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第十三話

 『トキンの虫眼鏡』開店二日目です。

 今日からエプロンに店名が入っています。

 母さまが刺繍屋さん『白猫の隠し部屋』でオーダーしてくれて、ジーヤがティータイムの前に引き取りに行ってくれたのです。

 

 エプロン上部には虹のようなアーチ形で『迷宮都市の小さな鑑定屋さん』、その下に『トキンの虫眼鏡』と先程より少し大きな文字で刺繍されています。

 もちろんグラデーションを意識した凄く綺麗な色使いです。

 さらにその下にポケットが一つ付いていて、うれしくてにっこりです。


 おっと、さっそく三人組の若い冒険者さんが帰ってきました。

 男性一人に女性二人のパーティーです。

 装備から剣士、魔法使い、僧侶とわかります。

 お店に寄ってくれるでしょうか。

 あ、こっちに来ます。


「こんにちは、僕はトキンです。アイテムの無料鑑定と買い取りをやってます」


「いや〜ん。嘘でしょ〜、可愛い〜、小さ過ぎ〜、柔らか〜い」


 女性魔法使いさんが過剰な接触をしてきます。

 なにかのスイッチが入ってしまったようです。


「いや、俺の方が可愛いし、柔らかいし」


「貴様は、可愛いくも、柔らかくもない。己を知れ」

 

 なぜか男性剣士さんが張り合って来ます。

 ですが女性僧侶さんが即座に打ち消します。

  

「えーと、あの、、」


「お前ら、今すぐトキンから離れろ」


 僕が困っていると、門番ズ五名が総出で駆けつけてくれます。

 すぐさま冒険者三人を取り囲みます。

 助けに来てくれたのはありがたいのですが西門がガラ空きなのは大丈夫なのでしょうか。


「あわわ、ごっ、ごめんなさい。あまりの可愛いさに、つい興奮しちゃって。トキンくん、ほんとにごめんなさい」


 理性を取り戻した女性魔法使いさんが僕と門番ズに謝ります。


「今回は警告に留めておく。次は問答無用だ。翌朝を地下独房でむかえることになるぞ」


 バーン門番長さんの迫力が凄いです。

 女性魔法使いさんがぺこぺこ頭を下げています。


「鑑定して欲しいアイテムがあるなら、その丸テーブルの上に並べろ。俺が立ち会う。西門の見張りは頼んだぞ、ゲート副門番長」


「はっ、お任せを。バーン門番長」


 バーン門番長を残して、任務に戻る門番ズにぺこりとお礼します。


「あはは、大ごとになってしまってごめんね。でも観て貰いたいアイテムが本当にあるの。これよ」


 女性魔法使いさんが丸テーブルの上に一つのアイテムを置きます。


 僕はミトン手袋をして虫眼鏡を取り出します。


 鑑定結果

 「サファイアの指輪」

  良品

 【癒しの指輪】

  回復魔法+3%

  80,000ゴルド

 (銀貨八枚)


「ふむぅ〜ん、見えました。銘は【癒しの指輪】効果は回復魔法+3%、価値は80,000ゴルドの逸品です」


「アワワ、いま、ふむぅ〜んって言った・・・(トゥンク)」


「おい」


 女性魔法使いさんが何やらつぶやき、バーン門番長さんが腰を落として剣の柄に右手を添えます。


「いえいえいえ、誤解です。トキンくん、もう鑑定終わったの、凄いね。将来有望だね」


「いや、俺の方が凄いし、将来有望だし」


「貴様は、凄くもないし、将来もない。己を知れ。あとその指輪は私のもの」


 また男性剣士さんが張り合って来ます。

 ですが女性僧侶さんが即座に打ち消したうえに指輪の所有権を主張します。

 なかなか連携がとれたパーティーです。


「終わったのなら、早々に立ち去るがいい」


 バーン門番長さんが低い声で忠告します。


「はい、終わりました。トキンくん、さっきは本当にごめんね。私達はDランクパーティーの『トライアングル』っていうの。もう触ったりしないから、また鑑定してね」


『トライアングル』の三人が立ち去り、バーン門番長さんとにっこりで別れてからしばらく経ちます。

 

 非常にくたびれた様子のおじさんが看板の前で立ち止まります。

 服装から冒険者さんには見えませんが、西門から入って来ましたし、一応声をかけてみます。


「こんにちは、僕はトキンです。アイテム鑑定と買い取りをやっています」


「ああ、こんにちは。鑑定と買取頼めるかな」


 冒険者さんのようです。

 黒い手さげ鞄からアイテムを丁寧に並べていきます。

 僕は虫眼鏡を取り出し鑑定を始めます。

 あまり状態が良くない短剣が二十本とスクロール一枚です。


 鑑定結果

 「羊皮紙の巻き物」

  良品

 【初級水属性魔法】

  100,000ゴルド

 (金貨一枚)


「ふむぅ〜ん、見えました。スクロールは初級水属性魔法です。価値は100,000ゴルド。買い取りだと30,000ゴルド。短剣は金属素材として二十本で4,000ゴルド。合計34,000ゴルドになります」


「スクロール以外、買取頼むよ。水を出せるなら助かるしね。でも気がついたら、スライムに囲まれてて焦ったな。タハハ」


 カエルのコインケースから4,000ゴルド(銅貨四枚)を取り出してスクロールと一緒に渡します。


 少し話を聞くと、ずっと東の端にある島国の出身で移動中の記憶は無く、ハードモードだよと力なく笑ってます。

 名前はタナーカさんというそうです。頑張ってほしいです。


 タナーカさんが帰ったタイミングでジーヤが来てくれたので閉店です。

 今日もとても楽しかったです。

トキンのメモ


鑑定 ランク2 (19/200)

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