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001 空間収納

新作です。

「やはり、穢れた平民の血ね。聞いてるリィナ?あなたの事よ。あれだけ高ランクの祈りを捧げてもらったのにFランクなんて、ほんと無駄な出費だったわ。奴隷商人に少しでも高く買い取ってもらわなきゃね」


 煌びやかな装飾品を全身に纏った、THE成金といった小太りなマダムが吐き捨てるように私を罵った。

 そして実際に唾を吐き捨てた。

 え?マジで貴族がやること、それ?

 服装もだけど、品位の欠片も無いわ〜。

 私の伯母であるエギーラ=アヴドメンは低位貴族の出身のせいか、私の母が平民出身である事を見下して、ことあるごとに突っ掛かってくるのだ。

 下にいる者はさらに下を見下したいものだからね。

 伯母と言っても、父の弟の嫁なので血縁ではない。

 そしてまったく相手にしていない私に対し、さらに伯母が苛立つのもいつもの事だった。

 そんな伯母に対して、私は特に憤りなどの感情も沸かない。

 私はどこか壊れているのだろうか?

 若干9歳の少女としては、この理不尽な状況に悲嘆にくれて絶望するべきなのかも知れない。

 しかし、肉体の年齢とは別に、私の中には26年分の人生経験が蓄積されている。

 つまり、前世の記憶を有しているのだ。

 おかげでこんな絶望的状況下においても冷静でいられるのだからありがたい。

 いや、寧ろ少し高揚すらしている。

 あぁ、やはり私は少しばかりおかしいのだろう。


「明日の朝奴隷商人が来るまで、この地下牢に閉じ込めておきなさい」


 私を地下牢に残し、扉を閉めて伯母は出て行った。

 ここアヴドメン子爵家の地下牢は、スキルを封じる魔方陣が刻まれていて、低ランクのスキルでは絶対に逃げる事が出来ないようになってるらしい。

 そして、私が神より授かったスキルは低ランク中の低ランク、Fランクである。

 まぁ、普通に考えたら脱出不可能よね。


 扉の外にいた衛兵が、ガチャリと鍵をかけた。

 そして、扉についた小さな格子窓から一度除いて、そのまま衛兵は扉から離れていった。


「さて、どうしたものかなぁ?」


 少しカビ臭い石壁に囲まれた地下牢で一人呟く。

 まぁ選択肢なんて『逃げる』一択なんだけど、この地下牢には逃げる道なんて無いんだよね。

 唯一の出入り口である扉は鋼鉄製で、ようやく9歳になったばかりの美少女である私の力では開ける事はできない。

 美少女は非力なのだ。

 大事な事なので2回言った。『美』少女である(大事なので3回目)。

 そんな美少女である私(4回目)が授かったスキルは『空間収納』。

 どこでも物を異空間に出し入れ出来るという、商人なら垂涎の便利スキルだ。

 しかし、殺傷能力が重要視されるこの世界の基準では、全く攻撃に使えない『空間収納』は最低ランクであると認定されている。

 まぁ、私のように前世の知識を持ってないと宝の持ち腐れだもんね。

 誤認識してくれるなら、逆にありがたいけど。

 いずれにしても、ここから脱出するためにはこのスキルを使ってなんとかするしかない。


 一応こんな事になるんじゃないかと予想して、『空間収納』に色々なものを詰め込んでおいた。

 食糧も子爵家の食糧庫から一ヶ月分ぐらい拝借してある。

 でも、明日には奴隷商人が来ちゃうから、籠城してる場合じゃないんだよね。

 つまり今日中に扉の外へ出なければいけない。

 まずは鋼鉄製の扉を収納してみるとしますか。


「ふんぬっ!」


 いや、掛け声とかいらないんだけど、重そうだからなんとなく気張ってみた。

 右手を扉に向けて翳してるだけだし。

 収納には重さも関係無いから、本来であればスキルの力で収納されて扉は消えるはずだった。

 しかし、案の定扉にもスキルを封じる魔方陣が施してあったようで、何も変化は無い。

 そりゃそうよね。

 当然壁を収納して穴を開けて逃げる事も出来ないし。

 ここは発想の転換が必要かな?


「名付けて、逆天岩戸作戦〜!ぱちぱち!」


 本来天岩戸のお話は、引きこもったニー……じゃなくて女神を楽しそうな囃子で誘い出すというもの。

 しかし今回は引きこもってる側の私がアクションを起こして、外に出してもらわなければいけない。

 スキルがイメージ通りに動いてくれればいけるかな?

 私は扉の格子窓からそっと外の様子を窺った。

 扉から少し離れたところで、衛兵は椅子に座って居眠りをしている。

 絶対に逃げられないと思って油断してるな。

 よし、じゃあ作戦決行〜!

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