。きっと勇者であるお嬢様を値踏みしていたのでしょう」


 やはり何か隠している気がする。

 でも話してくれないと言う事は、私が知る必要が無い事、あるいは知らない方がいい事なんだろう。

 でもセバルフは、お姉様になら話してくれるんじゃないかなと思う。


 私はお姉様と違って、異常事態に対処する力が弱い。

 セバルフに鍛えて貰って、この世界でもかなり強い方になったと思うけど、前世の常識に引っ張られてるせいで肝心なところで躊躇ってしまう事があるのだ。

 特に生命に関わる時はそれが顕著だ。

 前世では直接見る機会すら無かった、命を奪うという行為。

 私にとっては画面の向こう側で起こっている現実感の無い事だった。

 食べ物は目の届かない場所で加工されていた。

 親も素材からの料理等はせずに、既に食材となったものを購入してきて調理していたので、そこに至る工程を見る機会は前世では無いに等しかった。

 それがこの世界では、普通に生き物の形をした所から調理が始まる。

 父が生きていた頃は雇った料理人がやってくれていたけど、ゲスオールがアヴドメン子爵家を乗っ取ってからは自分で食事を用意する羽目になってしまった。

 お姉様は普通に鳥や猪等を解体して調理していたが、私は最初血を見るだけで無理だった。

 お姉様も前世の知識を持っているが、私とは違って普通に生き物を仕留めるところからやっていたらしい。

 同じ国出身っぽいのに、こんなにも違うのかと唖然としてしまったっけ。

 お姉様は逞しい。

 セバルフはお姉様をほぼ一人前として扱うが、私はいつまでたっても子供扱い。

 そこに不満を抱きつつも、その子供扱いに甘えている自分もいる。

 やはり『勇者』なんて私には相応しくないなぁって思うよ……。


 そんな考えに沈み込んでいると、ふと目の前に人の影が現れた。

 視線を上げると先程話に上げたばかりのアルラウム公爵が立っていた。

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