エピローグ--- 鳶色の瞳
今回の“ヘビロテ”の曲は、もちろん!!
堀内孝雄様の『君のひとみは10000ボルト』です(^O^)/
最近また某化粧品会社のCMで復刻使用されてますよね(ご本人歌唱じゃないけど)
驚きました(*^。^*)
そして
ヘビロテして、改めていい曲だなあと思いました。
※ “小町” 視点です。
取りあえず、top of the world 的な気分ではあった。
実際にアゲアゲだったし…
だからインタビューの受け答えも“陽キャラ”だ。
「どうでしょう、主演女優賞をお獲りになられた率直なご感想は?」
「ええ、正直、ちょっと恐縮しております、私のような若輩がこんな大賞をいただいてよいのかと…」
「いやいや、小町さんの堂々たるキャリアからすれば、むしろ遅すぎたのではと…」
「えっ?! ちょっと待ってもらえます?(笑) 私、まだ27なんですけど、キチンと恋もしたいし、そうですね、ありきたりですけど、本当のお嫁さんにだってなりたいんですよ。この賞をいただいた映画の中で二度もウェディングドレス、着ちゃってますけどね!」
「おお、では密かにお相手が??」
「アハハハ いたら私のこの性格ですよ、バレバレですよぉ」
「10年前、想い人がいらっしゃったというのは私たちも知ってます。ヨリ戻された?」
私は一瞬遠い目になる
「うん、その人はね、もうお子様がいらっしゃるの たぶん10歳くらいかな……」
「じゃあ、当時高校生の小町さんはオトナな恋愛をなさっていたんですね」
「それはね、片想いだったから……でも芸の肥やしにはなりましたわよ」
インタビューと挨拶回りが一段落して、ひと息ついた私に、マネージャーが耳打ちしてくれた。
「このあと、花束贈呈です。プレゼンターは……」
私は懐かしい名前を聞いた。
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その黒のタキシードを纏った小さな紳士は大きな花束のおかげで顔が見えなかった。
少し屈んで、その花束を受け取った時
その天使の様な微笑みと悪魔のように輝く瞳に
思わず引き込まれた。
この子にも使ってしまおう『ネ申的』という言葉を…
「お名前は?」
「笙悟陰 彼方 です」
「年齢を当てて差し上げましょうか?」
「僕は子供ですが、恋する女性から子供扱いされるのは、心が痛みます」
と、このとんでもない美少年に言葉を返されて
絶好のシャッターチャンスにされてしまった。
そして、間違いなくこの子の親であろう美しい青年がゆっくりと歩み寄って、一礼した。
「息子の失礼をお許しください。できましたらお詫びを申し上げたいのですが…失礼ながらスタッフの方々には、話を通させていただきました」
有無を言わせないやり方だけは、保健室のカーテンを蹴とばしたあの時と同じだな、ショウゴイン!!
私はふんわりと微笑んだ。
「望むところです」
いつの間にか少年は私の元を離れ、サラサラの髪を胸元に垂らしている淑女の腕の中に居た。
私がそれに気が付くと
彼女はそっと頭を下げた。
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「『新も来なさい』といったんだがね。逆に言われてしまったよ。『あなたがカノジョをお連れして』って」
こう話すショウゴインはすっかり青年実業家といった体で
そう、リアルタカラヅカって感じだ。
今、私たちはホテルのスイートルームに居て、ワインなどを傾けている。
「キミはとても魅力的な人になったね、そして輝くほどに美しい」
「あなたほどではないわ、仕事柄、美男子ドモとのこんな情景はやり尽くしたけれど…これほど目を奪われた事はない」
ショウゴインは肩を竦める。
「中身はオンナだけれどもね。ウチは自営業みたいなものだから、まあなんとかこんな仮装が通っているよ」
「もう11年になるのね…どうなの?マリア病?」
「私達3人の最後の検査が終わったのがつい最近、ようやく“人”になれたよ」
私はずっと心配で気掛かりだった事を尋ねてみる。
「珠子センセイの消息は?? 当時、新のお母さまから密かに聞かされていたの、出産した新の臍帯血を持って消息不明になったって!!! まさか、ひょっとして、殺処分されたの???」
ショウゴインは頭を振って、手に持っていたワイングラスを傍らに置き、私に深く頭を下げた。
「新と、珠子センセイ、私、それに彼方の命を…あなたは救ってくれた。本当にありがとう、あなたが居なければ、私達は誰一人として、この世には残っていない」
「じゃあ!珠子センセイは?? ちゃんと生きているの??」
「ああ、“彼方”の臍帯血のクローンと共にね。彼のはオールマイティだから…ただ…マリア病を無にするという事は進化の後退といえるかもしれない
…うん 少し、マリア病について話そうか」
そう言ってショウゴインは私のグラスにワインを継ぎ入れた。
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ショウゴインはグラスに口も付けず、どこか遠いところでも見ているかのようだった。
その瞳は当たり前のこげ茶色で、考えてみれば、その容姿とともに私が無意識に引っかかっていた事だ。
「瞳の色…」
「ああ、コンタクトではないよ、いわゆる“普通の色”になった。因みに地の眉は薄いので、男っぽく見えるようにパウダーをのせているがね」
なるほど、目を凝らしてみると色々工夫しているようだ。
えっ?!、目尻に、涙?!
「話がそれてしまったね。マリア病の本質はね、本当に愛し合った二人の間でしか懐妊はしないという事。実はそれがマリア病にとって一番自然な事なんだ。母から子へ、臍帯を通じて移動することがマリア病にとっての“本望”なのだ。
その為に…お互いがお互いを好きになれるよう、愛し合えるよう、マリア病はヒトを誘導する。
だから無自覚の感染者が年頃になって、
『私、なんだかモテちゃうの、そして○○くんを私も好きになったの いずれ結婚したいなあ』
で、結婚して子供ができて…なんてことが、実は普通に存在しているんだ。
この“普通”が成し得ないときに、マリア病はヒトの本能のスイッチを押して、交配という体液の混合を起こさせる。
ところが、交配に対する障壁が高ければ高いほど、マリア病による肉体や精神の暴走は激しさを増し
…和美さん…珠子センセイの恋人だった人だが…の様に悲しい結果に陥ってしまう…
ショウゴインは小指で目尻を少し抑えた。
「私の家系は幸運にも愛する人に恵まれた家系だったんだ」
「でも!」と私は疑問を投げかける。
「そんな事を研究者が知らないわけがない!現に、その管理下で懐妊が行われていたじゃない!」
ショウゴインは悲しみをのせて微笑んだ
「キミも見ただろう、赤黒いものを私が何度も何度も吐き戻したのを。あれは“愛する相手”のものでなかったからだ。私も幸運で、“運命の人”が一番最初の交配相手の新だったということさ」
「でも、あなたが妊娠したわけではなかった」
ショウゴインは初めてグラスに口を付けた
「マリア病は“clever”だからな。その状況に一番適した道を選ぶ。母体の交代もそう、女性同士だからできる方法だけれどね」
「待って!! それじゃ、ひょっとして!!」
次にショウゴインから発せられた言葉は、私に珠子センセイを…あの刹那に交わしたキスを思い出させた。
「キミは敏いコだからわかるだろう。マリア法に取り込まれた男女の大半は嘘を…」
ショウゴインの目からハラハラと涙が落ちた。
「嘘を永遠につき続けたのさ、
“自分達の真実”に対する追求を振り払う為に、
悲しいほど鮮やかにね。
だから“愛を伴う”という、こんなにも自然で単純な事が
“研究者達”には見えなかったんだ。」
「でも、そのせいで、珠子センセイは…和美さんは…」
「うん、本当に悲しい。そういう不幸が生まれる事も事実だから。
そもそもマリア病は疫病ではない。女性の選択肢を限りなく拡げるという進化の卵なんだ。 でも人間の現実がそれを容認しない」
ショウゴインは自分の姿を一瞥した。
「この滑稽な仮装がいい例だろう?」
私はワインを口に含みながら
色んな事に思いを馳せた。
そう言えば
なぜ、男の子が生れたのだろう??
マリア病を継承させるなら女の子のはずなのに…
「ねえ、ショウゴイン!」
「なんだい?」
「『進化の卵』って!」
ショウゴインはワインを飲みながらクツクツと笑った。
グラスの照り返しか?
瞳がキラキラしている
「キミは本当に敏いコだ」
「なんか、さっきからのその物言い、ムカつく!!」
「はははは、キミもさっき同じ物言いをして、ウチの息子に抗議されたね」
「ああ、うん、それは悪かった」
「どうだい?ウチの息子は。あれは新似でね、サッカーにも天賦の才がある」
「そうなんだ…賢くて、とんでもない美少年で…ショウゴインもさぞかし自慢なんだろ?」
私ははぐらかされた話に戻る為の言葉を継ごうする。
その口を人差し指で抑えられた。
「それよりキミの話を私はしたい。キミは女優としてやり残している事があとどのくらいある?“これだけは絶対に”という類の」
急に話を振られて、私は戸惑った。
やりたい仕事はたくさんある。でも“これだけは絶対に”となると…
私は先程の授賞式での“達成感”を思い出した。
「キミが一心不乱に仕事に打ち込んでいたのは…この11年、キミの様を見つめていたから、良く知っているよ」
そう言いながらショウゴインはくちびるに置いていた手を私のショートボブに挿し入れた。
耳の辺りがじんわりと熱くなる。
「私たちは迎えに来たんだ… キミと私たちが置き去りにしてきた“ポニーテールのキミ”をね」
「えっ?」
「まずはあの時の約束を果たしてもらう」
いきなりのキスの瞬間から、私は雷に打たれ
ショウゴインを貪っていた。
でも、これは、ダメ
私は自分で自分に抗おうとしたが
ショウゴインの腕の中から
逃げられず
結局は
絨毯の上に崩れて落ちてしまった。
まだ入った事のないベッドに入りたいという欲求が体の内外で叫んでいる。
「そう、これがマリア病だよ」
「でも… だって…」
と私は肩で喘ぐ。
「検査では出やしないさ、マリア病はとっくに私達の遺伝子の中だ。そして…」
ショウゴインの指が私のくちびるをなぞっただけで私は吐息をあげる。
「彼方のキスは私のより甘い」
ウィンクしたショウゴインの瞳は
鳶色だった。
『(^ε^)-☆Chu!=子種募集中!!♡』⇒⇒⇒ おしまい
。。。。。。。。。
イラストです。
男装の香狩 1案
男装の香狩 2案
一応、完結なのですが、『反省文』を書くかもしれないので…(^^;) 〆ていません。
この破綻した物語にお付き合いいただき本当にありがとうございました<m(__)m>
今、本格的に反省文を書くと本当に地の底に沈みそうなので(-_-;)
少しだけ…
この作品を通して自身のポンコツさ加減をまざまざと見せつけられました。
私はこういう時、その自分を分解して、“ネタ”にしたりするのですが…
今の自分を分解して作品書いても…
誰一人として読まないだろうなあ(爆)