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22,魔力量

 全員が魔力を視認することができるようになると、興奮状態になっていた。

「初日から凄い経験ができたな」

「ああ、この後が楽しみだ」

「絶対に強くなってやる」

 それぞれが決意を新たにしたところで、

「この魔力を循環させる練習は毎日してくださいね。合宿中は全員で朝食後と、夕食後に魔力循環をしましょう。この練習で全身を魔力がスムーズに動くようになります。魔法の威力も上がりますし、発動速度も段違いになります。そうですね……イメージするなら魔力が通る血管のような管があって、それが徐々に太くなると思ってください。では、そろそろお昼ご飯にしましょうか」

 イルマの言葉を受けて、全員が立ち上がり食堂へ向かった。食堂には食べ盛りの生徒たちのために大量の食事が用意されていたのである。


 食事をほおばりながらノイマンがシアに聞いた。

「シアもあんな練習をして見えるようになったのか?」

「うーん、赤子の時に鳳凰の乳で育ったらしいんだけど、最初にそれを飲んだ時に母さんが喜んでうっかり魔力を手に込めたらしいんだ。俺がそれを見て笑ったらしくて、面白がった母さんが魔力の玉とか魔力の飾りとかを作ってくれたらしくて……、うーん、気がついたら見えてたかな」

「鳳凰の乳……?」

「それって、赤子?」

「うん。拾われてすぐだね」

「……生まれてすぐ?」

「魔力循環は普通にしているかな」

「そうなんだ。シアもしているんだ」

「うん。普通に目が覚めると一気に全身に魔力が駆け巡るんだよね」

「意識しないの?」

「うん。それも生まれてすぐに母さんが面白がってさせてたみたい」

「……じゃあ、魔力量を増やす練習は?」

「それも母さんだね。母さんは俺を抱っこしながら俺の魔力を全部吸い上げると間髪入れずに魔力を流していたらしい。それを一日中していたらしいよ」

「魔力を全部吸い上げてから流すんだ」

「龍は子供が生まれたらそうやるんだって。そのうち子供が親の魔力以上になると、お互いに魔力回路をつないで循環させるって言っていたね」


 それを聞いたイルマがシアに聞いた。

「その魔力の循環は初耳ですね。どうするのかな?」

「お互いに両手を繋いで魔力を流しあう感じですね。上手くいくとお互いの魔力が向上します。実際に母さんも自分がかなり強くなったと喜んでいました。ただ、魔力の相性が悪かったり、互いの力が違いすぎると上手くいかないらしくて、こちらに来る前には母さんとは出来なくなっていました」

「……それはシア君が古代龍のお母さんを越えているということだよね?」

「はい。母さんが言うにはおそらく俺は母さんの十倍は魔力があるそうです」

「……古代龍の十倍?」

「古代龍って世界最高の存在だよね」

「うん。この世界が出来たときはルナテラス様と母さんしかいなかったって言ってたよ」

「さすが私のシア君、素敵ですね」

「ありがとう俺のルーナ」

「……寸劇のネタにしよっと」


 食事が終わると、座学研修室に戻った。椅子と机を片付けてから床一面に柔らかいマットを敷くと、そのマットの上に生徒たちを座らせ、イルマは布に包まれた水晶を持たせた。

「その水晶は魔力を吸い取る水晶です。流し込まれた魔力は亜空間に放出されます。つまり無限に魔力を吸い続けます。布を取ると……あんな風になります」

 イルマの指差したところにアーサーが倒れていた。イルマはアーサーに近づくと背に手を当てて魔力を流す。するとアーサーはばつが悪そうにしながら起き上がった。

「……ごめん。ちょっと布の間から触ったらこうなっちゃった」

「まあ、説明が省けましたね。あんな風に魔力を全部吸い取られて倒れます。倒れたら私とシア君、それに小太郎が魔力を流しますので、皆さんは夕食まで繰り返しこの作業を行ってもらいます」

 それからは……ひたすらに気絶しては起き上がり、また気絶しては起き上がる。何十回となく繰り返すその修行を、皆はかなり辛そうにしていた。ただ、ルーナだけは起き上がると、

「シア君でいっぱい……」

 と、若干嬉しそうであった、というのは余談である。


 夕食後、全員が魔力循環をはじめる。するとエマが

「凄い、昼前よりも凄く魔力が増えている」

 と喜びだした。他の面々も効果を確認すると、その後は真剣な表情で魔力循環をひたすらに行ったのであった。


 それから約一か月間、シアと小太郎以外はイルマも含めて朝から夕方まで魔力を増やす修行を続けた。イルマはハイエルフのために自分よりも魔力が大きい存在がおらず、この修行が今まで出来なかったらしい。そこでシアはイルマにも修行を勧めて、朝から夕方まで全員に魔力譲渡をしていたのである。

 生徒たちは校長のイルマも一緒になって修行をしているのを見て、またシアと小太郎が朝から夕方まで自分たちに魔力を譲渡し続けても平気なのを見て、自分の未熟さを悟り修行を続けたのであった。

 そうこうするうちに、全員の魔力量がエルフ並みになったことを確認したイルマは、実際に魔法を発動させてみることにした。

 すると、

「何の詠唱もしなかったけど、凄い火の玉が飛んだぞ」

「土の柱が一気に飛び出てきたぞ」

「危うく洪水をおこしそうになった……」

「光で目がくらんで……何も見えない……」

 全員が魔法を詠唱なしで発動できるようになっていたのである。

「属性にこだわらずに現象をしっかりとイメージしなさい」

 イルマはそういいながら、全員に様々な現象を魔法で引き起こさせ修行の成果を体感させると、またしても魔力量を増加させる修行を続けさせた。

 それから次の休暇までひたすらに魔力量を上げさせた。全員の魔力量は既にハイエルフ並みになり、ハイエルフのイルマは小型の龍並みの魔力量になっていた。


「時間が来たから一旦帰りましょう。皆さんよく頑張りました。後はまた休暇の後修行しましょうね。それから宿題ですが、皆さんが発現させたい魔法をしっかりとイメージできるようにしてください。では、最後の夜です。パーッと飲み食いしましょう」

「そうですね。シアありがとうな」

「シアがいなかったらここまで頑張れなかったよ」

「流石はシアだ。もっと頑張るからな」

「素敵よシア君、私ももっと頑張るからそばに居させてね」

「……寸劇のネタをたくさんありがとう」

「いや、俺のせいで修行をする羽目になったんだし。役に立てたならよかったよ」


 ただ、皆の修行を手伝い続けたシアは自分の課題を解決できずにいた。そう転移魔法である。だが、その時イルマは一枚の紙を持ってきて机の上に置いた。

「役に立つかわからないけど、私が転移魔法を使うときのイメージを伝えておくわね」

 そう言うと、今度はその紙の右端に石を置く。

「この右端の石が一瞬で左端に移動する。それが転移魔法だよね。この石を紙の上で動かすと、右端から左端までの距離が邪魔をする。だからね、私はこの紙を持ち上げてやるんだよ」

「紙を持ち上げる?」

「そうだよ。すると真ん中をたわませると右と左が一瞬でくっつくでしょう」

「……」

「目に見える範囲で、目標を決めてからその間にある空間をたわませる……」

 すると、シアはイルマの前からかき消えた。

「……イルマ先生、出来ました」

 そう、この日シアは念願の転移魔法を覚えたのであった。

 そのあとは、全員でシアが転移魔法を覚えたことを喜び、祝ってくれた。

 小太郎も、

「マリアナに会えるね~」

 と走り回って喜び、シアは嬉しさで涙ぐんでいた。

 ルーナはシアの手を握ると、

「お母さまに紹介してくださいね」

 と言い、感極まったシアはルーナを抱きしめて、さらに泣いてしまったのである。

 その姿はエマの寸劇のネタになっていたが、全員が充実感に溢れて楽しい夜を過ごしたのであった。


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