初めての男の子 ①
この章のお話が頭に浮かんだ時からSting の Shape of My Heartが頭でヘビロテしています。別に歌詞や“映画”がリンクしているわけではないのだけど…
とにかく鳴りやまないのです…
あ、今回は 新→香狩→新→香狩のターンです(^O^)
いつもより遅い時間の帰りの電車はもう空いていて、私とかがりんは並んで座った。
私のカバンには持ち帰り袋が… かがりんのカバンには持ち帰り袋と妊活本が入っている。
それでもかがりんの今朝の大荷物からすれば軽いものだ。
だけど心の重さはどれほどだろう…
私が爆睡している間に、かがりんの心の荷物がまた増えてしまったのではないだろうか…
夜の風景が通り過ぎる窓は、私たちを写す鏡
浮かない顔の二人だが…
窓鏡がかがりんの鳶色の瞳の色までは写してはいなかったので、私はどこかでホッとしていた。
そうなのだ、こうしていれば
かがりんは、きれいなだけで、後は普通だ。
なのに、窓に写った目を伏せているカノジョの姿に私はなぜか、
小町に篭絡されて撮らされた写真を思い出す。
僅かに見え隠れする白いふくらみに流れかかるバイオレットグレージュの髪に弾かれた日差しは、あどけない笑顔の奥に佇む鳶色の瞳を照らしていた。
母ちゃんが言ってた『蠱惑の天使』とは
きっとこういう瞬間の事なのだろう
私は言いようのない気持ちに襲われる。
胸が切なくなる。
でもやっぱり、かがりんの横顔を見てしまう
鳶色の瞳から
涙が降り出しそうだ。
それがどうにもこうにも
何とかしたくて
カバンの上に置かれた
カノジョの白くしなやかな指に
日焼けと拳ダコが抜けない私の手を
置いてしまった。
そしたら
かがりんは
手のひらを返して
私の指の間に
自分の指を差し入れて
そっと握った。
そうやって私たちは
こっそり
恋人繋ぎをした。
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今朝、一人で昇り始めた坂道を、今は新と下っている。
私、ドキドキしていて
繋いだ手はきっと汗ばんでいる。
実はイヤなんじゃないかな…
新は優しいから
私の事、傷つけないようにしているのかなあ
気が引けて…
握る力を弱めたら
グッ!と握ってくれた。
嬉しい!!
今日は甘えていいかな
さっき言われたように
家まで送ってもらっていいかな
カバンの中の袋がカサカサ鳴った。
また、胸がドキン!とする。
今、ときめいているこの感情を
私は男の子とするたびに感じてしまうのだろうか…
さっき、手を握り返してくれた新の心も
間違えて持たされてしまった
オスの心なのだろうか
街灯の光が顔に差さないように
新に気づかれないように
私は俯いて
儚い線香花火の火玉のような
涙のかけらを
ハラリと落とした。
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かがりんはここのお屋敷のコだったんだ。
そして、最初、お兄ちゃんとお姉ちゃんだと思ってしまったかがりんのご両親が、門の外まで迎えに出ていた。
一連のご挨拶の後、送ってくれると言ってくれたお父様の申し出を、私は結局受ける事にした。
かがりんがお母様と二人で話したそうだったから…
月明りの中
お父様とふたり
夜道を歩く。
このお父様、
萌え狂うに違いないので母ちゃんには絶対見せられないが、“さすが、かがりんのお父様”と言うくらいのとんでもないイケメンさんだ。
今も、ジーンズのポケットに指を引っ掛けて月を仰ぎながら
「香狩と仲良くしてやってね」とおっしゃる
爽やかすぎるこのお父様と
お姫様みたいなお母様が
キスしただけで
かがりんは生まれたのか…
私も月を見上げ
そしてため息をついた。
メルヘンだ…
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何も言わず抱きしめてくれたママリンの髪に顔を埋めて
「男の子とできなかった」とつぶやいた。
「うん」
「でもね、さっきのコ…新としたの」
「…そうなんだ」
「新、優しい」
「それは分かる」
「男の子も…優しい?」
「男の子でも女の子でも…優しい人は優しいよ」
「明日ね、西島くんって人とするの…」
「そう…きっと、優しい人だよ」
「あの…ね。ママリンはパパリン以外の人ともしたの?」
「うん」
「ひょっとして、初めてはパパリン以外の人?」
「うん」
「その人、優しかった?」
ママリンは小さくため息をついた。
「…違ったかな」
ママリンは私の頭を撫でてくれる。
「ねえ、香狩!」
「うん」
「私の事… いつでも撃ち殺していいからね」
「イヤだ!! そんな悲しい事! 言わないで!!」
ごめんねとママリンは
私の頭を抱きしめて
何度も何度も
キスをくれた。
こんばんは
家に帰って
目ざとい母ちゃんに持ち帰り袋を見られそうになった新です。
絶対!!! 言えない!!
エサにされる!!!
んで、次回はいよいよ男の子との話ですが…
書くな!! 楓!!!