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第八話

 僕は今、小さなお庭の芝生のうえに、腹這いに寝そべっています。

 アリ達に提供したクッキーのかけらの行く末を、虫眼鏡ごしに見届けるためです。

 

 無心で観察を続けていると、珍しく向かいのお屋敷から人の気配がします。

 

 僕の小さなお家は一階建てですが、道を挟んで東側にある、大きなお屋敷は三階建てです。

 ジーヤから、この街を治める伯爵さまのご家族が、一時的に滞在する屋敷だと聞いています。

 

 そんなことを思いだしながら、ぼ〜とお屋敷を眺めていると、角部屋の窓が開きます。

 

 小さな女の子が両手を握って、上にグゥ〜と伸ばします。

 馬車に揺られて疲れたのかな。

 年齢は僕と同じくらいかな。

 お人形さんみたいで可愛い子だな。

 なんて思っていたら、小さな女の子と目があいます。

 

 彼女はおそらく伯爵令嬢。

 僕は虫眼鏡を手に芝生に腹這いです。

 これはまずいと思って、慌てて立ち上がりぺこりと頭を下げます。


「ごきげんよう」


 頭上から声がかかります。

 顔をあげてこたえます。


「こんにちは。僕はトキンです」


 もう一度、頭をぺこりとさげます。


「トキンね。私はソフィア。よろしくね」


「はい、よろしくお願いします。ソフィアお嬢様」


 僕はにっこりでお返事します。

 ソフィアお嬢様もニコニコしています。


「あっ、呼ばれてしまったわ。またね、トキン」


 そう言ってソフィアお嬢様の姿は見えなくなります。


「青春だのぅ。トキン、朝食じゃぞぃ」

 

 朝食後、昨日ランクアップした鑑定スキルを、母さまとジーヤに確認してもらいます。

 用意したのは僕の幸運コレクションの二つです。


「やってみるね。『鑑定』」


 鑑定結果

 「ベッコウのヘアピン」

  良品

 【黄金蝶の髪飾り】

  幸運+1

  85,000ゴルド

 (銀貨八枚、銅貨五枚)


 鑑定結果

 「青金石のカフス」

  良品

 【ラピスラズリの袖留め】

  幸運+1

  100,000ゴルド

 (金貨一枚)


「やっぱり価値がわかるのは便利ね」

「付与効果がつくと、いい値がつくのぅ」


 母さまもジーヤも興味津々のようです。


 鑑定の経験値はどうなるか確認してみたら(2/200)となっています。

 

「母さまとジーヤは、次のランクアップ効果は知ってるの」


「知ってるわ。鑑定スキルランク3では、アイテムの簡単な説明がつくはずよ」


 ふむぅ〜ん。僕はしばし考え込み、頭の中でやりたいことを列挙します。

 

・鑑定スキルの経験値稼ぎは継続したい。


・街の武器防具屋さんの在庫には限りがある。

 

・リペアスキルは隠しつつも経験値を稼いでランクアップも狙いたい。

 

・幸運コレクションも増やしていきたい。買うためのお小遣いもいる。


・僕はまだ五歳だから、一人歩きは許されてない。


 ふむぅ〜ん。目をつむり、腕を組んで考えます。

 

「母さま、ジーヤ。ちょっと聞いてほしいアイデアがあるの」


 二人はニコニコしながら頷きます。

 僕は、さっき思いついたことを列挙して伝え、そのために何をしたいか一生懸命はなします。


「さすが私の可愛いトキンだわ。とってもいいアイデアだと思うわ」


「よく考えてまとめたのう。ワシは少し外に出てくるぞい」


 母さまもジーヤも、僕のアイデアをほめてくれます。

 うれしくてにっこりしてしまいます。


「さあトキン、出かける準備するわよ」


「はい、母さま」


 小さなお家の三人は、あわただしく動き出します。でもとても楽しそうです。

トキンのメモ


鑑定 ランク2 (2/200)

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