第七話
「こんにちは」
「お邪魔しますわぃ」
ジーヤと一緒にドワーフの店『毛深い方がいい』に入った僕は、少し予想を裏切られます。
鍛治屋さんは、火と付き合っててすごく熱い。しかも火の加減をみるため薄暗くて、足元は土がむき出し。そんなイメージだったのです。
でも店内はとても明るいです。
沢山のお弟子さん達がリズムを合わせて鎚を振るい歌っています。
『トンテン、トンテ〜ン♪』
『隙間無く〜♪』
『トンテン、トンテ〜ン♪』
『打ちおろす〜♪』
愉快なリズムに僕もくちずさみそうになります。
でも慌てて理性のブレーキを踏みます。
このリズムは危険です。
一度くちずさんでしまったが最後、脳内で永遠にリピートされるやつです。
ふぅ、と息をはいてジーヤを見ます。
「トンテン、トンテ〜ン 俺達に〜♪」
リピート中でした。
「おう、坊主がトキンだな」
いきなり名前を呼んできたのは、鍛治屋の親方さんのような雰囲気全開のドワーフさんです。
というか頭に巻いた布に、
親方 ロック
と手書きされてます。
一瞬、僕のおでこにも名前が書いてあるのかと、気になりましたが返事を優先します。
「はい、僕はトキンです。ロック親方さん、今日はよろしくお願いします」
「おう、話はついてる。ついてきな。ジジイはしばらく返って来ねー。置いて行く」
すぐ横から楽しそうな歌声が、聞こえ続けます。ジーヤを見ることなく、親方さんのあとに続きます。
「この部屋に置いてある武具は、全て【古代の逸品】のはずだ。鑑定スキルは持ってねーが、匂いでわかるからよ。武具に触れなければ、後は好きにしていい」
そう言って親方は部屋を出ていきます。
気合いを入れて鑑定開始です。
まずは存在が異質で、一番気になるアイテムからです。
鑑定結果
「白銀の盾」
不良品(割れ・穴)
【ミスリルの祝盾】
雷属性魔法(発動不可)
体力+5 (5/150)
魔力+5 (5/150)
やはり、とんでもない品のようです。
付与効果の最大値が異常に高いです。
まさに国宝級の逸品。伝説の装備と言えます。
僕のユニークスキルなら、修復できるかもしれません。
でもそれは思い上がりかもしれません。
また外でユニークスキルを使うことも、装備に触れることも許されてはいません。
気持ちを切り替えていきます。
鑑定結果
「鋼のブーツ」
不良品(欠け)
【黒兎の速足】
素早さ+3 (3/7)
鑑定結果
「鋼鉄の剣」
不良品(折れ)
【月熊の剣】
力+1 (1/5)
素早さ+1 (1/5)
鑑定結果
「オーク材の円楯」
不良品(割れ)
【オーク古木の円楯】
体力+0 (0/10)
鑑定結果
「銅の短剣」
不良品(欠け)
【大鷲の爪】
力+0 (0/10)
鑑定結果
「銀の長槍」
不良品(折れ)
【新月のスピア】
力+0 (0/25)
鑑定結果
「銀の短槍」
不良品(折れ)
【満月のスピア】
守り+0 (0/25)
「トキンや、そろそろ起きるんじゃ」
ジーヤの声と共に、体を揺さぶられ目が覚めます。
「僕、寝てたんだね。十二回までスキルを使ったのはおぼえてるけど」
「親方がお茶を用意してくれとる。待たせるわけにはいかんぞぃ」
僕とジーヤとロック親方さんの三人でティータイムです。
山羊のミルクとクルミが用意されてます。
ロック親方さんと沢山お話しします。
魔道具を使用しているので、作業場に熱も籠らないし、明るくても問題ないこと。それでも火の粉が飛んで、火傷をしやすいので、毛深い方がいいこと。歌ってリズムをとると、仕上がりが均一になりやすいこと。色々教えてもらいます。
僕はまだまだ知らないことだらけです。学びはだいじです。
帰りの馬車は、楽しく歌う二人を乗せてゆっくり進みます。
トキンのメモ
鑑定 ランク2 (0/200) !