第二十七話
ジーヤがニコニコしながら迎えに来ます。
鑑定屋さんを閉めて、門番ズに挨拶します。
一輪車を押しながら、小さなお家に帰ります。
小さなお家に着くと、周囲の様子が慌ただしいです。
大きな荷馬車が停まっています。小さな馬車も停まっています。
「少し前に、ベニスから着いたんじゃ」
僕の小さなお家の、お隣さんは三軒あります。
三軒とも同じ造りの建物になってます。
敷地の広さも一緒です。
四軒で、ひと区画です。
サイコロの四を上から見た感じです。
その三軒に荷物をどんどん運び込んでます。
「トツカーナ伯爵様に、お願いしての。三軒買取らせて貰ったんじゃ」
「小さなお家から、お引越しするの?」
「そのままじゃ。トキンは引越したくないじゃろぅ。アリアンナ様もここを気に入ってるしの。だから周りの家を買ったんじゃ。そのせいで、建物が四軒に分かれとるがの。ふぉふぉふぉ」
「四軒、全部使うの?」
「そうじゃ。トキンとアリアンナ様はそのまま。ワシと見習いは南隣り。メイド三名は西隣り。馬丁長と馬小屋などが南西の予定じゃ」
「お馬さんも一緒なの。やった。でもジーヤは小さなお家から出ちゃうの?」
「ふぉふぉふぉ、声が届く距離、目の前じゃわい。同じ敷地だからの、毎日顔を出すわぃ。さぁ、そろそろ入ろうかのぅ」
母さまがニコニコです。
「トキン、おかえり。びっくりしたかしら。ジーヤ、皆を一度集めてちょうだい」
すぐに男性二名、女性三名が集まります。
「トキン、新しい家族よ。ジーヤ、お願いするわ」
「レディファーストで行こうかの。サーラから右周りの順じゃ」
「料理長、兼メイド長のサーラです」
「メイドのアンナです」
「メイドのエリザです」
「馬丁長のニンジーノです」
「執事と馬丁の見習い。ワカバです」
皆が順番に名乗り、お辞儀します。
僕もにっこりでぺこりします。
「はじめまして、僕はトキンです。これからよろしくお願いします」
もう一度、にっこりでぺこりします。
みんなが声を揃えてお辞儀します。
「トキン様、よろしくお願いします」
「みんなよろしくね。じゃ私とサーラは夕食の支度の続き、トキンは着替えね。皆は片付けの続きよ」
またバタバタと忙しくなります。
新しい家族の印象は、料理長、兼メイド長のサーラさんは、三十歳前後に見える、ふっくらした優しいお母さんタイプ。
メイドのエリザさんとアンナさんは十代半ばに見える、まるで美人姉妹の様で、仕事が出来そうなタイプ。
馬丁長のニンジーノさんは、二十代後半に見えて、ガッチリした体格のお兄ちゃんタイプ。
見習いのワカバさんは、十代前半に見えて、痩せてて真面目なお兄さんタイプ、に見えます。
他にもヴェネート公爵家から、三十名以上が来ていて、引越し作業が凄い速さで進みます。
あと大工さん達もものすごい勢いで、馬小屋と木の塀を組み立ててます。
その人達は宿を取っていて、明日中に仕事を終え、ヴェネート公爵家に帰るそうです。
なんだか賑やかで楽しいです。
着替えのため、母さまと一緒に使っている部屋に入ります。
いつもとなんだか違います。
僕の小さな机とイス、それとタンスが無いのです。
きっと母さまが、僕を驚かせようと黙っていたのです。
そうはいきません。
多分、僕の物はジーヤが使っていた部屋にあると思います。
さっそく移動です。
僕はドアを開けて、びっくりします。
僕が使っていた机とイスとタンスだけでなく、小さなベッドが窓際にあります。
その手前には白い毛皮の小さなカーペットも敷いてあります。
僕は嬉しくてキッチンに走ります。
何食わぬ顔をして、料理している母さまの足に抱きつきます。
「あらトキン、どうしたのかしら」
「母さま。ベッドとカーペットありがとう。凄く嬉しい」
僕はにっこりで、母さまはニコニコです。
「トキンに喜んでもらえて嬉しいわ。もうすぐ夕食よ、ふふふ」
その日の夕食は、とても豪華で、とても美味しいものばかりでした。




