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026 おばあちゃん

 一先ず黒ずくめの人をこちらに寝返らせる事が出来た。

 おばあちゃんありがとう。


『どういたしまして』


 今何か聞こえた気がしたけど、気のせいだよね……?


『気のせいじゃないよ』


 やめろおおおおおっ!!

 幽霊とかマジ怖いんですけどおおおおおっ!!

 私転生してるけど、魂の段階の記憶無いから普通に幽霊怖いんじゃあああああああっ!!

 いや、これは幻聴だよね?

 無視してればいずれは消える筈。

 っていうか、どうして私の方に話しかけてくるのよ?

 自分の子孫である黒ずくめの人に憑いてなさいよ。


『だって、お嬢ちゃんの方が面白そうだし』


 あーあー、何も聞こえない。

 どこかで清め塩手に入れよう。

 あ、ゴブリンの血から塩分だけ収納したら塩にならないかな?

 近くで倒れていたゴブリンから、塩分だけ収納するイメージをしてみる。

 塩分の選別をスキル任せにしたせいかごっそりと魔力を持って行かれてしまったが、ゴブリンの血液中に含まれていた塩分だけを収納する事には成功した。

 これは『ゴブリン塩』と命名しよう。


「悪霊退散!悪霊退散!」


 収納されたゴブリン塩を周囲にばらまく。


『悪霊じゃないから退散せんよ』


 くそおおおおおおっ!!


「お嬢様、どうかしたんですか?」


 アヤメが私の奇行を見て心配そうに訪ねてくる。


「この黒ずくめの人のおばあちゃんの霊に取り憑かれたみたいで……」

「お嬢様ェ……」


 アヤメ、その残念な子を見る目やめなさいよ。

 本当に取り憑かれちゃったんだってば。


「あの〜、なんかおばあちゃんがすいません」


 黒ずくめの人はあっちの世界に行きかけた時におばあちゃんと話してるから、信じてくれたようだ。

 っていうか、たぶんこいつを生き返らせた時に憑いて来ちゃったんだろうなぁ。

 それならそのまま黒ずくめの人に取り憑いてればいいものを……。

 まぁ悪霊じゃないらしいし、もうほっとこ。


 そういえばずっと黒ずくめの人って呼んでたけど、名前を聞いてなかったね。


「それで貴方の名前は?」

「名前なんてありません。俺は名無しの暗殺者です」

『その子の名前は“虎太郎こたろう”ですよ』

「名前は虎太郎って言うのね」

「どうしてその名をっ!?」

「だからおばあちゃんが教えてくれるのよ」

「……お嬢様、本当に霊に取り憑かれてるんですね」


 アヤメ、ドン引きしてんじゃないわよ。

 私だって今の状況にドン引きよ。

 紛れもなく虎太郎のおばあちゃんに取り憑かれてるって証明されちゃったんだからね。

 ようやくゴブリンを殲滅したと思ったら、とんだおまけが付いてきたもんだ。

 いや憑いてきたが正解か……。


 虎太郎はキョロキョロと宙に視線を彷徨わせる。

 取り憑かれてる私にも姿は見えないんだから、きっと見えないと思うよ。

 結局見えなかったようで、虎太郎は諦めたみたいだ。


「とりあえずおばあちゃんはいいとして、お嬢様の名前はリィナであってますか?」

「あー、今は逃亡中だから本名は拙いのよ。アヤメもだけど、お嬢様も止めてね。今は冒険者のアイナという事にしてるから」

「承知しました」

「分っかりましたー!」


 アヤメは本当に分かってるのかな?


「そういえばアヤメも指名手配されたって、どうして?」

「そうでした!私が奴隷商人に偽装してお嬢様を逃がそうと思ってたのに、私が不在の時にお嬢様が一人で逃げちゃうから、その時居なかった私が手引きしたと思われたんですよぉ。おかげで私まで指名手配です〜」

「それはアヤメがちゃんと報連相しないからでしょ。私何も知らなかったし」

「た、確かにそうなんですけど〜」


 う〜ん、不安しか無い……。

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