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35,冒険者ギルド

 だが、そもそも彼らは冒険者という者が何をしている者達なのかをしっかりと把握はしていなかった。そこでシアの専属職員であるクレアが講義をしてくれた。


クレアはまず冒険者ギルドの組織について説明をはじめた。

「冒険者ギルドは世界中に存在する組織で、国などには所属しない独立した組織です。国と協力することも多いですが、対立することもあります。冒険者としての仕事が多い街には冒険者ギルドの出張所が存在し、マスターと言われるギルド長が任命されます。冒険者ギルドは国に縛られることはありませんが、便宜上各国には冒険者ギルドの本部が設けられており、各マスターを取りまとめる総長が国ごとに任命されています」

「すると、クレインさんはフライブルク王国の総長になるのですね?」

「そうです。フライブルク王国の各街にある冒険者ギルドを取りまとめる役割ですね」

「では、クレインさんがグランドマスターだというのはどういうことですか?」

「はい。各国にいる総長を取りまとめる立場になります」

「すると、クレインさんは……」

「はい。世界中にある冒険者ギルドの頂点に位置しますね」

「……ただのでかいお爺さんではなかったのだな」

「おい、ノイマン……」

「……悪い、つい」


「ふふ。では続けますね。世界中にある冒険者ギルドの総本部がこのフライブルク王国にあります。少しだけ質問しますが、このそれほど大きくないフライブルク王国に冒険者ギルドの総本部が置かれたのはなぜだかわかりますか?」

「そう言えばそうだな。世界最大の国家はロシアン帝国だしな」

「ああ、この間攻め込んできたバーバリアン王国もこの大陸では最強を名乗っているぞ」

「それにローマン聖教国も力があるな……」

「それに南北の大陸には魔法に長けたエルフの国もあるし、獣人の国もあるよね」

「未開の大陸もあると聞いたことあるな……」

 クレアは彼らが口々にそういうのを聞きながら答えを口にした。

「このフライブルク王国に冒険者ギルドの総本部が置かれたのはカール・ガイウス・ペルサスが所属していたからです」

「……カール様が?」

「はい。以前は、冒険者ギルドはただの荒くれ者の集まりで、魔物を狩ってきた荒くれ者が素材を売るだけの機関でした。当然ですが素材を売るだけなら冒険者ギルドではなくても商業ギルドでも構いませんよね」

「確かに、高く買い取ってくれたらそれでいいからな……」

「カール様は世界中をクレイン様、イルマ様と回っておられました。お三方は卓越した力をお持ちでしたから各国の荒くれ者も逆らえませんし、あのロシアン帝国の皇帝ですらお三方を下には置きませんでした」

「ほおお、やはりただのでかいお爺さんではなかったのか……」

「おい、アラガン」

「……でもよぉ」

「ふふふ。いえ大丈夫ですよ。そのお三方の中で最も人々の尊敬を集めていたのがカール様だったのです。クレイン様はあの調子ですし、イルマ様は教育に情熱をお持ちでした」


「カール様は荒くれ者が自然にまとまる方法をお考えになられました」

「自然にまとまる方法?」

「はい。冒険者ギルドに所属する冒険者が商業ギルドに素材を売ることを禁止したのです。代わりに冒険者ギルドは商業ギルドよりも割高で素材を買い取るようにしました。割高で買い取った素材を割安で商業ギルドに卸売したのです」

「……それだと、冒険者ギルドは儲からないのでは?」

「はい。儲かりません。ですからその損失の穴埋めはカール様の私財で行われました」

「私財で……」

「凄まじい金額だったと思いますが、カール様は破竹の勢いで魔物を討伐し功績を挙げ続けてその損失を補填されました。やがてカール様を慕う方たちが協力して資金を出し、商業ギルドも協力するようになり、国も寄付をするようになると、冒険者ギルドは潤滑に資金運用が出来るようになりました」

「カール様ってすげえな」


「冒険者ギルド以外で素材が売れなくなると、自然に荒くれ者達はギルドの指示に従うようになります。逆らおうにもカール様がおられるのですから逆らうことはできませんし、冒険者ギルドを除名処分となると、協力関係にある商業ギルドでも素材の買取りをしてくれませんから収入がなくなります」

「荒くれ者は他に仕事も出来ないだろうからね。除名処分になったら困るよな」

「やがてカール様は荒くれ者達の武力に応じてランク判定をして、そのランク判定に見合った危険度の仕事をさせることで荒くれ者達の安全を確保するようにしました。そのおかげで荒くれ者達の死亡率が激減し、冒険者という職業は格段に安全な職業になりました」

「……じゃあランク判定制度を作ったのはカール様なんだ」


「さらにカール様は冒険者の仕事を、魔物を狩りその素材を換金するということだけではなく、貧民救済にも役立てました。スラムの子供たちや仕事のない人々を冒険者登録させて、どぶさらいや、貴族の家の草刈り、迷子の犬探し、各種の薬に使用する薬草採取、鉱山からの資材運搬など、一般的に雑用とされる仕事を冒険者ギルドから斡旋したのです」

「誰でも出来る仕事を探してスラムの人々にさせたのか……」

「そうすると、何か人手が欲しい時は冒険者ギルドに行って依頼を出せば誰かが来てくれますから、冒険者とはいわゆる何でも屋になりますね。戦闘が得意な荒くれ者がいれば、どぶさらいや、迷子の犬探しをする子供もいる。随分と冒険者ギルドの印象が変わりました」

「確か冒険者ギルドに所属することが出来るのは5歳以上だったな」

「はい。5歳児もいれば、500歳をこえるエルフもいます。カール様は冒険者ギルドが平和的な組織になるように少しずつ規則を作り、冒険者たちに規則を遵守させ、人々に安心感を与え信頼を勝ち取り、問題がある者を除名処分にし、各国の総長に自らが信頼する者を置いて協力させることで、冒険者ギルドはどの国にもおもねることなく活動をすることが出来るようになりました。あのロシアン帝国でも冒険者ギルドを敵に回せば市民の活動が停滞し、経済が回らなくなるでしょう」


「冒険者ギルドって巨大な組織なのですね。国よりも強いとか……」


「はい。領土に縛られませんから、気に入らない国は出ていけば済みます。実際にバーバリアン王国には冒険者ギルドはありません。全て人だけが集まり運営している組織です。ですから人が全てですね」

「人が全て……」

「世界中の冒険者ギルドに所属する冒険者を束ねていたのが、カール・ガイウス・ペルサスです。そのカール様が所属していたのがこのフライブルク王国にある冒険者ギルドでした」

「それでこのフライブルク王国に総本部があるんだ……」

「はい。ですが30年前にカール様がおられなくなりました。その時、それまでカール様と共に行動されていたクレイン様がグランドマスターに就任されたのです」

「ではクレインさんは30年グランドマスターをしているんだね」

「はい。クレイン様が引き継がれてからも色々と試行錯誤をしながら運営されて来られましたが、冒険者ギルドの基礎を築いたのは、カール・ガイウス・ペルサスという一人の英雄です」


 クレアの話はシアが初めて登録した時に聞かされたことも多かったが、初めて知ることもあり、非常に興味深く聞くことができたのであった。その後は全員が、冒険者の権利と義務、素材の取り方、換金の方法、依頼の受け方、報告の仕方、ランク制度などの講義を受けて終了となり、シアはSS級冒険者に、アーサー・ノイマン、アラガン・エマ・ルーナの五人はS級冒険者になったのである。



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