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59,ケチャックボール

 キュリオスに対応したのはアーサー、ノイマン、エマの三人であった。アーサーがキュリオスの剣をライオネスで受けて鍔迫り合いをしつつさらに煽った。

「自称王子の半端なキュリオス君。国民がいない国など国ではない。ということは知っているか……ああ、自称王子なら知らなくても当然だね。わりいわりい」

「貴様……叩き殺してくれるっ」

 キュリオスは一歩飛びのくとアーサーに大上段から渾身の一撃を見舞おうとした。

「破っ」

 ノイマンががら空きになったキュリオスの顔面に上段回し蹴りを叩き込む。キュリオスがたたらを踏んだ瞬間にエマが水魔法でキュリオスの顔を覆った。だが、キュリオスは息を止めてエマを睨むと一気に踏み込み、蹴りでエマを弾き飛ばした。弾き飛ばされたエマが集中力を切らした瞬間にエマの水魔法は霧散してしまう。


「この程度で偉大なるキュリオス様がやられるとでも思ったのか?」

「さすがは偉大なるキュリオス様。中途半端に偉大なキュリオス様にふさわしく鼻血がだらだら流れていますよ~」

「やだ。カッコ悪いキュリオス様。鼻血を流して女の子を蹴り飛ばすなんてモテませんよ」

「DVとかいうやつだね。最低の男がすることだな」

「キュリオス様は最低ではなく、中途半端なのだよ、アーサー君」

 彼らはキュリオスを煽り続けた。キュリオスは歯嚙みしながら全身を震わせノイマンに斬りつける。ノイマンが軽やかに滑るようにキュリオスから距離を取ると、アーサーの振るうライオネスが再びキュリオスに襲い掛かった。キュリオスが振るう剣はアーサーがライオネスを振るうよりもかなり速い。だが、平常心を無くしたキュリオスの剣は一本調子であり、アーサーはそのことごとくをライオネスで受けきった。平常心を失くし視野が狭くなったキュリオスの側面からエマのシャイターンが胴を真横から貫いた。エマがシャイターンを抜くと同時にアーサーはライオネスを振り下ろしキュリオスを一刀両断にする。そこにノイマンが水魔法で両断されたキュリオスの体を包み込んだ。

 剝き出しの内臓に直接水魔法を流し込まれたキュリオスは全身を痙攣させていたが、そこにエマとアーサーが光魔法を流し込むと、やがて痙攣は収まり水に溶け込むように消滅してしまった。

「中途半端な奴だけに最後も半分になったね」

「うん。キュリオスの開きが出来たよね」

「開きは魚だけでいいよ。キュリオスの開きとか不味そう……」

「では、この水を蒸発させよう」

 ノイマンがキュリオスを包み込んでいた水をアーサーとエマが火魔法で炙りだす。ぐんぐんと温度を上昇させた水は全てが気体になり霧散したのであった。


 一方、アラガンに不用意に攻撃してしまったケチャックは、アラガンの持つ大楯の反射効果を受けて逆に吹き飛んでしまった。アラガンの大楯は物理攻撃なら八割、魔法攻撃なら五割のダメージを跳ね返せる効果があったのだ。

「いい加減この楯の名前も決めたいな……相手の攻撃を反射するからカウンターシールドとか……安易かな?」

 ケチャックを弾き飛ばしたアラガンは向こうから小太郎に弾き返されたケチャックをまたしても楯で弾き返した。

「おっ小太郎、カーブをかけてきたのか……」

 そう言うと、アラガンは大楯をスライドさせてケチャックに擦りあてると、ケチャックが逆回転するように小太郎に返した。

「逆回転をかけて見たぜ。おっ小太郎が受けそこね……なかったか~」

 さらに、小太郎はお返しと言わんばかりにケチャックにシュート回転をかけてきた。

「ちっ、食い込むように曲がるじゃねえか。だが、これならどうだ~~~っ!」

 アラガンが打ち返したケチャックは一旦小太郎の上に上昇した後に急降下したのである。哀れなケチャックは小太郎の足元でぐちゃぐちゃの肉団子になっていた。

「アラガン~ 今のすごいね~ とれなかったよ~」

「小太郎がとれなかったのは自信になるな。今のはケチャックに強烈な縦回転をかけたのさ。ドライブっていうんだぜ」

「じゃあ、その楯はドライブシールドだね~」

「……まぁ、いいか。ではこの楯はこれからドライブシールドと呼ぶことにするよ。ほら小太郎、また復活しそうだぜ」

「うん。アラガン、楽しいからもうちょっとやろうよ~」

「うっしゃ。こいっ、小太郎!」

「いくよ~ アラガン~」

 ケチャックはアラガンに斬りかかってから一言も発することなく小太郎とアラガンの間を高速で飛び回る肉団子となり、やがて空気との摩擦熱で蒸発してしまったのであった。


 そんな全く緊張感のない戦い方をしていたアラガンと小太郎の元へキュリオスを倒したアーサー、エマ、ノイマンが駆けつけた。

「アラガン、小太郎と楽しそうに遊んでいるな?」

「えーとね、アラガンの楯の名前を小太郎がつけたんだよ~」

「へえ、なんて言う名前にしたんだ?」

「ドライブシールドっていうんだ~」

「ドライブシールド……何でその名前になったの?」

「うん。小太郎が一本取られたんだよ~」

「小太郎が一本取られた?」

「ケチャックがね、すんごい縦に回転して飛んできたの~」

「縦に回転して飛んできた……って」

「それでね、ぐいーんって上にいったから、小太郎がスパイク打とうと思ったらね、ケチャックが急降下して空振りしちゃったんだよ~」

「ケチャックが急降下……」

「なあ、アラガン……小太郎と何しているんだ?」

「うーん、ケチャックボール……?」

「……遊んでいるのかよ」

 真面目に戦っていたアーサー達は、ケチャックが消滅するまでケチャックボールを見ていたのであった。


 さて、今回もシア達は若干苦戦を強いられていた。

 悪鬼王は転移を駆使してシアとルーナに攻撃をしてくるのだ。シアとルーナはその身に古代龍マリアナ直伝の強力な結界を纏い防いでいたが、高速で動き回る悪鬼王が突然転移をして攻撃をしてくるため、上手く捉えることが出来なかったのだ。しかも悪鬼王の振るう剣は重く速いため、攻撃を受けたシアとルーナは結界ごと飛ばされてしまい、悪鬼王に近づくことすら出来なかった。


「確か父さんが悪鬼王とカール平原で戦った時は、相打ちに近い形で倒したと言っていたな……」

「おそらくカール様は自分の体に悪鬼王の剣を受けて動きを封じ込めてから、倒したのでしょう」

「この速度だとイルマ先生もクレインさんも一撃で吹き飛ばされるな」

「苦戦したのも納得できますね」

「さて、どうしようか。とにかく動きを止めないとどうしようもない」


 その様子をキュリオスとケチャックを倒したアーサー達は見ながらどうやって助太刀をするかを考えていた。

「あの攻防に俺たちが参加するのは無理だな」

「ああ、間違いなくシアとルーナの足を引っ張ることになる」

「あいつはやいね~」

「いい方法はないかな、あいつ相手にカール様は三日三晩カール平原で戦ったんだよね」

「……エマ、ナイスだ」

「さすがはノイマン、何か思いついたか」

「最初、悪鬼王は王都に現れたのは知っているか?」

「うん。有名な話だからね。それをカール様がカール平原まで追いやったんだろ?」

「いや、違うということに気が付いたんだよ」

「……違うの?」

「ノイマン基金を作るときに王宮の資料室で色々な資料を読ませてもらったんだ。その時に悪鬼王がフリージアに現れた時のことも載っていたのさ」

「それで……?」

「その時の資料にはこうあったんだよ。『カール様が悪鬼王に弾き飛ばされた後に、王都に雨が降ってきた。カール様は逃げる悪鬼王を追いかけて平原にいった』おかしいだろう?」

「……弾き飛ばした悪鬼王が逃げて、弾き飛ばされたカール様が追いかける?」

「うん。矛盾しているなと思っていたんだけど、王都に雨が降ってきたなら……もう理由はわかるだろう」

「なるほど、悪鬼王はカール様からではなく王都に降ってきた雨から逃げたんだな。それをカール様が追いかけた」

「それに、あの悪鬼王の速度を見てみろよ。転移まで使っている。あのシアとルーナが捉えきれないだろう」

「そうだね。あれ相手に三日三晩……戦えるか?」

「カール様は人間離れしていたとは聞くが……」

「ここからは推測だが、悪鬼王は王都で雨に打たれて弱ったんじゃないかな?」

「……雨に打たれると弱るのか」

「ああ、カール平原も大雨だったと記録にある。うまくいけばシアとルーナを援護できるな」

「うん。どうしようか」

 シアとルーナが悪鬼王を捉えきれず苦戦しているとき、ノイマンを中心に援護する作戦がたてられていた。



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