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貧乏男爵家の聖女に生まれて

作者: 空渡 海

この国には聖女が3人現れる


傷を癒す聖女

心を癒す聖女

大地を癒す聖女


刻印がある訳でもなく血統でもない

身分は関係なく、心清らかな人に宿ると言われている

自然と3人の聖女がいる事により均衡が保たれ穏やかな国でいられるという

代替わりには数年を要する時もあるが、今は3人揃い一番平和な時期になったと言える


その心を癒す聖女が私らしい・・・

何故分かるかというと、聖女が芽生えた瞬間、心の中に光が灯った感覚があったからだ

心に光が灯った・・・覚醒したみたいな感じ


そして、私の家は貧乏男爵家だけど 皆幸せに暮らしている



それまでは家族はあくせく働きイライラしていたが、私が覚醒してからは

貧乏でもいいじゃない!

楽しく毎日暮らせれば!

って感じだ


私は、それから教会や病院などで心のケアをしてまわっている。

勿論 給料はないが、皆から野菜など貰えるため貧乏の我が家にとってはとてもありがたいのだ。


そんなありがた~い聖女の力なのだが、心の聖女だとしても誰も分かってくれない。

話してすっきりした。気持ちが楽になった。程度の事なのだ。

勿論、犯罪は減っているんだけど・・・ね


それに比べて、傷を癒す聖女様は公爵家に生まれた美人で才女でお金持ち

この国の第一王子と結婚が決まっているらしい。

天は二物を与えずと言うが、三物も四物も与えられているではないか!!


また、大地の聖女様は平民生まれだが、その名の如く大地に恵をもたらすため

侯爵家に嫁ぐ事が決まったらしい。

ブドウ畑を領土にもっており、今でも上手くいっているのだが、聖女と結婚すれば

この先安泰だろう。




・・・羨ましくないといったらウソになるかもしれないが

私は今のままでも十分幸せだし、結婚して子供が出来て普通の家庭を持てれば十分なのだが

貧乏なので、色んな仕事を掛け持ちしているため社交場も殆ど出ないし

出会うきっかけがない。

そんなこんなで、もう20歳になる。




そんなこんなで今日も教会で祈りを捧げ、悩み相談にのっていた。


「ライラ様、もしよろしければこちらをロイザール侯爵家のマリーナ様へお届け願えませんか?」


異国より手に入った書物だそうだが、マリーナ様は旦那様を亡くされてから屋敷から一歩も出ていないそうだ。

少しでも心のよりどころになればと、良い書物が入った際には届けているのだそうだ。


「はい、私で良ければ」


心が病んでいらっしゃるのなら力になれるかも!!



馬車で数十分行った所にある大きな屋敷に着くと

初老のキリッとした身なりの執事が出迎えてくれ、マリーナ様の部屋まで案内してくれた。


コンコン


「奥様、よろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」


ドアを開けると椅子に腰かけ本を開いている婦人の姿があった。

せっかく綺麗なのに表情は暗く疲れた顔をしている。


私を案内すると執事は部屋を出ていき、私と奥様二人になった。


「良ければ、その本を読んでくださらない?」


袋から書物を取り出し、1ページ1ページ朗読していく


「あなたの声はいい声ね・・・本はいいから少し話さない?」






それから少しずつ心を開いてくれ、何度も足を運ぶうちにすっかり仲良くなった。


「夫が亡くなってから2年振りかしら・・・

 庭に出ようと思ったのは始めてよ」


私と会って2カ月目にしてようやく庭でお茶が出来るようになり

最近の街の様子や流行りの菓子の話など他愛のない話に花を咲かせていた。



「母上!」


「ベルティック 仕事はもう終わったの?」


「母上が庭で茶会をしているとセバスから聞いて・・・

あぁ、貴方が母上の言っていた方ですね!

良いお茶飲み友達が出来たと伺っていました。」


「お初にお目にかかります。ライラ・ディル・ラダトールと申します。」


私が挨拶すると、ベルティック様も挨拶をしてくれ、椅子に腰掛ける。


ベルティック・ザン・ロイザール

ロイザール家は魔法使いの家系らしく、ベルティック様も魔剣士をしている。

黒髪を後ろで束ねていて、黒い瞳が太陽に照らされると深い青色に見える。


執事のセバスがベルティック様のお茶を用意しながら、さっき買ってきたという

菓子を持ってきた。


話をしていた人気店のお菓子だ。

「口に合うといいのだが・・・」

ふっと微笑みかけてくれる瞳にドキッとする。



お茶会を終えると、ベルティック様が家まで送ると申し出てくれた。


「ついでに結婚式の準備で宰相の所に寄ってきます」


「結婚されるんですね」


心がチクッと痛む


「ああ、大地の聖女様とね

 普通と違い、王家が絡んでくるから準備に大変なんだ」



噂に聞いていた侯爵様と大地の聖女様の結婚はロイザール家だったのね

社交の場にあまり出る事がない私は詳しくは知らなかった。

だけど、それがベルティック様だとは・・・


さっきまで自分に向けられたあの笑顔にときめいていた私が馬鹿みたい


馬車に揺られながら帰路の途中、ベルティック様は私にも結婚式に参加して欲しいと

願いでた。

マリーナ様を元気付けてくれたお礼も兼ねて是非にと!!


大した事ない聖女だけど、二人に祝福を送らなきゃね

落ち込みながらも聖女である事を誇りに思っているし、世の中の心を潤すのが私の使命だとわかっている。


ベルティック様は我が家に着くと、父にも結婚式に私を招待すると挨拶をしてくれた。

好青年に目を輝かせている父が痛々しい・・・

ちょっとうわの空で聞いていると


父は少しびっくりした表情で

「是非ともよろしくお願いいたします!!」


ん?なぜそんなに喜んでるか分からないけど・・・





そして、結婚式当日


私は事前にベルティック様から届いたドレスを身にまとい髪のセットをしていた。

我が家を心配してか、ドレスを用意してくれるなんて申し訳ない・・・。

ドレスは薄い水色のAラインで深い青のレースが上から掛かっている。

上質な絹は着心地も最高だ。


結婚式には、お父様が1台しかない馬車を私に用意してくれた。


ロイザール家に着くと、すでにお祝いムードで正面から見えるお庭には大勢の人たちが

集まっていた。


私が馬車から降りるとすぅっと手が差し伸べられた。


前を見ると、ベルティック様が微笑みながら待っている。


「あ、の ベルティック様はこんな所にいてもいいのですか?」


「僕の準備は終わったからね、これからはエスコート役

 主役の二人も待ってるから行こう」


「えっ・・えっ?」


私はよく分からないまま手を引かれ会場となる庭に連れて行かれた。


庭の中央には、ベルティック様によく似た男性と可愛らしい小柄な女性が仲睦まじく

寄り添っていた。


「あ・・・の方は?」


「今日の主役で僕の弟のケミシュだよ、隣は大地の聖女のロージー」


てっきりベルティック様と大地の聖女様の結婚式かと思っていたら

弟だったと聞いて、びっくりするやらほっとするやら



「ライラ、二人を祝福してあげて」


ベルティック様から言われ、私は二人に向かい両手を胸の前でくみ

祝福を捧げた。


『癒しの聖女の加護のあらんことを』 


ふわっと温かく優しい風が吹き抜け花びらが舞う


ロージーは目を輝かせ喜んだ


「まさか、癒しの聖女様にお祝い頂けるなんて光栄です!」



今度はベルティック様とケミシュ様が目を合わせびっくりしていた。


「ライラ、君は僕たちを幸せにしてくれたんだね

 君にも僕が幸せをあげてもいいかい?」





 私にも遅い春がきたみたい















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― 新着の感想 ―
[一言] ロイザール家まさかの聖女ダブルゲット!(笑) 侯爵家大繁栄の予感…! …他の家に疎まれなきゃいいが…(笑) ロージーはいい娘っぽいから仲良く出来そうだし、平民上がりだから生活環境も似てる?(…
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