第十六話
小さなお庭で僕はアリの観察をしています。
時折り吹く風が心地良いです。
もう二時間くらい観てます。
そろそろお家に入ろうと立ち上がると、頭上から声をかけられました。
「ごきげんよう、トキン」
顔を向けるとお屋敷の窓から、ソフィアお嬢様が手を振っています。
「こんにちは、ソフィアお嬢様」
僕もにっこりで手を振ります。
「トキンはいつも庭で何してるの」
「アリを観るのが好きなんです」
「面白い趣味ね。私は魔法の練習が好きよ」
「えっ、魔法が使えるの」
「回復魔法が得意なの」
「いいな〜魔法を使えたら楽しいだろうな〜。ソフィアお嬢様は凄いですね」
ソフィアお嬢様はニコニコです。
「またお話しましょう、トキン」
と手を振って窓を閉めます。
「はい、また」
僕もにっこりで手を振ります。
「ふふふ、トキン。お茶にしましょう」
母さまは、僕とソフィアお嬢様とのお話しが終わるのを待って声をかけてくれたようです。
今日のティータイムはレモンティーとシフォンケーキです。
三人で会話と軽食を楽しみます。
ティータイムが終わったら、鑑定屋さんの準備です。
昨日のうちに『リペア』しておいた装備品と、金属種類ごとに束ねた素材品を手押し車に乗せます。
もちろん門番ズへの手土産も忘れずに乗せて、ジーヤと一緒に出発です。
途中で武器屋『幻の左ストレート』へ寄ります。
「こんにちは、トキンです」
「おう、よく来たなトキン。今日も売りに来たんだな。査定のあいだそこの菓子食って待っててくれ」
迷宮都市シェーナでは武具がよく売れます。
だから新しい仕入れ先は大歓迎だと店長さんはニコニコです。
「待たせたな、525,000ゴルドある。確認してくれ」
にっこり笑顔で受け取って店を出ます。
西門詰所脇で開店準備です。
門番ズに手土産を渡して、ジーヤと別れます。
小さな椅子にちょこんと座って、お客さんを待ちます。
八歳くらいの女の子が一人近づいてきます。
小麦色の肌に、白のワンピースを着た可愛らしい子です。
初めてみるので自信はありませんが、ダークエルフかもしれません。
「こんにちは、僕はトキンです」
「なにしてるのかニェ〜」
あ、話しかけてはいけない人だったかもと、一瞬思いましたが、いちおう会話の続行を試みます。
「アイテムの鑑定と買取をしています」
にっこりで答えます。
「ふ〜ん、じゃこれプレゼント。またニェ〜」
キャンディを一つくれて走り去って行きます。
お話ししたかっただけなのかな?
不思議な話し方ににっこりしてしまいます。
十代に見える男性四人組が手を振って近づいてきます。
Eランクパーティー『たぬきの皮』さん達です。
「よう、トキン。買い取り頼むぜ」
「やっとマシなモノ持ってきたぜ、泣ける」
「マジでツキが戻ってきたかもな」
「その分、腹減る」
「合計67,000ゴルドです。確認お願いします」
確かに持ってきたアイテムの質がアップして、良品の割合が増えています。
僕もうれしくなってにっこりです。
「おお〜、久々に稼げた感じだな」
「トキンのおかげ、泣ける」
「マジで美味いもの食いに行けるな」
「量も大事」
手を振って四人と別れます。呪いの指輪をはずして、運気が上がったのなら僕もうれしいです。
何組かのパーティーが西門をくぐり帰って来ます。
僕のところに来てくれるか楽しみです。
トキンのメモ
鑑定 ランク2 (32/200)
リペア ランク1 (359/500)




