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嫉妬

辛いなあ

この回は

みんな辛いです


また泣いてしまった…

※ “香狩” 視点です。



「『女性との交配』ですか?」


珠子センセイからの提案に私は絶句した。

確かに今まで()()()()()()のは、新とだけだ。

でも、新とはどんなに()()()()()も懐妊などしなかった。

当たり前だ。

新は女の子なんだから


「だが」と珠子センセイは言う。

『マリア病による懐妊は、そもそも普通とは違うのだから』と



「でも…」


笙悟陰(しょうごいん)、何をためらっているんだ。いいか、お前にはもうあまり時間が残されていないんだ」


「でも、センセイ! 私と()()をしてくれる女子は、クラスにはいません! それともセンセイがしていただけるんですか?」


「してあげたいんだが それは規約上、できない」


「わかりました。だったら私、クラスの子、ひとりひとりに土下座して頼みます」


「お前にそれが出来るのか? 雷電池(かんだち)は納得してくれるのか?」


「できます! それに新も理解してくれます」


「お前がそういう覚悟があるなら、一つ提案がある。

京橋と交配しろ」


「小町さんと?! ですか?」


「そうだ。本人の了解は取ってある。但し、条件付だが…」


「その条件って…」


「先に雷電池と交配したいそうだ。お前の目の前で」



私は目の前が真っ暗になった。


『クラスの子、ひとりひとりに土下座して頼みます』

その覚悟はもちろん噓ではなかった。


だけど、新が小町さんと交配!!

頭の片隅にそれを置いただけで

胸が張り裂けそうになって、滝の様に涙が流れる。


「試しだよ。笙悟陰」

珠子センセイはご自分の白いハンカチで私の涙を拭ってくれた。

「京橋はお前と雷電池との関係を試そうとしている。だから おそらく命がけで雷電池を奪いに来るだろう」


私は絶句した。

そうなのだ

私は

マリア病にどこかで甘えていたのだ。

これが“女の子の恋”なのだ

命のやり取りも辞さない…


珠子センセイはハンカチを私に見せた。

涙が滲みた跡がピンクに染まっている。

「という事だから、お前の涙も試料として押さえる」


珠子センセイは私の涙をスポイドで吸って封入した。

「残酷だろう? でもそれは残酷なお前に相応しい扱いなんだよ。それがマリア病を患った者の行く末だ」


私は自分が周りに…そして愛する新に、これまでしてきた“仕打ち”を改めて思い知らされた。


ホントに、もう泣くことすら許される状況じゃないんだ…

私は

茫然とするしかなかった。



--------------------------------------------------------------------


カーテンの向こうの二人の息遣いが変わっていく。

交配と、衣擦れの音が私の胸を容赦なく刺し貫く。


私のよく知っている、新の手のぬくもりの変化が、カノジョがどうなっていくのかを否応なしに私に突きつける。

ふたりで触れ合って

作り上げたものを

今は小町が触れているのだ


ああ私の新!!

もう私のものでなくなるの?

でもそれが

あの子にとっての幸せなのかも


そう


じきに私は

壊れる

もう、

体の奥から

それが湧き上がっている


今までは

新の手が

それを止めてくれたけど

今は

逆だ

絶望、混乱、淫乱

ない混ぜとなって

目から零れ落ちた時


私はカーテンを蹴倒して咆哮していた。



--------------------------------------------------------------------


※ “小町” 視点です。



()()()は間もなくペアリングを始めます。これから先、決して邪魔が入らないように… ええ、

笙悟陰邸へ向かっています。 間もなく監視カメラが反応し、一部始終が観測可能となるはずです」


物凄い勢いで、ショウゴインに突き飛ばされた私はようやく起き上がった。


そんな私に一瞥をくれただけで珠子センセイはまたどこかに電話を掛けている。

「ええ、予定通り進んでいます。最新のパスコードは先程流しました。監視カメラが起ちあがった瞬間がチャンスです。奴ら、一斉にブロックを「解除」しますから」


私はスカートのお尻をパンパンとはたいて本来の立ち姿を取り戻して腕組みをする。

「センセイは私を当て馬になさったのね」


珠子センセイは電話をしながらキーボードを叩いていた手をようやく止めた。

「キミは敏い(さとい)コだから、とうに気付いていたのだろう?」


「ええ、だからセンセイが何をなさる気なのか教えてください。」


珠子センセイは天井を見上げ何かを確認して、カチャカチャとキーボードを叩いた。

「よし!質問に答えよう。

マリア法の()()()たちを()()させるのさ」


「感染?」


「そう、コンピューターウィルスにね

それと時を同じくして、隠し持っている現物の保管庫を物理的に破壊する」


「できるんですか??!! そんな事が!!」


「できるさ、私たちはそのためだけに今まで生き延びたんだ。

隠し事は深ければ深いほど、その底を目掛けて潜るしかない。

だが底に辿り着いてしまえば破壊は容易だ。テロの常套句だよ」


「でも、その破壊工作が成功しても修復はされるでしょう??」


「もちろん、“取り繕い”という修復をね、それが狙いだ。心配するな、キミの雷電池も解放されるよ」


「でも!そんな事!! センセイはどうなるんです? 発覚する恐れはないんですか??」


「殺処分にはなるだろうな」

そう言って珠子センセイはタバコに火を付けた。その手が震えている。


「この手の震えはね、恐怖からではない。

笙悟陰と雷電池への限りない嫉妬からくるものだ。

私は成し得なかったんだ! 自分のカノジョと…

だから、今度こそ!

私を逝かせてくれ」



!!!!!!!


珠子センセイの言葉が

私の頭の中で弾けた


京橋小町の感情

雷電池新の感情

笙悟陰香狩の感情

真野珠子の感情

そして珠子の恋人のおさげの子の感情

色々な感情のイメージが私の中を駆け巡る


その中に向かって

「下りて!!!」

私は心の叫び声をあげる


その瞬間

私のくちびるを通して

言葉が流れた


「死なせるために!!」


その声にビクン!と揺らされた珠子の肩を

私は鷲掴みにした。

「死なせるために、アンタを残したんじゃない!!!」


珠子の口が何かを発声しようと動き

私は珠子の肩を激しく揺さぶった。


「ちゃんと言って!! ちゃんと叫んで!!! ちゃんと呼んで!! 私の名前を!!」


「…和美…」

涙とともに発せられたその名前を

私は口づけとともに受け止め


珠子をしっかりと抱きとめた。



。。。。。。。。。


イラストは嫉妬にとりつかれたかがりんです。(^^;)


挿絵(By みてみん)



次回が佳境になるのかなあ


あ、久しぶりに“ママリン”出ます。


感想、レビュー、ブクマ、評価、切にお待ちしています!!(^O^)


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― 新着の感想 ―
[良い点] おおおお!! 珠子先生!! カックイイ!! そっかそっかー。そうだったのねー。 彼女は和美との恋を忘れなかったんだね! ずーっと一人で戦って来た! 連絡してたのは味方側だったんだ!! …
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