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028 術解除

 アウレーネさんは虎太郎の術によって行き過ぎた正義感を発揮する状態になってるんだっけ。


「虎太郎、アウレーネさんに掛かってる術を解いてくれる?」

「承知しました」


 姿を隠したまま虎太郎はアウレーネさんに近づき、術を解除した。

 パチンと何かがアウレーネさんの周りで弾ける。

 しかし、当の本人は特に何も気付いていないようだ。

 完全に解けるまで2日程度かかるらしいけど、少しはマシになったのかな?


「アウレーネさん、落ち着いてください。私です。冒険者のアイナです」

「そんな事は分かっている。侵入者であり、伯爵邸の扉を破壊した者である事もな」


 だめだこりゃ。

 完全に敵認定されてるし、術が解けたばかりだから何も変わって無いや。

 とそこでアヤメが隠行を解いて姿を現した。


「久しぶりですね、アウレーネ」

「お、お前はアヴドメン子爵家のメイドであるアヤメか!?お前も侵入者だったのか!」

「アウレーネ、誰に刃を向けているのか分かっていますか?」

「何の事だ?」

「この方はアヴドメン子爵家前当主のご息女、リィナ様ですよ」

「なっ!?」


 あら、ネタバレしちゃったかぁ。

 アウレーネさん驚きすぎて、女性がしちゃいけない顔になってるよ。

 とりあえず鼻水は拭いときなさいな。


「申し訳ありません、事情があって素性を隠してました」


 私はお嬢様ムーヴで恭しく頭を下げる。

 アヤメは何で私の仕草を見て笑いを堪えてるのかしら?


「あらあら、あのやんちゃだった子が立派になって」


 夫人の眼差しが生暖かい。

 まるで親戚のおばちゃんだよ。


「あらあら?リィナちゃん、何か失礼な事考えてない?」


 生暖かかった眼差しが一気に絶対零度へ!?

 こ、怖い……。

 この夫人は絶対怒らせちゃいけない人だ。


「アウレーネ、そういう事だから暫く退室しててくれ。彼女が我々に危害を加える事は無い」


 伯爵がそう言うと、アウレーネさんは渋々ながらも一礼して部屋から出て行った。

 またごねるかな?と思ったけど、術が解けたからか表向きは従順に行動してくれた。

 表向きと言ったのは、その目がめっちゃ私を睨んでいたからなんだよねぇ。

 術の効果が失われると同時に私への敵意も薄くなるといいなぁ……。

 アウレーネさんが出て行くと、伯爵が私の元へ近づいて来た。


「すまないね。それよりさっきの恐ろしい魔物の頭は本当にゴブリンキングだったのかな?」

「本当にゴブリンキングですよ。ほら」

「うおっ!何度見ても凄い形相だ。これを君が倒したのか……末恐ろしいな」


 キングの特徴はセバルフに聞いて知ってたし、収納した時に頭の中のリストに名称も載ってたから間違い無い。


「なので、とりあえずのところ伯爵領は安全です。あとは元凶である冒険者ギルドのギルマスを追い詰めれば終わりですね」

「今なんと言った!?ギルマスが元凶って……」

「ゴブリンキングに伯爵領を襲わせるように依頼してましたよ。あと、ギルマスが雇った暗殺者が色々喋ってくれました。ご息女のユリアンナさんをゴブリンの群れに襲わせたのも、夫人に呪いを掛けさせたのもギルマスです」

「そうだったのか。しかし、それが本当だとしても証拠が無ければどうする事も出来ない。冒険者ギルドは国を越えた組織なので貴族の権限も通用しないのだ。抗議したところで、せいぜい他所へ移動させる程度しか出来ないだろう。いや、この領が平和になるのならそれでもいいのか……」


 伯爵は諦めの言葉を吐くも、顔には悔しさを滲ませていた。

 妻や娘に手を掛けたんだから、許せる訳が無いよね。


「大丈夫、この後かならず尻尾を見せる事になるから、そこを叩けばいいんですよ」

「そんな事が可能なのかい?」

「ええ。とりあえず伯爵が所属する派閥の中で冒険者ギルドにも意見できそうなぐらいの人と連絡を取りつけて。あと、アヤメはアヴドメン子爵領の冒険者ギルドに行ってくれる?」

「やっとお嬢様と会えたのに、また私は別行動なんですかぁ!?」


 アヤメはブツブツと文句を言いながらも、虎太郎を引き摺って行ってくれた。

 虎太郎の事がまだ信用できないからと、連れて行く事にしたらしい。

 意外と仲良しか?

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