第四十六話
ここからが僕の戦いです。
僕は【山葡萄の編み袋】を開けます。
魔力+5の【道化師の赤帽子】と、魔力消費-10%の【夕日炎の帽子】を取り出して被ります。
まず鑑定してみます。
鑑定結果
「白銀の盾」
不良品(割れ・穴)
【ミスリルの祝盾】
雷属性魔法(発動不可)
体力+5 (5/150)
魔力+5 (5/150)
やはり凄まじい効果を持った盾です。
この盾が有れば戦いは有利になるはずです。
ですが直しきる前に魔力切れが起きます。
僕はエリザに頼みます。
「エリザ、マジックポーションを手に入れて欲しいんだ。この状況だとかなり厳しそうだけど、一本だけでいいんだ」
エリザは首を縦に振ります。
「アンナ、トキン様を頼みます」
アンナも黙って首を縦に振ります。
エリザが駆けて行きます。
僕はリペアを連続発動します。
一回、二回、三回、四回、五回発動します。
六回目は発動出来ませんでした。
突然、ドッガァーーーンという轟音が鳴り響きます。
少し遅れて、ゴ、ゴ、ゴと地揺れが襲います。
「トキン様、戦場がすぐそこまで。押し込まれているようです」
アンナが僕を心配してくれます。
ですが僕は僕の戦いを続けます。
鑑定結果
「白銀の盾」
不良品(割れ・穴)
【ミスリルの祝盾】
雷属性魔法(発動不可)
体力+130 (130/150)
魔力+130(130/150)
「あと少し。あと一回なんだ」
そう言ってふらつき、後ろに倒れそうになった僕をアンナが支えます。
ドッガァッーーーーンという轟音がさっきより近くで鳴り響きます。
同時にゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴッと大きな地揺れが襲います。
「トキン様、魔物が西門から見えてしまってます・・」
僕は二台の荷車の間に隠れて座っています。
魔物を目視することはできないです。
目の前まで押し込まれているようです。
でも逃げるつもりも、逃げる場所もないです。
僅かな勝機は残っているのです。
「駄目だ、一匹変異種が混じってやがる。そいつをどうにかしないとっ」
「あいつに皆やられちまう。他は数だけなんだが、くそっ」
「もう、長くは持たないぞっ」
冒険者の声でしょうか。
厳しい状況が伝わってます。
エリザが駆けてきます。
これでなんとかなる。
僕は小さな拳を握ります。
しかし近づいてくるエリザの表情は疲労し暗いものです。
「トキン様、申し訳ございません。この状況で街中の薬屋はしまっています。救護班の天幕も覗きましたが、マジックポーションは既に切れているそうです」
目の前が真っ暗になります。
悔しさが込み上げてきます。
俯いてしまいます。
やっと、なんとか、声を出します。
「そうか、そうだよね。エリザ、ありがとう。きっと必死に探してくれたんだよね。ごめんね、無理言って。本当にっ、ごめんなさいっ」
僕は唇をきつく噛みます。
涙がポロポロ溢れます。
アンナがハンカチを取り出し、黙って涙を拭いてくれます。
エリザは首をよこに振ってしゃがみ込み、背中をさすってくれます。
悔しくて下を向いてしまいます。
「トキン、ここで何してるの」




