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33,対抗戦

 対抗戦のルールはグースが提案をした。Aクラスの生徒が戦いたいSクラスの生徒を指名して闘うというもので、いわゆる指名戦である。しかも用いるのはAクラスが真剣、Sクラスが木刀であった。これは不平不満をいう連中を納得させるためにイルマがSクラスの実力を王宮で口にしたため、それほど差があるのならハンデをつけろとグースが言い出し、シア達も問題が無いと考えて受け入れたためである。さらに、魔法の使用は禁止となった。これは王宮の筆頭魔導士であるムートンが、死者が出るような学生たちの試合は認められないと強く主張したからであった。さらにハンデは続く。Sクラスが6人であるのに対して、Aクラスは20人いたのだ。Sクラスは連戦を強いられることになる。だがこれもシア達は受け入れたのであった。


 SクラスとAクラスの対抗戦は王宮の修練場で行われることになった。その修練場は武道大会などが開かれるときに使用されるもので、試合会場の周囲を円形の観客席が囲み、試合場の周囲を結界が覆っていて観客席に被害が及ばないようになっていた。さらに、王宮の回復魔法士達が万全の準備で待機が出来るために安全であるとも判断されたのである。試合場には王都に居るフライブルク王国の貴族全員が集まっていた。万が一ここでSクラスが負ければ、イルマだけではなく、Sクラスの強化合宿を命じたアレクサンドロス王の権威も失墜する。アレクサンドロス王を快く思わない貴族達がグースの企みに乗ったという側面もあったのだ。


 だが、試合当日のシア達は落ち着いていた。厳しい修行を経て自信をつけ、戦争をも経験した彼らにとっては対抗戦など子供のお遊び程度であった。出場者全員が試合場に集まると、アレクサンドロス王が開始を告げた。審判は騎士団長である。


 最初に指名を受けたのはシアであった。貴族ではなく実力も知られていなかったからである。

「Aクラスのジョンだ。この試合に勝ってSクラスに上がらせてもらうよ。負けを認めるなら早くするんだな。」

「面倒くさいから早くかかってこいよ」

「……俺が持っているのは真剣だぞ」

「どうせ当たらないって」

 真っ赤になったジョンがシアに斬りかかった。だが、シアはその場から一歩も動かずにジョンを場外に叩き出したのであった。慌てて審判がジョンの元に行くと、ジョンの剣は粉々に砕け、その腕はあらぬ方向に曲がり気を失っていた。

「勝者、シア」

 シアが当たり前のように仲間たちの元に戻った。


 次に指名されたのはアーサーであった。全身を鉄の鎧で覆って現れた挑戦者は、

「王子、参ります」

 とだけ告げた。

「受けよう」

 短い挨拶の後に響き渡ったのは挑戦者の悲鳴であった。無残に叩き割られた鉄の鎧が衝撃の大きさを示していた。その後、ノイマンも、アラガンも相手を瞬殺し、観客席はあまりにも違いすぎる実力差に静まり返った。


 次にエマが指名された。挑戦者がエマに斬りかかる。エマはそれを軽く躱すと、足払いをして挑戦者を床に転がし、無慈悲にも顎を踏み抜いた。顎が砕かれた挑戦者は床をのたうち回った。その姿を冷めた目で見てエマは仲間たちの元に戻った。


 その次はルーナであった。ルーナの美貌に目がくらんだ男の挑戦者は、

「俺が勝ったら付き合ってもらうぜ」

 と下卑た視線をルーナに向け斬りかかった。だが、

「……ルーナが一番怖いな」

「……まさかな」

「……あれはヤバい」

「……再起不能だな」

「……私にはわからないけど寸劇の台本には書けそうね」

 ルーナが放った蹴りは股間を打ち抜き挑戦者を数メートル上空まで打ち上げたのであった。勿論会場の男性諸君が震え上がったのは言うまでもない。


 あまりにも圧倒的な実力差にグースは不正だと言い始めた。残りの十五人で一人を相手にすれば不正が分かるとまで言い始めた。シアたちはイルマに軽く頷いて見せた。すると、グースは残り全員を引き連れて試合場に上がりシアを指名すると、

「木刀で真剣を砕いたり、鉄の鎧を断ち切ったりするのはおかしい。その木刀には細工がしてある。そこまで実力差があるなら素手でやれ」

 と言い放った。流石に審判が止めようとしたが、シアは木刀を投げ捨てて余裕の表情で舞台に立った。さらに、グースは服にも細工しているかもしれないと言い出したため、シアは上半身裸になった。それでもなおズボンにも細工してあるかも知れないとまで言われたシアは、友人たちが止めるのも聞かずに全裸となった。

 

 シアの顔は非常に美しい。シアの身体も素晴らしく美しかった。観客席の男性はシアの堂々とした姿に魅入られ、女性はシアに魂が吸い取られるほど見惚れてしまった。だが、一見すると羞恥心を感じることなく堂々としているように見えたが、流石にシアは少々本気でブチ切れていたのだ。それを感じていた仲間たちは、死人は出ないだろうが回復魔法程度では治せない怪我をするだろうと挑戦者たちに同情すら感じていたのだった。


(グースだったな。あいつだけは許さん)


 そんなシアを馬鹿にするようにグースは、

「ちょっといいものを持っているからって調子に乗りやがって。お前らアレが全てじゃない。叩き潰してやれ」

 と全員をけしかけた。

 全裸のシアに斬りかかる十五本の真剣。だが、それはシアを捉えることなく砕け散った。次の瞬間、試合場に爆発音が響き渡ると、グース以外の挑戦者は、全員が血を吐きながら場外に吹き飛ばされていた。シアはグースの目を見つめた。

 シアの瞳の奥から現れる古代龍の眼差し。怒り狂った古代龍の眼光に人間の精神が耐えられる訳がない。あっさりとグースの精神は崩壊し廃人となってしまった。立ちすくんだグースの剣を握るとシアは素手で握り潰した。既に大小便を垂れ流し目鼻口から流せるものを流し切ったグースの腕を掴むとシアはその腕を無慈悲にも握り潰してちぎってしまった。反対側の腕も握ると同じようにちぎってしまう。両足をちぎるとシアは再度グースの目を覗き込み無理矢理に意識を覚醒させた。

 全身を駆け巡る強烈な痛み、魂の奥底に刻まれた古代龍の怒り、廃人のままでいられた方がグースにとっては幸運であっただろう。ちぎられた手足は普通の回復魔法では治せない。哀れグースは一生手足がないままで狂うことすら許されず、生き続けることになった。


 さらに、激怒していたシアは試合場にいた全ての人間に対して凄まじい殺気を飛ばした。試合場にいたほぼ全ての者が腰を抜かしまともに立てない。かなりの数の貴族達が気絶をしていた。そこにルーナが声をかけた。

「審判さん。シアの勝ちでいいのですよね?」

 審判も腰を抜かしながら震える声でシアの勝ちを認めた。

 すると、ルーナは荒れ狂う古代龍の怒りをものともせずに、シアに大きな外套を纏わせた。

「シア君、この辺にしておきましょう」

 ルーナの声でシアの体から殺気が消えた。


 この日から、シア・ペルサスはフライブルク王国で神聖不可侵とされる存在となり、シア・ペルサスを鎮めることが出来るルーナ・オースティンはフライブルク王国の聖女と呼ばれることとなった。



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