45,空路
カルクレイルのダンジョンを制覇し、王都に戻ったシア達は通常の学園生活を送っていた。イルマによればダンジョンを制覇し、近距離戦に対応できるようになることができたことで強化の第二段階は終わったとのことである。だが、アラガンは大忙しであった。皆の武器と防具をどうすべきなのか。概ねのアイディアはあっても難しかったのだ。
「まずは誰の何を作ろうか……」
「アラガン、あまり根を詰めるなよ」
「だが、もうすぐ休暇になるだろう。その間に出来ることって限られるからね」
「休暇の間でどれくらい出来そうなの?」
「武器二つくらいかな……」
「なら、アーサーの大剣とエマの槍にしろよ」
「いいけど……何で?」
「アーサーの使っている剣とエマの槍には魔法効果がついているだろ。それに原型があるから打ち直しだけで済む。ノイマンのナックルはオリハルコンだから時間がかかるだろうし、ルーナの武器は使い捨てになることもある」
「なるほど。でもその二つだと少し時間が余るかな」
「じゃあ、アラガンの大楯もやればいいのでは?」
「……なるほど、あの楯も魔法効果が付いているから打ち直しだけで済むね」
「それなら三つ作れるな」
「ありがとう、それでやってみるよ」
「そうなると、アーサーとエマはアラガンと一緒に次の休暇はカルグスに出向いた方がいいな」
「そうだな。来てくれた方が調整しやすいね」
「ノイマンはどうするの?」
「どこかの誰かがノイマン基金とか言うから王宮で原案つくりだよ」
「言い出したのはノイマンだろ?」
「くっ、基金の名前はシアが言い出したんだろう」
「でも、会議では全会一致で可決したらしいよ」
「俺は反対なのに……」
「シアとルーナはどうする?」
「とりあえずルーナの実家にお世話になりながら転移魔法を練習するよ」
「そうか、早くお母さんに会えるといいな」
「うん。頑張ってルーナを紹介したいし、皆も紹介したいね」
休暇が始まると予定通りアーサーとエマはアラガンに連れられて鉱山の街カルグスへと赴いた。ノイマンは王宮に一室を与えられ、連日連夜大人たちを相手に議論を交わしノイマン基金の策定にあたった。シアとルーナ、小太郎は全員が空を飛べることもあり、オースティンまで空路で行くことにした。
「何か不思議な気分ね」
「どうして?」
「だって、ついこの間までは馬車だったでしょ。それが今は空を飛んでいる……」
「それだけルーナが成長したということじゃない?」
「でも、エアパスがくれた能力だからね……」
「エアパスがそうしたいと思うようにしたのはルーナだよ~」
「そうだな。小太郎。飛龍から能力をもらえるとか凄いよな」
「コスモスは元気かな~」
「空は早いね。もう見えてきたよ」
オースティン家に到着すると、一家全員が出迎えてくれた。生まれたばかりの子供であったコスモスはリリーと変わらないくらいの大きさになり、宙に浮かぶことが出来るようになっていた
「コスモス大きくなったね」
「古代龍の子よ、ベリンダのおかげだよ」
「子育ては私の方が先輩だからね」
「セイン兄さん、この間ダンジョンに行った時に魔力を浸透させて病気を見つける方法を覚えたのです」
「……魔力を浸透させて?」
「はい。少々難しいですが、方法を教えますのでやってみてください」
「まぁ、積もる話もあるだろうが食事にしよう」
ヨハネス子爵の掛け声で全員が屋敷の中に入ると互いに近況報告をしあって、シア達の楽しい休暇が始まった。
「ところで、古代龍の子はマリアナ様に会えたのか?」
「まだだね。どうしても転移魔法だと海の中に落ちるんだよ」
「それなら、明日にでも我の背中に乗れ。ルーナと一緒に乗るといい」
「エアパスの背中に乗るの?」
「ああ、例え古代龍の子が転移魔法で行けたとしても、ルーナも一緒に転移させることは難しいであろう。それなら我が向こうの大陸にシアとルーナを乗せて飛んでいけばよい」
「……エアパス、いいのか?」
「構わんよ。我ら飛龍と、いくら飛べるとはいえシアとルーナとは速さが違う。それに我もマリアナ様に挨拶をさせて頂きたい」
「小太郎も行くのだ~ マリアナに会えるね~」
「ああ、乗ってくれ一緒に行こう。ベリンダ、済まないがコスモスを頼むよ」
「わかったわ。ねえヨハネス、ルーナが一緒に行くのなら何か挨拶代わりに持たせましょう」
「そうだな。でも古代龍が喜ぶものか……」
「ふふふ。気持ちしかないけど、何か考えてみましょうよ」
「ああ、そうと決まれば買い物にでもいこうかベリンダ」
「素直にデートしようって誘えばいいのに。行きましょうか」
こうして次の日、シアとルーナはエアパスの背中に乗せてもらいマリアナのいる大陸に向けて飛び立ったのである。
シア達は空を飛ぶことができるが、空路でマリアナのもとに向かうことは考えなかった。マリアナに言われた通り、シアは素直に転移魔法で行こうと考えていたからである。
エアパスの背中は快適であった。やはり飛龍というだけのことはあって矢のように飛んでいるのに全く背中が揺れなかった。しばらくすると、ある地点に差し掛かった。
「いつもこのあたりに放り出されるんだよ」
「このあたりに?」
「うん。あそこに小さな島があるだろう。あの島がいつも見えて、失敗するとまたか……って思うんだ」
「古代龍の子よ。転移魔法が失敗する原因は多分あの島だぞ」
「あの島?」
「うむ。あそこには黒龍が住んでいるはずだ。黒龍は闇を支配する。転移魔法も闇魔法の一種であるからな。何かを感じて遠ざけようとしているのかもしれん」
「そんなことできるの?」
「転移除けの結界でも張っているのかもしれんな。話を通しておけば今後は転移で移動できるようになるかもしれん」
「シア、黒龍はステーキ~?」
「……いや、母さんは野菜と一緒に煮込んでいたよな」
「肉じゃが~」
「あとは、ポトフにシチューだね」
「黒龍のシチューだ~ ルーナ美味しいんだよ~」
「ふふふ。小太郎。お母様のお料理楽しみですね。一緒に作りたいです」
「……ルーナが母さんと一緒に料理するの?」
「ええ、シア君の好きなものを聞いて好みのお料理を作れるようになりたいです」
「小太郎のも作ってね~」
「勿論ですよ。全員家族ですからね」
その時、息が詰まるような強烈な圧力が襲い掛かる。ルーナは呼吸が出来ず、エアパスは震え上がり動きを止めてしまったのであった。




