第十話
僕は今、自分のお店にいます。
お店の名前は『トキンの虫眼鏡』です。
母さまとジーヤと僕の三人で決めました。
とても気に入ってます。
お店といっても建物はなく、露天商です。
お客さんが来るまでに本を読んで過ごします。
あっ、冒険者さん達が一組帰ってきます。
寄ってくれたらうれしいですがどうでしょう。
まだ十代に見える男性四人のパーティーです。
こっちを見ました。近寄ってきます。
「新しい鑑定屋か?」
「こんな店マジであったっけ?」
「随分と小さい店長だな、泣ける」
「俺、腹減ったわ」
「こんにちは、今日から無料鑑定をはじめたトキンです。よかったら鑑定させて下さい。金属素材などの買取もやってます」
「今日は結構拾えたけど」
「マジ値が張りそうなものがねー」
「散々だったな、泣ける」
「ここで処分もいいな。腹、減ってるし」
「よかったら、見せて下さい」
僕は初めてのお客さんとのやりとりが楽しくてにっこりしてしまいます。
「おぅ、じゃみんな出せ。このテーブルには乗り切らねーから地面に並べろ」
ずらっと並ぶアイテム。
僕は革のミトン手袋をして、虫眼鏡を持ちます。
虫眼鏡が無くても鑑定できますが、細かなところもきちんとみて評価を知らせたいと思ってるからです。
「ふむぅ〜ん。お待たせしました。この鉄のロングソードと鉄の斧は、状態もいいので評価はそれぞれ20,000ゴルド。こっちの銅の杖は10,000ゴルド。銀の指輪は5,000ゴルド。ここまでの四つは買取だと13,750ゴルドです。他の七つは残念ですが潰して金属素材扱いです。だいたいの重さで買取となって700ゴルド。合計14,450ゴルド。もしまとめて買取させてもらえるなら、初めてのお客さんなので奮発して、16,000ゴルドで引き取ります」
僕はにっこり笑顔で、鑑定評価と買取額を伝えました。
「それで頼む」
「マジでギリ安酒代は確保できた」
「酒場直行、泣ける」
「西門くぐってすぐ。いい場所だな。腹減ってるし」
僕は革のエプロンの内側に隠してるカエルのコインケースを取り出して、16,000ゴルド(銀貨一枚と銅貨六枚)を渡します。
「初めてのお客さんになってくれてありがとうございます。【古代の逸品】などには簡易鑑定書を1,000ゴルド(銅貨一枚)で発行しますから是非、僕に見せて下さい」
「そこまで言われたら、良い品みつけてこねーとな」
「マジありがとな、俺達は『たぬきの皮』っていうんだ」
「Eランクなのが泣けるけどよろしくな」
「トキンまたな、あー腹減った」
無事取引できて、にっこりしてしまいますが、パーティー名を聞いて、少し不安を感じたのはなぜでしょうか。
次のお客さんです。
今のやりとりを少し離れて見守っていたようです。
若い女性二人組です。
凄い美人さんです。
双子でしょうか。
「こんにちは、今日から無料鑑定をはじめたトキンです。よかったら」
「これ、鑑定できる?」
おっと、最後まで言わせてもらえませんでした。
せっかちさんのようです。
「はい、任せて下さい」
僕はテーブルの上に置かれたアイテムに虫眼鏡をむけます。
鑑定結果
「アメジストのブローチ」
良品
【ラベンダーの残香】
混乱耐性20%
麻痺耐性10%
600,000ゴルド
(金貨六枚)
「ふむぅ〜ん、見えました。銘は【ラベンダーの残香】効果は混乱耐性20%と麻痺耐性10%です。価値は600,000ゴルドの逸品です」
「ふーん、ありがと」
「またね、坊や」
颯爽と去って行くお姉様方の後ろ姿を見送ります。
すごい効果の【古代の逸品】でした。
経験値ありがとうございます。
それとバーン門番長さんもありがとうございます。
さっきから門の方ではなく、僕の方をチラチラ気にしてくれてます。
僕の店はバッチリ見守られてます。
にっこり笑顔を向けると、「うむ」って感じで頷いて、ニヤリの笑顔をくれます。
おっとソロの冒険者さんが、看板を見て僕の前にしゃがみ込みます。
「こんにちは、今日から無り」
「頼めるか」
おっと、またしても最後まで言わせてもらえませんでしたが、僕には耐性があります。
えぇ、経験済みです。
何の問題もありません。
全身黒色のレザー装備でまとめているお兄さんがアイテムを差し出してきました。
慎重に受け取り、虫眼鏡をむけます。
鑑定結果
「黒鉄の剣」
良品
【漆黒の牙】
素早さ+20
400,000ゴルド
(金貨四枚)
「ふむぅ〜ん、見えました。銘は【漆黒の牙】効果は素早さ+20です。価値は400,000ゴルドの逸品です」
「クククッ、【漆黒の牙】とやら、我と貴様との出会いは定め、それは天命。さすれば共に彷徨い這い進むも定め、それも天命。ならば・・うっ、何者か!」
あ〜、門番さん出動案件になってしまいます。
詰所に引きずり込まれます。
僕としてはもう少し聞いてみたかった気もしますが、これも定め、経験値ありがとうございます。
さあ、切り替えていきます。
冒険者さんですから、色々な方がいるのは想定内です。
あ、ジーヤが迎えに来てくれました。
「トキンや、調子はどうじゃ」
「ジーヤ、すごく楽しいよ。逸品も二つ鑑定できたし、面白い人もいるし」
「そうか、よかったのう。今日はこの辺で引き上げようかのう」
僕とジーヤは後片付けを始めます。
看板は門番詰所の裏手に置いて、門番さん達に挨拶します。
ジーヤと一緒にゆっくり帰ります。
トキンのメモ
鑑定 ランク2 (12/200)




