40,連携
51階層からのシア達は慎重になった。
まずは全員が防毒の外套を着こんだ。シアは毒には耐性があるが念のために小太郎以外の全員が外套を着ることにした。次に武器を見直した。錆びたナイフを使っていたルーナは小型のクナイをジャケットに大量に挿していた。クナイは先端が四角錘の形状で鋭利に尖っており、その後ろに持ち手がついていて投げて敵を攻撃することもできれば、短剣のように敵を斬り裂くこともできる。しかもかさばらないために、装備する専用のジャケットに挿してしまえば数十本持ち歩けるし、ジャケットに挿してあるクナイが攻撃を防ぐ効果もある。
アーサーは大剣を持っていた。アラガンに言わせるとミスリルと他の金属を混ぜ合わせることで強度を上げており、魔力を通しやすいため攻撃力が上がりやすいとのことだった。またアーサーの左腕には小さな盾のついた篭手も装備されていた。左腕で防御、右腕で攻撃する形である。
エマはシア達に話しかけてきた冒険者が残したミスリルとオリハルコンの合金でできた大槍を自分が扱いやすい長さにシアに切断してもらって使用することにした。また、外套の下にミスリル製の鎖帷子を着用していた。
アラガンは鋼鉄製のハンマーをもち、体を鋼鉄製のプレートアーマーで覆い、大楯を持っていた。ノイマンは鋼鉄製のナックル、鋼鉄製のすね当て、ミスリル製の胸当てを装備していた。
それらは全て50階層で亡くなった冒険者たちが残した遺品ともいうべきお宝であり、今までのシア達であれば使用せずに持ち帰ろうとしたであろう。だが、彼らはそれを自分たちで使用して生き残ることを最優先に考えたのであった。それは彼らが昨晩考えて出した結論であり、自分たちがなすべきことは何なのかを突き詰めて考えた結果でもあった。
さらに、彼らの中で最も危機察知能力の高い小太郎を斥候として前に配し、最も力が強いアラガンに大楯で攻撃を受け止めさせ、状況把握力が高いノイマンをその後ろに、さらに射程の長い槍を持つエマと大剣を持つアーサーとを中衛に並べるように配置し、後衛にルーナを、遊軍にシアを配置して慎重に進むことにした。
「やれるだけはやったけど、本当にこの配置でいいのかはわからないな」
「うん。まずは試行錯誤しながらだね」
「今までは一人が先頭で突っ走っていただけだしね」
「今手元にある装備を利用して、とりあえず得意そうなものを身につけただけだしな」
「ああ、でも何もないよりは遥かにいいだろう」
「そうそう。小太郎。全部倒すなよ。全員が連携して戦えるように訓練していくから」
「りょうかい~、問題がなければそっちに送り込むね~」
「頼むよ、小太郎」
「おまかせ~、きたよ~」
「ふん。リザードマン5体だな」
「小太郎、全部流してくれ」
「わかった~」
シア達の目の前にリザードマン5体が迫ってきた。先ずは先頭のリザードマンの攻撃をアラガンが大楯で防ぐ。ノイマンが左を指さすと、エマが大楯の横から槍を突き出し一体のリザードマンを屠った。
次にノイマンが回し蹴りで一体のリザードマンを攻撃して右にずらす。そこにアーサーの大剣がうなりを上げて襲い掛かり二体目も倒した。その時には三体目のリザードマンをアラガンが抑えていて、四体目のリザードマンの目をルーナのクナイが射抜いていた。
アラガンは楯をねじり三体目のリザードマンを左へずらす。そこを先ほどと同じようにエマが槍で射抜き、目にクナイが刺さったリザードマンをアーサーが攻撃しようと身構える。だが、ノイマンはアーサーに五体目のリザードマンを指示した。そのリザードマンは目にクナイが刺さったリザードマンを乗り越えてこようとしていたのだ。
アーサーがノイマンの指示通りに五体目のリザードマンを叩き斬ると、ノイマンがのたうち回るリザードマンの死角から首筋に強烈な蹴りを放ち絶命させた。
「まずまずかな?」
「楯役をしてみて思ったのが、楯で敵の攻撃を受けると前が見えないんだよね」
「なるほど、アラガンの目になる者が必要だな」
「そういう意味ではノイマンがアラガンの後ろにいるのは安心感があるな」
「ただ、ノイマンは軽装なんだよね」
「うん。指示は後方からした方がいいよね」
「だが、ノイマンはその位置が動きやすそうだな」
「そうだね。徒手空拳だと射程が短いからね。後衛だと戦闘に参加しにくいかな」
「俺とエマは位置を変えた方がいいかもな」
「それは私も思った。どうしても体の右側から槍を絞り出す動きになりがちだからね」
「俺は左手に楯があるから、そちらで弾けば問題がないが、左にエマがいると左手の楯が死んでしまうよな」
「じゃあ、位置を変えようよ」
「ルーナとシアはその場所で頼むよ」
「いざという時は頼むな」
その後も彼らは試行錯誤しながら順調に敵を倒し続けた。これまで魔法一辺倒だった彼らは、このダンジョンで自分たちを成長させようと自然に魔法を封印して肉弾戦のみで戦い抜いたのである。
そんな彼らをシアは頼もしく思っていた。正直なところ彼らが本気で魔法を放てば今までの敵は一瞬で消え去ったであろう。だが、自分たちの課題を見つけ、一度闘うたびに反省点を洗い出し、決して奢らず着実にその連携を高めながら彼らは歩き続けた。勿論常に魔力をダンジョン内に放ち続け、罠を回避し、最短距離を常に全員が考えながら進んでいたのである。その後ろ姿は既に新米冒険者のそれではなく、熟練の高ランク冒険者の姿になりつつあった。
そうこうするうちに、60階層のボス部屋に到着した。
シア達は全員が顔を見合わせて気合を入れると、ボス部屋に踏み込んだ。
「小さなゴーレムと、ポイズンドラゴンが二体だよ~」
ゴーレムは石や泥、金属でできた人型の魔物であり、人形のように意思を持たず、ただ目の前の敵を殲滅しようとする。意思がなく思考力に欠けることから状況判断能力が乏しく、また重量があるため動きが遅いという特徴があった。ただ、一般的に頑丈であり、オリハルコンなどでできたゴーレムは倒すのが非常に困難である。今目の前にいるのは石でできた身長2メートル足らずの小型のゴーレムであった。
小太郎の声を聞いてノイマンが素早く戦略を立てた。
「ゴーレムは動きが遅い。それに耐久力があるから後から全員で行こう。シアとルーナは右のポイズンドラゴンを頼む。他は左に向かえ」
シアがルーナを背に庇いながらポイズンドラゴンを神威の一閃で屠った。左のポイズンドラゴンが毒液を吐く。それをアラガンが楯で受けると、ノイマンが全員に息を止めるように指示する。それを聞いたエマが息を止めてポイズンドラゴンの喉を槍で突き刺した。エマが槍を抜いた瞬間にノイマンはアラガンにゴーレムを指差し、ルーナに牽制するように要求する。ルーナがゴーレムにクナイを投げて牽制すると、アーサーが大剣でポイズンドラゴンの頭を叩き斬った。
ルーナの牽制で動きが鈍ったゴーレムにアラガンが楯を持ったまま突進をする。ぐらついたゴーレムの顔面にノイマンの突きが入る。ゴーレムの顔面がのけぞり首筋が大きく開いた瞬間エマの槍がゴーレムを襲う。だが、エマの槍はさらにゴーレムを後退させたものの致命傷にはならなかった。そこにアーサーが大剣を振りぬいた。ゴーレムの首が半分程度千切れかかる。そこにノイマンの後ろ回し蹴りが襲い掛かるとゴーレムの首が飛んだ。
「ゴーレムは首を飛ばすか、胸の魔石を抜けば終わりのはずだ……」
ノイマンが言うように、ゴーレムは塵となって消え去ったのであった。
全員がハイタッチをして喜ぶ中、宝箱が出てきたのであった。




