表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

The Shape of Your Hearts 

今回は珠子センセイ視点です。

壁の時計を見るまでもなく、もうずいぶんと時は経った。


目隠しのカーテンの隙間には既に日差しの色は無い。


様子を見に行かねばならない。


私の心の重しの奥から、倦怠感に似せた抵抗の叫びが聞こえる。


それは…


ずっと止めていたタバコを…あと1本だけと吸い点けては消し、吸い点けては消しした灰皿の上の残骸が物語っている。


私の心は


いまさら何を言おうとするのか


ため息が出る


お前のお尻は


そんなに重くはないだろう?


自虐ネタを心に置いて


私はストッキングの足先で机の下に潜り込んだパンプスの行方を探る。


仕事、仕事、仕事

と念仏を唱え


私は椅子から立ち上がり

白衣の裾を手で伸ばした。




トイレに至る暗い廊下は今の私にとって、まるで“グリーンマイル”だ。


その先に待ち構えるのは、かつて…


その記憶は打ち捨てたはず!!!



トイレの中から泣き笑いが聞こえる…


足を踏み入れると


微かに()()()が…()()()()


私はひゅーっ!と息を飲み込みかけ、心の中でみっともなく叫び声をあげてしまう。


床に座り込んでいるふたりの()()がこちらを見た。


私はキッ!と姿勢を立て直して囚人に言い放つ。

「何をやってるんだ! お前たちは」


私は白衣を脱いで、スカートのまま座り込んでいる雷電池(かんだち)に掛けてやったが、彼女は頭を振り、それを笙悟陰(しょうごいん)に掛け直した。


「保健室に戻るぞ」


後ろを振り返ると、

カノジョたちはしっかりと手を繋いでいて

それが否応もなく私の心を抉る。


だから私は事実を伝えなければいけない。



--------------------------------------------------------------------


「キミ、家から何枚も下着を持って来ていただろ、あれはキミのお母さんが用意したのか?」


私の問いに笙悟陰は頷く。


「実は保健室にも着替えの用意があるんだ。下着の他にスカートとズボンもね。そのロッカーの右側が女性用、左側が男性用だ。 別に両方とも開けていいぞ、キミのお母さんのお見立てほど可愛くはないがね」


そういうと初めて、カノジョたちは少し笑った。


私の心の奥がまたうめき声をあげる。

しかし

言わなければならない。


「そのお母さんから、キミはどのくらい聞いている? マリア法の事を」


「マリア法…の事ですか?」

カノジョの顔が曇るのを見て、私は雷電池の方へ向き直った。


「雷電池、キミは笙悟陰に関わってはいけない」


雷電池は激しい怒りの目で私を見上げる。

「なぜですか!!?」


顔を伏せた笙悟陰の頬に涙が流れている。


しかし私は


極めて事務的に

言い放つ


「キミも殺処分の対象になりかねないからだ」


「『さつしょぶん』ってなんですか?!!」


私は


感情を立ち上らせないガラスの目で居ようと心に捻じ込む


「殺されるということだよ」


「えっ?!!」


驚く雷電池の声に笙悟陰は自分を抱え込んで震えている。


「マリア法は100年ほど前の“男社会のヒステリー”が生み出した悪法だ。しかしその法が生き続けている現代も…100年前とさほど変わらぬという事だ。法は施行され、要件が満たされてしまえば速やかに執行される…」


「そんな馬鹿な事!!」と叫ぶ雷電池に私は淡々と言ってやる


「朝のラッシュのさなか、バカみたいに空にされた列車に、既に君たちは乗せられたのだろう? 笙悟陰と関わっていると、このような有無を言わせない“力”がいつか君にも及ぶ…だから一刻も早く離れた方がいい」


「嫌だ!! 絶対に嫌だ!!」

笙悟陰を守るように抱きかかえた雷電池はこう怒鳴った。


止めようとしたって決して止められない“いたいけな熱情”がそこにはあった。


ああ…『恰好なサンプルがカモネギでやってきた』と舌舐めずりする研究者たちの顔が目に浮かぶ。

そしてそこに取り込まれた自分の姿も…そして過去の自分の姿もまざまざと見せつけられる。


私は一瞬、“痛み”で天井を仰ぎ、

カノジョたちに提案した。


「メシ、食いに行こう まだラストオーダーには間に合う」



--------------------------------------------------------------------



私は中華粥の専門店へ二人を連れて行った。


「車酔い、大丈夫だったか?」


「はい… 少しお腹も空きました」


「なら、ちょうどいい。ここのお粥は美味しくて…体にも優しい」


雷電池は笙悟陰に寄り添ってテーブルについた。

可愛くて男前なやつだ。


3人であわび粥を食べた。


見ていると、今度は笙悟陰が雷電池の頬に付いたお粥のしずくを拭いてやったりしている。


さっきもそうなのだが、この子達の気遣いはお互いがお互いにとって、とても自然だ。

これが昨日今日、初めて出会ったふたりなのかと思う。


思わず私は夢想する。

『この子達ならできるのかもしれない』


でも私は、優しい味のお粥と優しさを分け合っているふたりに現実の話をする。


「笙悟陰、キミに残された期限はいつまでだ」


「1年と2か月です」


「では、早々に“交配”を済ませる事だな…産まれる子供の事は考えるな」


笙悟陰の手が止まった。

「考えないとどうなるんですか?」


「キミは血清を手に入れ、いわゆる普通の生活に戻る事ができる。全てを無かったことにはできないかもしれないが…夢も恋も叶える事は可能だ」


笙悟陰はその鳶色の瞳で私に訴えた。

デジャヴだ…


「私は…私の祖母や母が子供の手を離さなかったからこそ、私は今、ここにいます、だから私も…」


「笙悟陰、いいか、良く聞け! キミの命に至る歴史に、キミが縛られる必要はない。命へ至る道筋はいくつもあって、我々はそのどれかひと筋に間借りしているようなものだ」


「命って、そんな軽いものじゃない!!」

雷電池はやっぱり怒りの目を私に向けて来る。


「重い軽いではないんだよ、雷電池…」


クルマで来ていて良かった。

そうでなければ今

この子たちの前ででも…

私はビールなり紹興酒なりをかっ食らってしまっただろう…





はい、えっと、今回はあまりしゃべらなかった新です。


次回はまだ題名決まってないそうです。なので“さわり”の部分をかがりんと私で読みます。


かがりん「ねえ、新! 胸の谷間ってどうやって作るか、知ってる?」


新「それ、私に訊く?? この“まな板胸”の私に!!」


かがりん「だって小町さんが言ってたのよ 『大抵の男子はオッパイ星人だって』 だから…作ってみようかと…」



と言うわけで、この分野についてド素人な私たちに愛あるアドバイスをいただきたいのです。

具体的に言いますと

「私はこうしてオトコ落としたわよ!!」

とか

「オレ、こんなふうにカノジョに迫られてさあ~ 参ったよ」

とかの武勇伝、秘法、手管 などなど

恵まれない私たちにご教授下さい<m(__)m>


感想欄や四宮楓の活動報告などにいただけますと…


すぐやっちゃう!!( *´艸`)と、かがりんは申しております(^^;)





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] すみません。私、実は車を運転しながら音声読み上げアプリで『聴いて』いることが多いのですが…… 本文しか読み上げてくれないので、前書きは飛ばされます。すると、語り手が誰になったのか、しば…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ