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43,制覇

 地龍ちゃんを倒したシア達の目の前には大量の宝箱があった。

「何でこんなに大量に宝箱があるのかな?」

「わからん、知らん、理解できん」

「軽く300くらいはありそうね……」

「開けるしかないよね……」

「小太郎様……、頼むよ」


 小太郎が片っ端から宝箱を開け続けた。途中で数体のミミックが出たが小太郎が瞬殺した。

「うーん、この場で整理するのはつらいかな」

「インゴットもあるね。巻物もある」

「剣や槍、ナックルに防具、何に使うのかわからないものもあるね」

「一旦全部持って帰って、武器屋で売りながら整理しようか」

「それがいいかも……」

 シア達はこの場で宝物を整理することを諦めて、とりあえず全部持ち帰ることにした。シアが亜空間収納に宝物を全て収めると、疲れたのか全員が早く階段を下りて休憩しようと言い出した。だが階段が見えない。

「あの地龍ちゃん、階段を壊したとか……」

「うーん、それは無いと思うけどね」

「罠にかかる前は71階層だったよな」

「そこからどれだけ落ちたかだけどな」

「でもさぁ、帰還の水晶はあるよ」

「ということは、ここは80階層だろうな」

「それに地龍ちゃんを倒してからこの場所一気に狭くなったね」

「……不思議だけど、先に進めないなら帰るしかないか」

「……残念だけどしょうがないよね」

「でも、銅像は作られなくて済むよ」

「さすがノイマン、そうだな。100階層まで行かずに帰ったら銅像はないよな」

「では、ここで帰るとしますか~」

「おう、皆お疲れ様~」

 シア達が80階層だと思い込み、全員が帰還の水晶に手を触れ帰ると万雷の拍手で出迎えられた。楽隊が壮麗に演奏を行い、冒険者たちが紙吹雪を舞わせる。シア達は全員が呆気に取られて固まってしまった。

「さすがはカール様の息子様、思った通りですな」

「ああ、こんな短期間で100階層まで攻略してくるとはな」

「カール様達はもっと時間がかかったはずだ」

「最短記録だな。それも抜くのは困難だ」

 人々が口々に囃し立てる。


「えーと、確か80階層から帰って来たはずだけど……」

「いや、この帰還の部屋の数字を見てくだされ」

「……」

「……10だね」

「10だな」

「じゃあ、71階層から一気に100階層まで落とされたのか?」

「下に行く階段が無かったのは100階層だったから?」

「前回カール様達も71階層から一気に100階層まで行かれております。さすがはシア様。カール様達と全く同じ道のりをたどられるとは……泣けてきますな」

 そう言うと、ギルドの奥にいたあのお爺さんが泣き出してしまった。泣きながらお爺さんが言う。

「間違いなく攻略されると思いましてな、もう銅像製作に取り掛かっておるのですよ」

「……マジか」

「ええ、あちらの工房で製作中ですな。せっかくですから見ていかれると良いでしょう」


 お爺さんがそう言った瞬間、全員が身体強化をして一気に工房へと駆け込んだ。地龍ちゃんから逃げる時よりも早かったであろう。誰もがあの破廉恥な銅像を想像し、場合によっては強硬手段にでなければならないと覚悟していたのだが、

「あれ、これならいいかもね」

「うん。自然な感じだね」

「真ん中にシア、その右にルーナ、エマ、左にアーサー、ノイマン」

「その前に膝をついているのがアラガンで、隣で小太郎がお座りをしている……」


 そこにあった銅像は、自然に仲間たちが仲良く写る記念写真のようであった。

 シア達が銅像を眺めていると、製作者であろう男性が話しかけてきた。

「おめでとう。話は聞きましたよ。カルクレイルのダンジョンを制覇されたそうですね」

「ありがとうございます。この銅像は?」

「私が作ったものですね。私はこのカルクレイルの冒険者ギルドのギルド長をしていますケラーです。皆さんに許可証を渡したのは私の祖父になるのですよ」

「そうなのですね。どんな銅像になるのかと思って……」

「ははは。あのカール様達の銅像は酷いでしょ?」

「……そうですね。ちょっとあれは辛いです」

「あの銅像は祖父が作ったのですが、クレイン様とイルマ様から何度も作り直してくれといわれています。ただ、もう街のシンボルになっているので今さら作り直しもできないのですよ」

「……そうなのですね。……可哀想に」

「皆さんの銅像は少年少女たちが仲良く助けあう場面を想像して作りました。学園の制服を着られていた聞いていましたし、年齢を重ねてからこのカルクレイルに皆さんが来られた時に銅像を見て、青春時代を思い起こしていただけたらと思います。このまま進めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ケラーさん。ありがとうございます。よろしくお願いします」

 全員がケラーに同意をし、その後より本人たちに似せるため似顔絵を書いてもらった。


 その時、シアが亜空間収納にしまっていた38人分のタグをケラーに渡した。

「……これを持って帰って来たということは、この人数が亡くなりましたか」

「はい。50階層にいたのはポイズンドラゴンでした。毒でやられたと思います」

「50階層はアースドラゴンのはずですが……」

「いえ、ポイズンドラゴンでしたね」

「……ダンジョンの魔物達は十年程度で入れ替わりがあるのです。注意はするようにギルドで呼びかけてはいたのですが……、ありがとうございます。彼らの家族には私から連絡をするようにいたします」

「はい。それと彼らのタグを拾った場所にあった武器などは使ったのですが……」

「それは構いません。ダンジョンの中で亡くなった者が所有していた物は回収した人の所有になります。そうしておかないとその武器などが使えないことになりますし、そのせいで危険にさらされては意味がありません。彼らも十分にそのことは理解しているはずです」

「……そうなのですね」

「あと、ダンジョン制覇の報奨金が皆さんに出ます。パーティー単位で申し訳ないのですが、10億エニです。明日にでもギルドで受け取ってください」

「わかりました。明日にでもギルドにお伺いいたします」


 その日は全員が宿に帰ってから泥のように眠った。

 振り返ってみれば、簡単に制覇出来てしまったカルクレイルのダンジョンであった。

 だが、そこで命を落とした者、危険だとわかりつつ挑み続けている者、そういった人々のことを思うと、自分たちが制覇したからといって、調子に乗って驕ってはいけないのだと全員が考えていたのであった。



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